聖者のかけら

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 100
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103528913

作品紹介・あらすじ

奇蹟を起こす「聖なる力」の正体を探れ。気鋭の言語学者が挑む『薔薇の名前』と並び立つ歴史ミステリ。ベネディクト会系の修道院に届いた出所不明の聖遺物が次々と奇蹟を起こした。調査を命じられた若き修道士は村の助祭とアッシジに向かうと、聖フランチェスコの遺体に異変が起きていた。十三世紀のイタリアで実際にあった事件を踏まえ、最新の研究をもとに奇蹟と聖フランチェスコ大聖堂の謎に迫る世界文学級の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 楽しい時間だった。

    次々に奇蹟を起こす身元不明の聖遺物。主人公の修道士がその聖遺物の正体を探るという歴史ミステリ。

    宗教と信仰、全く知識もない世界の不安感も何のその、瞬く間に謎めいた世界へといざなわれた。
    聖遺物の謎、聖堂内の構造、探索とページを捲るのが楽しい時間が持続する。
    これがこの物語の最大の魅力だと思う。
    そしてその時間を共にするベネディクトとピエトロ。この二人の深まる関係も読んでいて気持ちが良い。
    遺物を“かけら”と表現しているところも神秘的で心をくすぐられる。壮大な物語、面白かった。

  • 1252年,アッシジを舞台に繰り広げられる聖遺物の謎.聖フランチェスコの遺体はどこにあるのか.という謎解きの醍醐味がたまらない.また,融通の効かない修道士ベネディクトと金儲けはするが頼りになる助祭ピエトロのちぐはぐな協力関係が確かな信頼に育っていくところがいい.登場人物も脇役でありながらそれぞれの枢機卿が色々な味わいがあり,敵であるニコラですら作者の愛が感じられる.皇帝と教皇の争いや教会内部の権力抗争などもわかりやすく描かれて本当に重厚でありながら楽しい物語だった.

  • 中世イタリア、信仰、歴史、ミステリと好みのものが多く面白く読むことができた。
    『薔薇の名前』に匹敵するかどうかは、これまた好みの問題だと思うが、面白いことには変わりがないだろう。
    こういう小説を日本人が読んで面白いの思うのは、どうしてか。
    例えば、イタリア人が『歎異抄』や『出家とその弟子』を読んだ場合の面白さと同じだろうか。

    現代において、何かを信じることに関心があれば『神は悪の問題に答えられるか』をぜひ。

  • ガキの頃、遠藤周作の沈黙を読んだとき、信仰っていったいなんなんだろうってそりゃ考えさせられたよね。

    この本において、救いの保証とか、信仰に関する描写はある程度答えに近づこうとしていていいと思う。

    でもストーリーが明らかに練り込み不足。

    急ぎ過ぎたんだ。

  • 著者新境地の歴史ミステリながら、底にある伝えたい思いはこれまでの(数学や言語やAIをあつかった)作品に通じるものを感じる。ミステリの謎解きに負けないくらい主人公たちの心情や考え方の変化にひきこまれた。
    タイトルも装本もちょっととっつきにくいかもしれないけれど、若い人におすすめしたい、ぜひ読んでみてほしい作品だと思った。世界史やキリスト教の知識があるに越したことはないけれど(わかるひとにはわかるごほうびもなくはない)、あまりなくてもだいじょうぶだから。

    主人公は、与えられた戒律をきっちり守ることを至上として、失敗することを恐れる、平凡だがまじめな(融通が利かない)若者ベネディクト(現代っ子なら共感するところ多いはず)。修道院から下界に降りてその複雑さにとまどいながら謎の聖遺物をめぐる調査の旅や出会いの中で少しずつ成長していく。
    そしてもうひとり、知識豊富かつ冷静で自分を客観視でき、聖職者でありながら神ではなく自分だけを頼みとする若者ピエトロ。この二人が出会い、友情を育み、別れてゆくのと重ね合わせるように描かれるさまざまな人間関係が物語に奥行きをあたえている。

    宗教のみならず、政治、思想、あらゆる世界における、過剰な潔癖さや単純な二元論にこだわる危うさに対する「清濁併せ呑む」寛容の意義について、考えさせられた。そして、自分の「正しさ」を常に確認せずにはいられない、そしてたしかな未来を信じて安心していたい。そんなわたしたちの弱さをもう一度見つめ直させてくれる物語だった。
    あいにく『薔薇の名前(出版社の宣伝で「並び立つ」とうたっている)』は未読なのだけれど、途中のわくわくする感じはずっと前に読んだトーマス・マン『魔の山』に似ているような気がした。

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著者プロフィール

言語学者

「2019年 『平成遺産』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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