ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534051

作品紹介・あらすじ

奇妙な夏が終わり、井戸は埋められた。そして人々はみんなどこかに去っていった。ねじまき鳥の声ももう聞こえない。僕に残されたのは、頬の深く青いあざと、謎の青年から引き渡された野球のバットだけだ。でも僕はやがて知ることになる-何かが僕を新しい場所に導こうとしていることを。意識と過去の帳の奥に隠されたねじのありかを求めて、地図のない冒険の旅が開始される。そしてその僕の前に、ねじまき鳥の年代記(クロニクル)が、橇の鈴音とともに静かにひもとかれる。完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 20代の鋭い感性をもってしても、その後四半世紀の人生経験をもってしても、わからないことが多かったな。戦争の話は、第1部のノモンハンでは日本が被害側だったのに対し、第3部の動物園や中国兵虐殺では加害側になっていて、恐ろしさがいや増したし、描写も圧巻だったのだが、この戦争のパートが綿谷ノボル的なものとうっすらつながってる感じはするものの、それが「僕」の冒険?と表面的な符合(あざとかバットとか)ではないところでどうつながってるのか、よくわからん。第1部を読んでいて想起したパワーズ『Operation Wandering Soul』では、自国の加害の歴史が原罪のように主人公を汚し、苦悩させていたけど、そういうのとも違うし。
    クミコが最後の手紙でノボルに肉体的ではなく汚されたって書いてるけど、いったい何があったんだよ?結局、クミコとノボル間の問題だったんなら、第1部の夫婦のあれこれはなんだったんだろうと思うし、「僕」はクミコとも自分とも真に向き合ったことにならないんじゃないかな?
    あと、メイは終始「僕」を高く買っており、P459でも僕が「いろんな人を救った」って言ってるけど、「僕」ってそんなに活躍したかな?幻に翻弄されていただけの気がするのだが(その過程は物語としてめっぽう面白かったけれど)。別れ際に「君の水着姿は素敵だったよ」とか、しれっと言うところもイヤだ。ふと気付いたのだが、他の作家ではそんなことないのに、私はなぜかはるきの小説の主人公をはるきと同一視してしまうクセがあり、そのせいで要らんモヤモヤが多くなるのかも。グザヴィエドランや吉沢亮をイメージして読めば、仮縫い能力も信じられるようになったりするんだろうか。ともあれ、メイちゃんには「僕」とは関係なく幸せになってほしい。
    今回、再読して良かったのは、幻想的・映像的な描写の面白さを堪能できたこと。はるき=アイロン、パスタ、やれやれ&独特の比喩、みたいに勝手にイメージしていたけれど、実はそういうのから抜け出さねばならないという話だったのか、それとも、暴力的な世界におけるつましいルーティンの尊さみたいな話なのか、そこもよくわからん。そのわからなさはイヤではないけれど、ただ、もうちょっとわかりやすく書いてくれたら、日本はもっと良くなってたんじゃないかな?と平成初期の若者(ばかもの)のひとりとしては思ったり。
    私が『海辺のカフカ』ではるきを卒業したのは、子どもが生まれて、それまでのおままごとは終わり、ほんとうの人生がはじまった気がしていて、はるきを夢中になって読み耽ることもおままごとの一環(毎度すごく面白いけど後に何も残らない)と感じたからなんだけれど、それは早計で、わたしが読み取れなかっただけで、何も残らないなんてことはなかった、と今は思う。かと言って、カフカ以降を腕まくりして追いかけようという気にもなれなくて、その後の(いまだにおままごとのまんまかもしれない)人生で、舞城王太郎やパワーズなど素晴らしい作家に新しく出会えたことをよしとしたい。In my life, I love you moreなのだ。
    (余談だが、冒頭の「首吊り屋敷」のくだりは、映画の『残穢 住んではいけない部屋』思い出しちゃって、夜電気消すのが怖くなった)

  • 第3部は一気に読んでしまいました。
    気になって気になって。
    明日が建国記念の日でよかった。

    でも、読み終えたところで、解決しない疑問点は山ほどあります。
    たぶん、作者も正解を持っていないのではないかと。

    それで、読者の解釈に任せるということでしたら
    私はこの本の中心は大陸の話にあると思います。

    可愛らしい題名と、親しみやすい雰囲気で誘っておいて
    作者は実は戦争の話を聞かせたかったのではないかと。
    大嫌いで、いつも避けて通っていました。
    やられた。

    私自身、平和でのんびり暮らしちゃっているものですから
    「はっ」て目覚めさせてくれたのかなと。

    こんな風に建国記念の日を祝って週の中ほどにお休みもらえる
    そんな平和で幸せな日々をおくっているけど
    戦争で犠牲になったかたたちのおかげでもあるかもしれない
    こんなふうに暮らせることに感謝の気持ちをあらためて持ちました。

  • 1995年8月25日 刊 再読
    刊行された当時、分厚い三冊のハードブックを手に入れて、嬉しくて、複雑な世界観に引き込まれた。
    再読するにあたり、各巻副題、泥棒かささぎ・予言する鳥・鳥刺し男についても調べたりして、何かしら主題と関係してくるのか考えてみたり、自分なりに丁寧に納得しようと努めた。
    数カ所出てくる戦争に関する記述は、そこだけでも作品として引き込まれるものがあった。
    としても、笠原メイとカツラ、間宮中尉と皮剥、クレタとマルタ等、それぞれは理解できても、どうにも私の中で繋げられなかった。もう一回は読めない。

  • 残念ながらさっぱり理解できなかった。

  • 3巻メモ。
    首吊り屋敷の謎。
    不動産屋。宮脇さんの土地について。
    少年、庭にいる二人の男たちの姿。
    オフィス。青年。女。新しい靴と下着。猫が戻る。ワタヤノボル改めサワラ。
    赤坂ナツメグとシナモン。
    ナツメグの話。動物園襲撃。獣医。
    少年の夢。女優の転落。綿谷ノボルの秘書・牛河。
    シナモン。どうしてこうマメな男ばかり出てくるのだ。
    ナツメグ少女時代からのこと。
    パソコン経由で妻との話。
    綿谷ノボルのこと。僕と何人かの人達とのつながり。綿谷ノボルとの話。
    ねじまき鳥クロニクル。シナモンの創作か事実か。僕との共通点。
    笠原メイの手紙、宮脇家のことを「絵にかいて額に入れてはたきをかけたみたいな平和な家」。
    シナモンは来ない。牛河は退職。
    加納クレタの出る夢。コルシカ。間宮中尉の手紙。
    井戸の底から壁を抜けホテルの部屋。208。ニュース。クミコ。綿谷家のこと。井戸に戻る。
    井戸に水。笠原メイのイメージ。
    加納クレタの出る夢。コルシカの父親。
    綿谷ノボルは脳溢血かなにかで倒れた。殴られたのは夢なのか、あの世界だけのことなのか。
    ねじまき鳥クロニクル。クミコの手紙。
    笠原メイの手紙、五百通?


    岡田トオルとクミコ夫妻の話の合間に、いろんな話が混じってかなり混乱気味。特に3巻は多かった気がする。
    大事なことは闇の中であれこれ想像するしかなくて、少しだけ暴かれた綿谷家の謎は解けずに終わった。

    綿谷ノボルも牛河も非常にいらいらさせられたけど、終わってみればなんかこれはこれでいい人たちだったと思うよ。彼らは彼らなりに考えてやるべきことをやったのだろう。

    これでいいのか。まぁいつもの流れからするとこんなものだろう。猫が帰ってきてよかった。サワラっていい名前だ。サザエやカツオやイクラみたい。単に読み逃しただけかもしれないけど、各部のタイトルがいまひとつよくわからない。泥棒かささぎはホテルのボーイが口笛で吹いてた曲というのはわかったけど、それくらい。

    シナモンとナツメグが出てきたら、マルタとクレタが出なくなった。助けを出せる人たちは限定されているのかな。それにしてもシナモンみたいな人はどこでどうすれば知り合えるの。ナツメグみたいな息子もどうしてこんな風に育つの。最初は女性に囲まれてると思ったけど、途中から間宮中尉やナツメグも出てきて、なにかと良い人たちに恵まれてたよね、岡田トオルさん。

    そんな中でずっといた笠原メイ。この子は結局なんなんだろう。ねじまき鳥さんに好意を持っているのは間違いない。まぁ、10代の女の子の考えてることなんて誰にでもよくわからないものかも。好きだから意地悪したりとか。でも謎展開やハラハラドキドキビクビクの中でほっと一息つけるのが笠原メイの手紙でした。最後に手紙でなくちゃんと会えて良かった。

  • [鹿大図書館学生選書ツアーコメント]
    私が村上春樹さんに出会ったきっかけは大学図書館で借りたことであります。世界の村上春樹、と言われるほど世界的に人気な著者の本を読むことは日本人として誇るべきことだと考えます。多くの国で愛される村上春樹さんの本を大学図書館に置いて欲しいと思い、選書しました。

    [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN10565907

  • 井戸。

  • うーん、難解
    クミコは加納クレタ?姉はマルタ?
    よくわからなかったけど面白かった〜

  • 今まで氏の作品を幾つか読んだが、ピンと来るものがなかった。どこかで「本作を読めば村上春樹の良さが分かる」と目にしたことがあったので読んでみた。

    第3部はハイペースで読んだ。結末を早く知りたかったからだ。

    中尉の体験談は詳細で引き込まれる感じがした。対照的に笠原メイの手紙や話はホッとさせられる。

    でもやっぱり自分はハルキストにはなれないと思った。

  • 1、2、3読み終わったー!
    わからないことばかりだった。
    でもこの物語の世界観を楽しめた。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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