- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103530510
作品紹介・あらすじ
私は、最愛の息子を支配しようとしている……? 人間の逃れられない性を抉る長編小説。両親の愛を享受できなかった記憶に抗い続けながらも、いまだに過去から逃れられないカウンセラーの橙子。テニスインストラクターの夫・律と小学一年生の息子・蓮と、一見平穏な生活を送っている。だが、父が病に冒され、やがて再婚し、そして――。愛された記憶のない人間に、「家族」を大切にすることができるのか。
感想・レビュー・書評
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両親の愛を享受できずに育った姉は、カウンセラーとして働きながら夫の息子と暮らす。
心理学を学ぶことは、自ら心になんらかの傷を持っていると大学時代に誰かが言ってたと…思いながら他人のカウンセリングをする。
母は再婚し、妹はバイトしながらシェアハウスで暮らす。
父が連絡してくるのは姉だけ…
結婚後も支配してくるのが、疎ましい。
その後、父は肺癌を患い亡くなるのだが…
親の愛情とは、いったい何なのか?
目に見えるものでもなく、与えられる物でも無いのでは…。
答えを明確にはできないと感じた。
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両親から支配されてきて、愛情を感じた事があるのか自分で分からない女性が、結婚、出産によって出来れば関わりたくない両親と関わらなければならない。好きになれない親からの遺伝子を感じてしまう自分の行動や心境で、自分の愛する夫と子供への行動を自分で疑ってしまう。これは愛なのか、支配欲なのか・・・。
さしたる事件も起きず淡々と進んでいきますが、色々考えこんでしまうテーマの小説です。
可愛い、愛おしいと感じる心と、めんどくさいと感じる心は両方同時に発生しますよね。心の底の底から愛おしさが湧き上がって、自分の事は何もかも最後でいいなんて思えないだろうし思う必要も無いです。
しかし、どこかかみ合わない親子関係を長年続けると、ぶつかる事が怖くなって遠巻きにする事しか出来ない関係になるのって分かる気がします。ケンカして仲直りしてっていう関係は、芯に信じられるものが有るからぶつかれるんですもんね。
そういう経験が無い状態で親になった時、正解が知識としてしかない不安感は想像できます。研究結果でも親子関係での負の連鎖はあると言われていますから、不安に感じて当たり前かもしれません。 -
ワーカホリックで外では良き教師、内では暴力を振るい自分の価値観を押し付ける父親を反面教師に、カウンセラーとして人の内面に向き合う主人公。
仕事でも家庭でも、父親の価値観を否定する事に囚われ、自覚しながらも逃れられずにいる。
人の内面の弱さが随所に出てくるので、爽快さは無いが、感じる部分はあった。 -
08月-07。3.0点。
厳格な教師の父親、母とは離婚、妹とは絶縁。カウンセラーの主人公。テニスコーチとの間に小学生の息子が。
父親の周囲も変化が起き。。。
主人公の、心の動きの描写が上手い。終始暗い感じだったが、ラストには救いも。 -
今回藤野さんの作品を三つまとめて読んだのだけれど、なぜだかこれはあまり主人公が好きになれなかった。
主人公は心理カウンセラーで、他者の心理を読み解くことを仕事にしていて、その思考は自分自身にも向いている。
物語も、一方で現実の世界を描きつつも、ずっとその精神世界の中をただよっているようで、DV男だった父に対する葛藤を最後までなんともできずに結論を先送りにしている。同じようにDVに悩むクライアントがきちんとした別れに踏み切れないのをもどかしく見ている思いは、そのまま自分自身にも向いている逆転移構造があって、その問題をうまく解決できずに、自分自身の中にとどまってしまっている。小説全体がそうした、なんだかもどかしい話になっているようで、物語の力学で動き出していないように感じた。 -
終始、どんよりとした空気が漂う作品。
主人公は両親の愛情を享受出来なかった記憶に縛られ自らカウンセラーとして働く宮沢橙子。
テニスインストラクターの夫・律と結婚し、小学一年生の一人息子・蓮と3人で暮らしている。
穏やかな生活を送りながらも過去の記憶に囚われ足掻く橙子。
外面だけ良く、家庭内で妻や娘にDVを繰り返す橙子の父親には軽蔑と嫌悪しかない。
母親や妹に身勝手さを感じるも実際経験した人でしか解らない感情があるだろうし父親を見限る態度を否定出来ない。
血が繋がっているからこそ許せない親子関係もある。
血縁の闇は深い。 -
家族について
親子について
改めて考えさせられました。 -
ジャケを見ると爽やかな話かなと読むが、重たかった。。厳格なのか小学校教諭の父親の暴力的な支配のもとに育った橙子と桃華の姉妹。父親が肺癌になり入院手術、そして亡くなるが、子供の頃の憎む記憶に上書きができず親身になれない。橙子は長女でありカウンセラーである職業との葛藤があるが、桃華は頑なに嫌悪感を現し拒否する。家族として完全に分裂し、いかにも昭和の父親像を垣間見る。母親も逃げ出し、夫婦は別れてしまえば他人に戻るが、父娘関係はと思うが。極端に憎む気持ちを露にする姉妹だが、墓に手を合わす姿に少しはホッとした。