- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534341
感想・レビュー・書評
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川上未映子による村上春樹へのロングインタビュー。
村上春樹にとって小説を書くとはどういうことなのかを説明する時の喩え話が興味深く、合点が行った。
一階が共用の場所、二階がプライベートルーム、地下一階が自我で通常の私小説はここが舞台、そして地下二階が作者自身にもわからない心の闇の世界。そこへ行くには壁抜けしなければならず大変な労力を伴うという。
確かに「世界の終わり~」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「1Q84」「騎士団長殺し」は壁抜けしてその世界と行き来していた。
地下の話は、優れた音楽家とは何かという話に繋がっていく。
グレン・グールドの演奏は右手と左手のスプリット感が独特で、乖離の感覚と、乖離されながら統合されている感覚を生み出し、それが本能的に人の心を強く引きつける。この危うい感覚こそ彼が地下二階まで到達している証だという。グールドの凄さを言語的に表現できるとは。さすが村上春樹、とても感心した。
そして自身のスタイルを洞窟の中で語り部として集合的無意識に語りかける「洞窟スタイル」と語ったり、具体的な創作の方法論や過去作の話などどれも興味深かった。
村上春樹の全てを知れたとは思わないが、かなり深く理解できたと思う。「騎士団長殺し」の余韻が残る中で読んだが満足できる一冊であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
誰でも10代の頃に憧れた
ヒーローとかヒロインっていますよね。
で、もしも大人になって、実際にその対象となる人物に
話を聞けるとしたら、どんな気持ちになるでしょうか?
今回ご紹介する本は、10代のころから村上春樹を
愛読していたという川上未映子さんという小説家が
計4回に渡って、春樹さんの自宅などを
舞台にインタビューした、という一冊です。
キャ~キャ~という感じのファン意識は
表面的には出ていません。
リスペクトを前提にしながらも
生物学者がようやく出会えた
希少動物の検体を解剖するように
村上春樹のテキスト自体を、そして書く手法を
さらに書くに当たっての心構えを、
同業者ならではの鋭いメス(視点)で切り込んでくれています。
そんな川上さんに対して
答える側である春樹さんも
真剣になおかつ「ここまでネタをばらしてくれるの??」
と思うくらいサービスたっぷりに答えてくれています。
川上さん自身が芥川賞を受賞するほどの作家ですから
話はかなり具体的な執筆ノウハウや
深い部分での書くにあたっての心構えみたいなものも
春樹さんは惜しげもなく披露してくれています。
例えばMacで使っているエディターの種類とか
執筆スケジュールの建て方とか・・・。
だけれども聞かれる側である春樹さんの
サービス精神のおかげもあるのでしょう。
難解な文学談義という雰囲気はありません。
おふたりの話はとてもわかりやすく
読む人誰もが、他の仕事や普段の生活にも
応用できそうに思えるくらいに普遍性を感じます。
しかしヒヤッとする場面もあります。
自称フェミニストだという
川上さんがハルキワールドでの
女性キャラクターの扱われ方について
ツッコミを入れている場面です。
春樹さんも結構答えにくそうにしているように思えます。
男である私ならサラサラと読み流してしまいがちな
そんな場面にもざっくりと切り込んでくれるあたりも面白いですね。
時期的には最新長編である【騎士団長殺し】を書く直前
それから書き終わった直後の計4回となります。
したがって【騎士団長殺し】に関する質問と答えが多いです。
正直申しますと【騎士団長殺し】は
私的には残念な作品という印象だったのですが、
このインタビューを読んで再読してみたくなりました。
少し印象が変わるかもしれませんね。
さて最初に書きましたとおり
10代の頃に憧れたヒーローやヒロインに
大人になって会って話をしたらどんな気持ちがするのか?
自分的には想像外の状況になりますが
川上未映子さんはこのインタビュー集という作品で
「憧れ」に対しての見事な決着法を示してくれているように思えます。
それは「憧れ」の対象と同じにならなくとも
同じ位置までいかなくとも、
自分なりの足場さえ作ってしまえば
「憧れ」と対等に話をすることができるということかな、と思えます。
それが「憧れ」との理想的な決着の付け方のひとつなのかもしれませんね。
2017/08/20 05:01 -
物語の解説だったり意味を探すのはあまり好きではないのだけど、村上春樹さんの小説を書くことが好きという気持ちやストイックさを言葉で触れられて嬉しかったです。
川上未映子さんの質問力も素晴らしくて圧倒されました。
「何度も何度も噛み直せて、噛み直すたびに味がちょっとずつ違ってくるような物語を書きたい。」
何度も何度も読んでも、毎回心に響くすごさ、感じています。
インタビューを終えて、の短い文章がやっぱり一番好きでした。 -
聞き手が頭のいいひとだということが、読めばすぐわかってきます。
通り一遍の聞き方、どこかで読んだことのある話、
「おもしろいネタ」として取材された内容の薄い文章に慣れた目には、とても新鮮です。
聞き手の力で、ここまでいろいろな切り口で新しい話が聞けるのだ、ということがよくわかります。
聞き手、といっても同業者。さらに、弟子でも師匠でもない関係で、しかも性別が違うふたり。
直近の作品を題材にしながらも、昔の作品の出たとき当時の話も絡んできます。村上さんがこれまで発表してきた作品を取り上げ、当時の状況を語っています。
ありがちだけど、この本でしか読めない。
貴重な一冊です。 -
文体へのこだわりの話おもしろかった。
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面白い!
この前小川洋子さんがどうやって書いているか語った本を読んだばかりなので、いろいろなやり方が確立されて行くのだ、だからこの人はこういう小説を書くのだ、というのが腑に落ちて興味深かったです。
語り口、文体を大事にしているからこういう小説たちが生まれるのだなと納得。
抽斗のこと、それぞれの作品で試みていたこと、地下二階のこと。
彼の文章や取り組み方のスタイルはやはり特殊なのだな…。
作家がインタビューするからこその面白味がある。
「インタビューを終えて」がまたよい。
でも、読んでて気づいたんだけど、春樹の小説結構読んでるのにほとんど忘れてる私。
もともと読んだ内容忘れやすいとは思うんだけど、キーワード聞いても思い出せないくらい忘れてるのとかあってびっくりした。異常に覚えてない。
なんかあるんだろうな。それこそ、文体とかに。-
読んだ本を忘れがちってわかります^_^
必ず染み込んでるらしいですよね
再読の楽しみもあるって事です^ - ^読んだ本を忘れがちってわかります^_^
必ず染み込んでるらしいですよね
再読の楽しみもあるって事です^ - ^2023/05/07
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「みみずくは黄昏に飛びたつ」(川上未映子 訊く 村上春樹 語る)を読んだ。
帯にある『ただのインタビューではあらない』には思わず笑った。
「ほんまかいな。村上さん、率直に語りすぎでしょ!」というくらいに川上さんとの掛け合いが面白いですよ。
もう一度「騎士団長殺し」読もうっと。 -
何となく手に取った。そしたら読みやめられなくなった。
というのも、質問者川上未映子のインタビューに向かう姿勢があまりに真剣だったから。そしてその真摯さに、インタビューされる側の村上春樹が時に動揺させられるさまがひしと伝わってきたから。
自分はとくに熱心な村上ファンではないけれど、川上未映子にインタビューされる村上春樹という人間が、すごく好きになった。 -
川上未映子さんの春樹フリークっぷりがすごい。作品の内容について本人よりよく覚えてる! すごいよほんと。わたし全然覚えていなくてそれにも驚いた。。
あと川上さんは、フェミニストなんだね。知らなかった。