- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534327
感想・レビュー・書評
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免色って、ジェイ・ギャツビーみたいな奴なんだね。
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コレって、何月に発売された本だろう?
発売されてしばらく経った頃、「あ、そう言えば」と思って図書館で予約してみた。
図書館の人から「待ってる人数がすごいけど大丈夫ですか?」って聞かれて、ええ、ってアイマイに答えた。別に今すぐ読みたい本でもないし。そのうち来れば良いや、ってカンジで。
たぶん300人~700人くらい待ち、だったと思う。
2017年7月になって、上下巻が揃って届いた。
本を借りて、数日間は、別の本を読んでたんだけど、返却期限の日までには読み終えなきゃ、って思って、読み始めた。
最初は、つまんなくて、ちょっとずつしか読めなかったけど、第1部の後半くらいから、読むスピードが上がってきて、3時間くらいかけて最後までイッキに駆け抜けた。
以下に感想を書く。
まず、表紙のデザインがつまらない。
もっと、オシャレにできないの?もうちょっと工夫できない?
表紙のデザインって大事だと思うんだけど。
題名もしっくりこない。
こんなつまんない題名をつけなきゃいけない必然性があったの?
もっと、みんなが欲しくなる題名は他にあるんじゃない?
ページを開くと、いきなり、いつものくだらないファンタジーが始まった。
「短い午睡から目覚めた時、顔のない男が私の前にいた。」
やれやれ、またかよ。
ため息が出た。
主人公は、肖像画を描いて収入を得ている画家。
妻の柚(ユズ)と突然、別居することになる。主人公には、理由は分からない。柚が見た夢のせいで、離婚したいという展開になる。
『夢は妻にとっていつも大きな意味を持っていた。』
柚は別の男と付き合ってるという。
主人公が妻を選んだのは、彼女の目が、主人公の亡くなった妹に似ていたから。
友人の紹介で、友人の父親の日本画家の家を借りて住むことになる。
絵画教室で教えていたときに、声をかけて、2人の人妻とつきあうようになる。
前半の方で、病気で亡くなった妹の話が出てくる。
村上春樹の小説ではいつも誰かがアッサリ死んでしまう。これには違和感を感じる。
狭い棺に入れられた妹を見ていた主人公は閉所恐怖症になる。バイト中にトラックの荷台に閉じ込められたこともあって、エレベーターに乗ることすらできなくなる。
狭い場所に入ることを想像しただけでも恐い。
それなのに、後半で、免色に頼まれて彼をほら穴に1時間も閉じ込めるのは平気、という設定は不自然だ。
登場人物の行為に関して、フロイト的な解釈が持ち出される。
いまさらフロイトかよ。
いや、フロイトをユングに取り替えたところで同じこと。河合隼雄なんて過去の人じゃないか。古すぎるよ。ブルース・スプリングスティーンの『ザ・リバー』をターンテーブルに乗せて、うれしそうに聞いているのと同じくらい古い。
まあ、『ザ・リバー』は、オレも好きだけど。さすがにレコードでは聞かないなあ。もし、聞くとしてもmp3で再生するくらい。
村上春樹の感性は、完全に時代に追い抜かれてしまっている。
これって、だいたい1980年代~せいぜい1999年くらいまでの感覚で書かれた小説であって、現代の小説とは言えない。
彼の小説を読むとき、オレには、いつも、この言葉は、英語や外国の言葉に翻訳されたとき、どうなるんだろう?って想像してしまう癖がある。
たとえば『1Q84』なんてくだらないダジャレは、いったいどうやって外国語に翻訳できるんだろう?とか。
そもそもジョージ・オーウェルの小説は『いちきゅーはちよん』と読むのではなくて『せんきゅうひゃくはちじゅうよねん』だからね。
そんな、これって訳せるの?って疑問に思うワードが、今回はとても多かった。
・おまもり
・将棋の駒
・日本画
・祠(ホコラ)
・おみくじ
・即身成仏
・飛鳥時代
などなど。
過去の作品では、現代の、世界中どこにいても、あまり変わらない生活、マックやスタバがあったり、ビールやワインを飲んだり、サンドウィッチやパスタを食べたり、みんなジーンズをはいていたり、車に乗ったり、スマホで話したり、インターネットしたり、そういう民族性や地域性が薄れて均一化された現代世界を描いてきたのに、今回の小説では、やたらと日本のローカルな事柄が出てくる。
これは、これまでとは、ちょっと違う傾向かなあ。
逆に、男性と女性が、なんの抵抗もなく、あっさりセックスする展開は、いつもと同じすぎて、ウンザリした。
何かがウソっぽい。
セックスについての記述はメンドくさかった。
これは、いったい何のために書いてるのだろう?
興奮してビンビンになっちゃうくらいリアルに描かれてるわけでもないし、抽象的、隠喩的に描かれてるわけでもない。
こういう描写を読んで、読者は、興奮したり、喜んだり、するの?
少なくとも、オレのペニスはピクリとも動かなかった。
意味が分からない。
それから、主人公がセックスする相手の年齢が上がってきてない?
絵画教室の人妻とか、秋川笙子と免色との恋とか、40代で、年齢層がギリギリまで高くなってきてる気がする。
村上春樹が年とってきたから?
子供のことは、これまでの長編小説にはない新しい要素だ。
秋川まりえは、子供をうまく描けているとは到底思えないキャラクターだった。直感が鋭いところは分かるんだけど。
でも、実際、女の子は、あんなカンジじゃないよ。
もっと、闇や虫や爬虫類や、いろんなものを恐がるはずだし。夜中に、山道の草むらの間をすり抜けて人ん家に行くなんて、そんな女の子いる?
オレでも恐くて、そんなことできないよ。夜中の山道なんて、蛇がいるかもしれないし、どんな虫がいるか分かんないし、どんな生物がいるか分かんないし。恐ろしすぎる。
これ読んでて、村上春樹には、法律上の妻とは別のところで、子供がいるのかもしれない、って、ふと、思った。
主人公が、出会った相手といとも簡単にセックスできる小説ばかり書いてるんだから、村上春樹も、あちこちで、セックスしてるんだろう。
だから、アチコチに、子供がいたとしても、おかしくないよね?
この小説は、そのことを描こうとしているのか?
安物の娯楽小説としては、『1Q84』よりも、リズム感やスピード感や、めまぐるしく展開していく力がはるかに鈍っているし、退屈なものになっている。
また、少し内省的な長編小説としては『ねじまき鳥クロニクル』よりも「くだらないファンタジー」部分が肥大化しすぎているし、表現も幼稚になってきている。
全体的に言って、極めてデキの悪い小説だ。
それでも★★にしたのは、『ねじまき鳥クロニクル』にも出てきた、物語の大筋に、オマケのような形で挿入される、第二次世界大戦の短い記述が、過去の作品よりも迫力を増してきたから。
この部分だけは、先鋭化されてる。ここだけは、もはや「くだらないファンタジー」ではない。
雨田継彦が、上官に命令されて、軍刀で中国人捕虜の首を切り落とすシーンは、リアリティがあって恐かった。帝国陸軍においては、上官の命令は即ち天皇陛下の命令であり、絶対に逆らえない。
ショパンとドビュッシーを美しく弾くために生きてきた音大の学生だった継彦は、捕虜の首を切り落としたことで精神を病み、帰国後、自殺してしまう。
継彦の兄である雨田具彦がウィーンでの反ナチの地下抵抗組織に加わったのは、弟の自殺が、ひとつの動機だったかもしれない。
言論の自由が失われてゆく現在の日本で、このように、作家が書きたいことを書ける、というのは大事なことだ。
ただ、そこに国際的な文学賞をゲットしたい、とか、そういう卑しい根性がないのなら、日本人の殺戮行為だけでなく、ヨーロッパの帝国主義、植民地主義が、アジアで、アフリカで、犯してきた無数の殺戮行為も、それがどれだけ残虐なものであったか、狡猾ないやらしいものであったか、同時に描いて欲しい。
ノーベル委員会の審査員の、特権的な白人たちが、もう立ち直れないくらい本当のことを書くべき時だ。時代は変わったのだから。中国人やインド人や、新しいパワーが世界経済と国際政治の力の均衡を現実に塗り替えている。
白人中心の世界はもう終わったんだ。
今こそ、アジアで、アフリカで、連中が犯してきた人類に対する罪を、徹底的に描くべき時だ。
戦争とか殺戮のリアリティは、まさに、血で血を洗うところにこそ、あるのだから。 -
著者の比較文化的知識から無駄のない情景描写まで、読者の心を捉える仕掛けが随所にちりばめられていて、巻頭から巻末まで心地よく読み進められた。
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なぜか途中で止まってしまったなぁ。
イデアとか少女とか車とか山とか凄惨な歴史とか女性に捨てられる男性とか資本主義的な男性とか色彩とか女性とのセックスとか、そんな何てことないひとつひとつの要素に過去作の影を勝手に見てとって勝手に辟易としてしまったのではないかというのが今のところの仮説なんだけどとりあえず下巻を読もう。ジャングル通信。 -
村上春樹の騎士団長殺しを読みました。
久しぶりの長編小説で、語り口は面白く読んだのですが、エピソードの納得性にちょっと不満を感じました。
村上春樹の物語は言葉での説明はされず、エピソードが積み重なることにより物語の立体感が出てくると思っていますが、この物語ではエピソード間の整合性があまりとれていないように感じました。
その結果、消化不良のエピソードがたくさん残った平面的な物語になってしまったと感じました。
ちょっと残念です。 -
今回の作品はこれまでの村上春樹作品の中で最も読み進めるのに時間がかかったと思います。
村上春樹さんの作品は言葉や文体それ自体は難しくはありません。むしろ非常にシンプルだと思います。しかしながら、その奥にある“意味的なもの”は非常に深く、複雑に絡み合っています。「騎士団長殺し」はその傾向がより顕著で、一文一文の奥にあるものの階層がとても深く、私には考える時間が必要でした。
哲学的であり、抽象性も高いと思います。
また、音楽、絵画、歴史、文芸などの文化的教養も組み込まれています。
余計な考えかもしれませんが、村上春樹さんの作品が苦手な方は、特に苦手と思われる傾向にある作品かもしれません。
私は、とても好きですが。 -
なかなか読み進めるのが難しかった。村上ワールドはいつものままなのだけど大人向けな感じのする本です。ストーリーはテンポよく進むと言うよりはじわじわと日常が非日常におかされていく感じだった。そのじわじわ間がちょっと耐えづらかったかな。
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初村上春樹。話題の人なので読んで見た。無駄な強調点、流れを一々止める括弧の乱用、これが村上春樹の小説なの?ってなかなかページが進まない初日だったけど、後半からは難なく読めた。小説はどれも少なからず理屈っぽいが免色氏との会話は読んでてもしんどかった。
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読み終わってしまう悲しさを考えて、少しずつ大事に読もうと思っていたので、細かく分かれていた章が区切りになって助かった。村上春樹さんらしからぬ読みやすさですらすら進んでいくのが不思議だったけど、アンダーグラウンドの登場ではいよいよ始まるワクワク感。
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久々の村上春樹の新刊。予約していた二冊組が一度に来たので一気読みしても大丈夫、と読み始めたもののなかなか読み進めない。
毎度のことながら、村上作品は登場人物たちのキャラクターや独特の表現、文体に慣れるまでにいつもそれなりに時間がかかるのだけれど、長年のファンとしては簡単に読み終えてしまっては勿体無いし、一気読みのエンジンが掛かるまでが楽しかったりするので、じっくり読む。イデア編ではとにかく騎士団長。彼に尽きるなぁと思いつつ後編へ。