神の子どもたちはみな踊る

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534112

作品紹介・あらすじ

しんと静まりかえった心の中のいちばん深い場所で、たしかに、それは起こった。生きること、死ぬこと、そして眠ること-1995年2月、あの地震のあとで、まったく関係のない六人の身の上にどんなことが起こったか?連載『地震のあとで』五篇に書下ろし一篇を加えた著者初の連作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的には『タイランド』『蜂蜜パイ』が印象に残ったかな。
    阪神・淡路大震災が背景にはあるものの、必ずしもその題材に拘泥した訳でもないように見える。どれもまぁまぁで正直強いインパクトがない、やっぱりこの作家は短編にはあまり向いていないんじゃないかな。
    上手く言えないけど、リズムの緩やかさとオチに拘らない態度からそう思うんですが。

  • 短編6編の連作、久しぶりの春樹作品だけど やっぱりメタファー満載なので読み易い文章なのに考え考えしながら読了。毎度ながら読み手に色んなことを投げてきて答えはあなたが考えなさい!で終わりますね♪
    阪神淡路大震災の5年後に出された「地震のあとで」連作。

  • UFOが釧路に降りるー離婚した男が同僚に頼まれて北海道に荷物を運ぶ。

    アイロンのある風景ー焚き火をする男と男女。

    神の子どもたちはみな踊るー宗教絡みの奔放な母とその息子。

    タイランドー女性医師。石。

    かえるくん、東京を救うーでっかい「かえるくん」が地球を救うため、片桐さんと共に闘う?

    蜂蜜パイー淳平、小夜子と高槻の娘の沙羅と熊。


    短編はここで止まるのが短編だけれど、先の気になる話ばかり。
    UFOの小村「まだ始まったばかりなのよ」。
    アイロンの順子と三宅さん、焚き火が消えたら。そして、啓介。
    神の子どもたちの善也、母親。
    タイランドのさつき、二ミット。石と蛇。
    かえるくんの片桐、かえるくんとみみずくん。そもそもかえるくんの説明が何もないけど。
    蜂蜜パイの淳平、小夜子と沙羅。高槻、この友人はこれからも好き勝手に動くのだろう。いいやつではあるんだろうけど。

  •  「UFOが釧路に降りる」は、元妻から離婚を迫られている小村が同僚の佐々木に頼まれて釧路へ行く話です。この話を深読みすれば色々と出てくるのかもしれません。けれども、ただ、小村が妻が離婚をすると申し出た事だけが頭にあり、佐々木のことはあまり深く触れていませんでした。けれども最後の方で分明してはいませんでしたが、佐々木(兄も妹も)の恐ろしさが少しだけ垣間見れた気がしました。
     「アイロンのある風景」は神戸の震災にあった三宅が海岸で焚き火をし、それを順子達が眺める話です。ただ焚き火を眺めるのではなく、焚き火のようなものが人間の中にあるのだと警告した作品だと思います。
     「神の子どもたちはみな踊る」は、沢山の異性と関わってきた母は宗教にはまってしまうが、息子はそんな母に反抗して宗教から足を洗い、多くの異性と交わった。そんな息子の父は産婦人科の医者をやっており、母と付き合ったことを息子ができた当初は否定していたが、数年後、息子の前で後悔した。……という話です。ただ気になることは、息子の邪念ってなんだろうってことと、宗教とは離別した筈なのになぜに元カノに神の子と言ったのかということです。やっぱり、拭いきれない何かがあるから、後悔して神の子って言ったのかな? よく分からなかったです。
     「タイランド」は、神戸に住む男が地震に巻き込まれれることを望む女性医師が主人公の話です。自分を捨てた男でも過去を振り返ってはならないってことが言いたいのでしょう。それが結果として悪くても、文句は言ってはいけないということがこの作品では主張したかったのでしょう。でも、言った方がすっきりする時ってあるから、必ずしもそれでいいとは思えないんだが……
     「かえるくん、東京を救う」は、アニメ「輪るピングドラム」で取り上げられた作品でした。この作品があったからこそ、この本を読もうという気持が持てました。ピンドラ(略)では世の中に起こったことが気付けば解決していたことって沢山あることを暗喩(?)として用いられていた題材でした。その中でも、特に片桐のような、実は会社や世の中で重要な位置にいるパターンって実はあると思うんです。その時、自分はどのように立ち振る舞えばいいのかを教えている作品なのでしょう。それは兎も角として、私は片桐の生い立ちになんだか不憫になってはいけないんだおろうけど、なってしまいました。でも、かえるくんのように軽率な言葉は慎んだ方が賢明なんでしょうね。だって、下手に同情していいとは思えない場面だろうし……と気にかけながら後半読んでいきました。かえるくんがみみずと戦う場面よりもそっちの方が気になっていました。
     唯一の書き下ろし作品である、「蜂蜜パイ」。四角関係なのに、あっさりとWカップル(夫婦)が成立。なんか、前からそうなることが運命づけられたみたいな感じ。ほのぼのするんだけど、たまにある沙羅の予知能力(?)が恐ろしさを醸し出しているかもしれない。
     今回初村上さんでしたが、流石にノーベル文学賞候補者だけあって話は面白いなって思いました。でもこれらの作品は、落ちがなさすぎて納得のいく終わり方ではない方も多くいるかと思います。けれども、これでいい気がします。なんとなくですけど……このぽいっと投げ出された感じが逆にいい味出しているのではないのでしょうか?

  • 短編。

    問題はないと思っていた夫婦関係の破局と、訪れた北海道での出来事。UFOが釧路に降りる

    海辺の町で焚き火をしていた絵描きのおじさんと会話したこと。アイロンのある風景

    信仰深い母のことと、偶然見かけたはずなのに消えた父親らしき人の残像。神の子たちはみな踊る

    ドクターが休暇で訪れたタイでの日々と震災のこと。タイランド

    忍耐強い銀行員が出会ったかえるくんと東京を襲う地震を救うために戦ったという、現実が幻想かあやふやな出来事。かえるくん、東京を救う

    男友達と女友達との壊したくなかった関係と、静かに変化していった三角関係。蜂蜜パイ

    阪神淡路大震災の災害がすべての短編に出てくる。

    最後の蜂蜜パイ、なんだか泣きそうになったなあ。
    村上春樹さんの影響を受けている他の小説家の人たちが頭に浮かんだ。

    それにしても毎回彼の小説を読むのに苦労して、彼の作品のどこらへんがそんなにも魅力なのだろうと疑問に思っていた記憶があるのだけど
    今回はとても読みやすかった。

    単に読みやすい文章?だったのか、私の読む力がついたのか、純粋に、面白かったなあ。

  • これ短編集なんですよね、勝手に長編と思い込んで、読んでみたいと思ってたのですが…。

    やっぱり、村上春樹さんの作品って不思議。
    ファンタジックな雰囲気を醸し出していて、問題というか、謎は全て解き明かされない。
    だけど歯がゆさが残るような不完全燃焼でもなく。
    このファンタジックな感じが、好きなんだよね。

  • 面白かった、短編集の中ではレキシントンの幽霊と並んで好き。
    蜂蜜パイって題名がかわいくていいなぁ
    神の子どもたちはみな踊るの雰囲気が好き

  • 遠い地で起きた阪神大震災を残響として聞きながら、人はしかし日常生活の中に戻っていかなければならない。その場合、とりあえず「今ここ」に存在する日常生活と「遠く」にある異常事態が共存したカオスのような世界を私たちは生きることになる。春樹がこの短編集で目指したのはそうした、「社会」の底が抜けた「世界」を晒すということではなかったか。春樹らしいセックスやスノッブな細部も控えめに綴られたこの作品集はそうした「世界」の崇高さ、神秘を指し示していると思った。真っ向から描くだけが震災のアクチュアルな表現になるとは限らない

  • 村上春樹の文はテンポがいい。私はそう思います。
    そんな村上作品の中でも短編集という形をとった本書は特に読みやすく、忙しい理系大学生である我々の癒しとなってくれる本です。
    難解な語、長い文などを用いずに独特の世界観を立ち上げていくその文体は他にはないユニークさで、気づいたら彼の世界に誘われています。突拍子が無い一方で、どこか懐かしさを感じさせるテーマは理解できずともしばらく心に残っているはずです。
    中国など他の国でも人気な小説家なのでこれを機に一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
    (応用科学系 B2)

  • 阪神淡路大震災の影響で書かれた物語。10数年ぶりに再読。前回と変わらず、あまりよくわからないが、蜂蜜パイが面白い。村上春樹は、男性の感傷的な心情を書くのがうまい。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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