騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3905
レビュー : 472
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534327

作品紹介・あらすじ

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。

感想・レビュー・書評

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  • 感触は『羊をめぐる冒険』。変なしゃべり方のキャラもかわいくてマイペースな美少女もスマートで得体の知れない男も、春樹キャラそろい踏みで、原点回帰なのかも。

    それはそれとして。主人公が極度のボンクラ設定なのか村上春樹が渡辺淳一化したのか、妻と別居したらさっさとセフレを作るわ、去った妻の思い出を言語化すれば肉体的なことばかりだわ、おっさんの欲望に正直なのかもしれないがじつに幻滅である。80年代からさんざんおしゃれにやってきたのに、けっきょくそれかよ、今までのもポーズだったのかよ、というね。

    そして。とにかく口を開けて待っていれば事態が動くのは大変おめでたいことで、仕事をうっちゃっても関係者はやさしく放っておいてくれるし、人妻や美少女が<私>だけに心を開いてつまんない冗談にクスクス笑ってくれるし、誰かがやる気を引き出してくれるし、実に都合がいい。

    さらに。言い回しが一本調子であること(主人公の麻痺の表現なのかもしれないが)、会話に人間の息遣いが感じられないことがかなり気になる。もう細かいところに配慮する体力がないのか春樹。

    と、不満は多いけれど300ページを過ぎたあたりからストーリーに動きが出てきたので、第二部は集中して読めそう。気になることを気にしなければ楽しく読める。どういう読書をしているのかと思ってはいる。

  • 2011年の秋頃。突然、本が読めなくなった。

    その2~3年前から、体調は良くなかった。

    だましだまし仕事を続け、上手く休みながら切り抜けているつもりだった。

    外回りにいくといっては、図書館で借りた本を片手に一人旅をしていたこともあった。

    だが、その本が読めなくなった。年間で50~100冊の本を読んでいたのに。

    あんなに大好きな小説が読めない。

    心の病は、脳の病気だという。

    ならば、自力でなおすのは無理だ。きちんと治療を受けよう。

    心療内科の門を叩くハラが決まった。


    例外的に、ベイスターズやプロレスについての本は読めた。

    趣味の本は読むのが楽だったからだ。


    そんなとき、「1Q84」が文庫化されるニュースを目にした。

    小説を読みたい!

    図書館では2000人待ちだとか。

    ならば、買うしかない。

    数年ぶりに書店に足を運び、「BOOK1前編」を手に入れた。


    読めた。小説が読めた。実に得難い喜びだった。

    青豆と天吾の物語に、魅了された。

    その後紆余曲折があり、良き病院、医師、カウンセラー、多くの仲間、そして家族の支えがあり、心の病は寛解した。


    本書は、その「1Q84」以来の長編書き下ろし作。


    表紙を開き、目次のあの書体を目にしたとき、心の病で苦しむ中、遠くにかすかに見えたあの灯台の光にまた出会えたような感動を覚えた。


    物語は、主人公の肖像画家の語りで淡々と進んでいく。

    学友の雨田政彦の好意で、ひとり住むことになった狭い谷間の入口近くの山の上の家。

    そこで物語は繰り広げられていく。


    深くて幅広い知識と教養。

    人間の内面を掘り下げようとする探求心。

    人と人の出会いがもたらす奇跡のような出来事。


    日本が誇る村上春樹の世界、ここに。

    この本を読めることこそが、幸せの一つだ。

  • 別に好きでもなんでもないのだが何故これだけ世間が騒ぐのか?との謎を解き明かすためにいわば研究材料として読む。
    そんな奴におらんやろ!のハイソぶりとすぐに服を脱いでくれる素敵な女性たちとのエロ三昧にさすがの巧さも加えて村上小説を読んでいる感は半端無い。
    そして今回の目玉はドラえもんならぬイデアもんの登場、マスコットさながらちょこまかと動き回る様はコミカルでとにかく楽しめる。
    しかしながらハルキストがスタバで熱心に読み過ぎるのか増刷に次ぐ増刷で製本が雑なのかブコフ本も図書館本もボロボロなのは何故だろう…答えを求めいざ下巻

  • ん~~まだ謎だ。どういう風になっていくんだ。

    とても読みやすい文章なんだけど、普通じゃない状況にいつの間にか陥ってる。
    淡々と毎日を過ごしているようで、普通じゃ起きないような事が多々ある。それが村上さんの小説だ。

    人妻との関係も必ずだね。

  • 前半の方が面白かった。好奇心にはリスクが伴うというのが胸に刺さった。
    音楽、食べ物、仕事、洋服、性的なこと、南京事件、セリフの言い回し、などなどが、いかにも村上春樹だった。
    読んでいると夢中になる。でも、何が後に残ったのかがわからない。それが村上春樹…なのかな。

  • 1Q84の穏やか版。
    免色さんが出てくるたびに、
    スプートニクの恋人を思い出す。

    美術館に行くのが楽しくなった。
    ミュシャ展に行った時、ものすごくこの話がちらついた。

  • 『青年時代の私は、フォルムの形式美やバランスみたいなものに強く惹きつけられていた。それはそれでもちろん悪くない。しかし私の場合、その先にあるべき魂の深みにまでは手が届いていなかった』―『4 遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える』

    遠くからきれいなものだけを眺めていたいのなら小説など読まないほうがいいのかもしれない。近寄ってみれば大概のものは凸凹でグロテスクあったり色々なものが一緒くたになって汚らしかったり。人も仮面の下でベロを出してこちらを見ているか、顔だけはこちらに向けながら全く別のことを考えているか。小説はそういうものを全て白日の下に晒してしまう。

    村上春樹に関して言えば、やたらと投げ込まれる性的な描写と、もはやお馴染みになったアンダーグラウンドのドロドロ。それをどう受け止めるかということになるのだろう。それは誰の心にもあるんだよ、という語りかけが、この随分と非現実的な例え話を通して続く。そんなものかな、とも思うし、そんなことはない、とも思う。積極的に見たくはないのに目を逸らすことも出来ない。思考停止ではなく思考過多による機能不全。思考することを可能にした脳の発達によって人間は飛躍的に進化したというけれど、その思考によって人間は不自由でもある。そんなことをぽつりぽつり考える。

    「1Q84」がそうであったように、この物語も閉じているようで何も閉じていない。村上春樹の書く物語に大団円など期待している訳ではないけれど、このあちらこちらに開きっ放しになつている物語を一つ一つ閉じなければ現実の世界には戻れないよと、ミヒャエル・エンデの物語のように問われたら、村上春樹は暗いアンダーグラウンドから戻ってくることは出来ないだろう。もちろん村上春樹の主人公はいつも現実の世界に戻って来る。戻ってきた所が、元の現実の世界かどうかの保証は無いけれど。そして底無しの暗くドロドロとした穴の中に何があるのかも解ったようで判らない。ただ、いつもカエルくんのような存在がいて穴の底に落ち込んでしまわないよう助けてくれる。そんな風にまとめてしまうと村上春樹はいつも同じ話を書いているのだとも言える。

    土地の名前、車の種類、ウィスキーのメーカー、そして、音楽に関わる固有名詞たち。そういうものはどれもこれも実際の名前であるのに、そこから何かが連想されて物語に影響を与える訳でもないところも村上春樹的だな思うところ。それは舞台の小道具のようにさり気なく置かれたという文脈の中に在りながら、かなりわざとらしく存在が主張される。そのイコンの意味するものは何か。これもいつものことだが、その意味を上手く掴み取ることが出来ない。それは、あたかも現実の世界を見分ける符丁であるかのように書き込まれるのだが、シンボリックなものであればある程嘘臭く実在が不確実に見える。例えばハメットの小説に登場する小道具も決まりきっているけれど、存在が否定されるかのように扱われる。そのシンボリックな意味合いは、例えば路地裏に転がるウイスキーの空瓶のように、大概の場合明らかだ。それに比べて村上春樹の小道具は存在を強烈に主張するが故に名詞に張り付いた意味が文脈から逸脱する。例えば白いスバル・フォレスターが持つ意味のように。この固有名詞の意味するものの表層的な印象とその仮面の下にある暗澹たる本質のコントラストと言うものが何よりも村上春樹的であるように思う。

    それにしても、本書も「1Q84」と同じように、次の巻に続くのだろうな。何しろカオナシとペンギンのチャームの物語はまだ開始されてもいないのだから。

  • 妻に別れを告げられ、混乱と失意の中、年季の入ったボロ車でかなりの長距離をドライブしていく、あまり名も知られていない売れない画家が主人公です。友人から山の上の空き家を借りて、お金はないけれど、厭世的なスローライフが始まります。主人公の描く肖像画には特別な力があり、対象の奥深く眠っているものまでをも映し出す...
    友人から借りた家には、持主であった友人の父のアトリエがあり、主人公はそのアトリエで創作活動を始めます。そこからは、不思議な、画家との混じり合いが広がっていきます。

    村上さんの小説は"なんとなく"読むのが良い気がします。ゆっくり、流されるような感じがします。近所の大人びた女の子とか、不倫相手の主婦だとか、胡散臭い白髪のお金持ちとかが出てきて、なんやかやまるくおさまります。絵描きは、小説とか、物事を捉えて表現することがにてるのかな。村上さんが書くと絵描きさんの気持ちが理解できる気がしてきます。おこがましいですけれど。

    • 大野弘紀さん
      この本はずっと気にはなっていたのですが、手が伸びていませんでした。文庫が出た時に…と思っていたのですが。いつもの村上節を感じます。改めて買お...
      この本はずっと気にはなっていたのですが、手が伸びていませんでした。文庫が出た時に…と思っていたのですが。いつもの村上節を感じます。改めて買おうと思いました。私にとってはとてもほしいレビューでした。ご縁に感謝。
      2018/10/22
    • はるけるさん
      拙い文章ですが、そんな風に言って頂けてありがたいです。村上節、炸裂してます笑
      私も文庫で読むことが多いですが、ハードカバーでも読みやすかった...
      拙い文章ですが、そんな風に言って頂けてありがたいです。村上節、炸裂してます笑
      私も文庫で読むことが多いですが、ハードカバーでも読みやすかったです。
      コメントありがとうございました。
      2018/10/22
  • 発売から1年半経った18年9月のある土曜日の夕方、突然「読まなくては」「読みたい」と思った。全2冊、合わせて1000ページ程度を一気に。

     面白かった。止められなかった。幸せな時間だった。もっとも、途中仕事もせざるを得ず、読了までには4日程度かかった。でも、重たいのに出張先まで持って行ったし、移動中もホテルでも読み続けた。
     解釈は不要。そのままの人間の物語。誰かのために、引き返しようもないところへ突き進まなければならないもこともある。

  • 図書館本。かなり待たされた。
    相変わらず不思議な話だが、『海辺のカフカ』のような心地よい不思議さではない。今回はフォースの暗黒面が描かれているようだ。いつものように俗っぽい内容もしっかり盛り込まれていて退屈はしないが、グイグイ引き込まれてやめられない止まらないというほどでもあらない。ラストの章で急展開、早くメタファーに還りたい。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ、早稲田大学第一文学部演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーターキャット」を国分寺に開店していた。
1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。
翻訳家としての仕事も高い評価を受け、フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけてきた。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、いまなお作家として成長を続けている。
代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。

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