エレクトリック

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103529736

作品紹介・あらすじ

性のおののき、家族の軋み、世界との接続――。『現代思想入門』の哲学者が放つ、待望の最新小説! 1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!

感想・レビュー・書評

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  • この小説の舞台となる1995年といえば、僕が「エレクトリック(=電気の)」と「エレクトロニック(=電子の)」の意味の違いを理解した頃だ。
    語感は近いけど全く非なるものであることにある日突然気がついた…そんな頃だ。

    そして、その頃、インターネットはそんなに普及してなかった。世界はまだクモの糸で繋がりきってなかった。
    インターネットが海のものとも山のものともわからない。
    とりあえず資料はワープロ使ってきれいに作れますし、エクセル使うと表計算とか便利なんですねって気づいた頃。ブラインドタッチ練習しなきゃなって。

    きっと、1995年はエレクトリックとエレクトロニックの狭間の年だったのだ。

    いまさら「エレクトリック」ってなんやねん?と思いながらも想像した小説の世界観がまんま描かれていて、安心感の中読み進められた。
    それがよいことなのかどうかはわからない。

    主人公の高校生達也がゲイなことと、そのフェティシズムの対象には少し心がざわついたけど。

    第169回芥川賞候補作品。
    でも、どうかな?
    石田夏穂さんとか、児玉雨子さんとか、結構強力な対抗馬がいますわね。

    発表が楽しみです。

    ♪Dinosaur Tank/電気グルーヴ(1994)

  • 1995年、この年は本当いろんな出来事があった。
    地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災など、目まぐるしく変わる日常のなか、本作は、そんな時代背景をもとに、東武宇都宮駅中心に物語が進んでいく。主人公達也は、父、母、妹の4人家族で高校生だ。父は、広告業で、自分で会社を経営している。ある時、父は取引先のためにアンプ制作を実行するために、インターネット接続を達也にまかせた。当時はネット黎明期、そこで、達也はある
    コミュニティを見つける。自分の新たな扉が開かれる。第169回芥川賞候補作。

  • 第169回芥川賞候補作
    受賞作を決める選考会は7月19日。

    状況としては理解できたし、
    「きっと終わりですごいことあるのだろう」
    という期待にも、まあ応えられたかなと思います。

    でも疑問とか謎がたくさんのこっている感じ、
    私レベルには。
    ここ最近読んできた芥川賞作品に比べると
    込み入っている印象があります。

    しかし私は千葉雅也さんの新書大賞2023受賞作
    『現代思想入門』を読んでいました。
    それにはこんなことが書かれています。

    〈哲学書を一回通読して理解するのは多くの場合無理なことで、薄く重ね塗りするように、「欠け」がある読みを何度も行って理解を厚くしていきます。プロもそうやって読んできました〉

    〈不完全な読書であっても読書である、
    というか読書はすべて不完全なのです〉

    〈哲学書はどれもこれも暗号化されたファイルみたいなもので、どうやって鍵を外してある程度理解可能にするかで、研究者がさまざまな読みのアプローチを試みているのです〉

    それらはそっくりこの本に当てはまるのではないでしょうか。

    というわけで、芥川賞発表まであと3週間ほどありますので
    いろいろなかたの書評を読むのが楽しみ
    特に豊崎由美さんのお喋り。
    それ次第で再読するかもしれません。

  • 芥川賞候補作なので読んだ。
    同郷でもある。応援したい。
    高校2年生の主人公のドキドキや悩みが雷のようにきらめく。
    1995年の様子も懐かしい。
    ハンドパワーは静電気。
    栃木県宇都宮市はなぜだか雷が多く「雷都」(らいと)と呼ばれたりする。
    「アウト・オブ・眼中」という言い方、どこかでマネしたい。
    エゴン・シーレの画集は名作。
    「エヴァンゲリオン」という名称を出さないのによくわかる説明がとても上手い。
    皆が行く方向に行かない。それだけで勝てる。説。父の哲学。本当なのか?
    ラジカル→ 急進的なさま。過激なさま。極端なさま。
    ゲイの世界は裏世界で、
    その入り口を発見した場面のドキドキがとても印象的。
    宇都宮市の様子も想像できるので読みやすかった。
    「オーバーヒート」を読んだ時に、千葉さんの実家は白楊高校の近くなのだと思ったが、
    そこは祖母の家だったのかも。
    とにかく、宇都宮市。
    場所が想像できて楽しい読書だった。

  • うわ、難しい。勉強ができる男子高校生。実体験に基づいている部分もたくさんありそうな具体的なエピソードの数々。父の会社の動向、自分の性的傾向への疑問、ややヒステリックな母の不可解な怒りのトリガー等。一触即発のような何かが変わりそうな不穏な雰囲気が漂っている。雰囲気は好き。

  • まずはじめに否定しておきたいのだが、この作品の紹介で、男性同性愛者と知り合う(かもしれない)男子高校生、という記述があり、この作品はその様な事象を主な題材とした作品なのか?、と捉えてしまいそうになるが、それは作中の主人公の好奇心の一端であり、決してそれが主題では無い。

    主題、と言うか時代背景、は1995年という極めてピンポイントな「年」である。この「年」を通過した者なら誰もが実感するように、年初から立て続けに大地震、テロ事件、が起き、そして何よりWindows95が世界中で発売されて一部の者はその「世界中」と繋がりうる「インターネット」の可能性に大いに心震わせた「年」である。

    主人公の多感な高校生は、比較的裕福で温和な家庭の中で、父親の職業を通じて、また自分の学校生活、あるいは兄弟(妹)との関係…等と、先に書いたような社会環境、の中で、かつて多感な思春期時代を過ごした者なら誰もが感じ得たような経験、興味、を示して日々を過ごしていく。またそのツールとして今でこそ当たり前になったインターネットが存在し、一般的になろうとしていた、事が実に興味深い。当時はまだ駅に伝言板はあったはずであるし、ファックスは当たり前、カメラも一眼レフかポラロイドくらいでしかなかった。私ごとにはなるが、その様な時代背景を私はちょうど転職をして、一気にデジタル化を進めようとする地方の一企業のデジタル化推進担当社員として、過ごした。この作品の主人公と同じように、時代が、コミュニケーションの方法が、変わっていく事を仕事でも遊びでも、大いに実感していた。その様な私の個人的な思い入れがあるからこの作品を楽しめた、という部分はあるかもしれない。

    作中では決してそういった時代背景の描写だけでは無く、個性的な家族、また登場人物一人一人のある種、軽薄なディテール(ポルシェに乗ってやってくる女であるとか)も、読む者が頭の中でそれを思い浮かべるときに興味を抱く事ができる材料なのでは無いかと思う。

    最後まで読んで複雑などんでん返しがある様な作品でも無いと思う。ただ決して言いようのない不快感とか、逆に高揚するハッピーエンドといったものもない。では何が面白いのか?、先に書いた様に私が同じ時代を主人公の高校生の様な何か言いようのない高揚感を抱いて過ごしたから、この作品を特別面白く感じたのかも知れない…。

  • 自分の好きなものがなにであるとか、自分が考える価値観であるとか、ある意味のアイデンティティみたいなものが形成されていく様子にのめり込めた。
    思春期特有の人間関係の描き方とか、身体が変化していくことによって見える物理的な変化が関わっているのが面白かった。
    読みやすい本ばかり読みなれてしまって、最後はここで終わるの?と思ってしまった。

  • この小説は、高校 2 年生の達也 (達也) と、広告業界で働く父親がアンプの製作に奮闘する姿から日頃の家族関係、友人関係など一般的なテーマを掘り下げている。その為か、何か面白みが欠け平凡で少々飽きる。ひと昔の日本のオーディオ技術は感動させるものがあったと私も記憶に残るがやはり最近のオーディアは値段及び小型化でそれなりの音質と手軽さが楽しめる。技術の進化は思った以上に早く逆に古いものは使い物にならないと言う結果も生み出しているのが悲しい。

  • つい先日、金原ひとみさんが編んだ『私小説』で覚えたばかりの著者のことを、ポリタスの石井千湖さんが紹介していたので読んでみることに。
    小説の舞台となった時代、大きな出来事が起こったあの年のこと。激しい雷鳴やインターネットの接続音が聞こえ、土地勘のある宇都宮の景色‥当時、暮らしの中で見聞きしたニュース、感じていた希望や不安などが次々に目に浮かぶようで一気に読んでしまった。

  • 「デッドライン」「オーバーヒート」と進み、今回は主人公が高校生。「デッドライン」で孵化しかけて、「オーバーヒート」で蝶々になって、この「エレクトリック」はさなぎという感じ。高校生なので家族と住んでいて、そのかかわりを丁寧に描く。最後には自らを目覚めつつある性への扉に近づく。

    舞台は宇都宮。雷都に雷様、なじみのある土地なので、主人公の鉄道沿線の家とか、最後の繁華街の描写は、あそこらへんなのか?などと想像してしまった。また主人公の家は街の中心部からは少し離れていて、中心部に行くことを「街へ行く」といっているのは、同じだなあ、などと思った。

    2023.5.31発売

    「新潮」2023.2月号掲載時に読んだ。

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著者プロフィール

1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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