希望のゆくえ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 44
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103531913

作品紹介・あらすじ

突然、失踪した弟。あいつの真実の姿に、僕は辿り着くことができるのだろうか……。弟が放火犯の疑いがある女と姿を消したらしいと、母から連絡があった。僕は彼と交流があった人物に会いに行ったが、弟の印象はそれぞれまるで異なっていた―。弟はどういう人間だったのか。誰のために生きてきたのか。僕たちの声は、弟に届くのだろうか。人生の「希望」とは何かを問う、話題の作家が拓く新境地。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、寺地はるなさんにハマって次々と読んでいる中、新刊発売。期待して読みました。
    今までの寺地さんの作品とはちょっと手触りのようなものが違うな、というのが第一印象です。
    でも、寺地作品に繰り返し出てくる、親から抑圧されて育った子ども、というモチーフは、今回もパターンを変えながら幾人もが登場します。

    かつて私に、過去はフィクションだ、と言った人がいました。
    過去にあった出来事は一つでも、その記憶は体験した人の思いによって、それぞれ全く別々の意味を持つ物語として記憶されることがあると。

    読んでいて、そんな話が思い出されました。
    親子、恋人、夫婦。それぞれにとっての過去が、相手の印象が、自分にとって都合よく作り変えられていく。
    「すごいなあ」の一言が、賞賛の意味で発せられても、皮肉として受け取られることもある。

    わかりやすく救いのある物語とは言えませんが、それでも最後にかすかな希望があるので、読後感は決して悪くないです。

    『自己肯定できない人にとって 僕はかっこうの生贄だったの?』という帯文が、物語の中軸をみごとに捉えていると思います。

  • 希望は消え、誠実が残った。

    マンションの管理会社に勤める弟がある日さえない住人女性と一緒に消えた。母親に頼まれて弟の行方を捜す兄。知らなかった弟の人生、そして素顔。弟に何があったのか。なぜ突然失踪したのか。
    と、あらすじだけ書くとなんとなくもう詳しく読まなくていいやという気になる。「なにか消えたくなるようなことがあったんだろうね、きっと」とうわべの共感で流せそうなくらいの。
    でも、このあらすじの行間に、そしてあらすじから透けて見える向こう側に、自分の今までの人生それぞれに残っているちいさな不安の影がちらちらと見える。
    どうしようもないくらい追い詰められている人生と、ある日突然消し去りたくなる人生。そして消したいけど消す勇気のない人生。それぞれの根本にあるのは家族という名の足かせ。
    兄の名前は誠実。弟の名前は希望。もしかすると希望なんて最初からいなかったのかもしれない。すべて誠実の中に取り込まれていたひとつの影なのかも…そんな気になってぞわりとした。

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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