亜シンメトリー

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 75
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103539315

感想・レビュー・書評

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  • うーん、どうもこの作家さんとは好みが合わないようだ。
    思えば「ゴースト≠ノイズ」も私が苦手な回りくどい話で、それでもミステリーとして楽しめたので新作にも手を出してみたのだが見事に失敗。

    四話のうち三話は言葉遊び。
    変換の仕方を変えると文脈が変わる日本語の妙やシンメトリーな文字を使った会話などのパズル。
    しかしそれがミステリーの肝かと言えばそうではなく、むしろ物語の展開なのだろう。
    四話いずれも恋愛の話なのだが、この恋愛の形がいずれも好みではなかった。

    とにかく遠回しだったりぼかしてあったりで歯痒い。それで結局何を言いたいのかと先を読んでいけば、複雑でキテレツな三角関係だったり不実な男の話だったり。
    特に三角関係の話は二話に渡って描いたオチがこれとは。九年も掛けて遠大な駆け引きをし、このために子どもまでもうけるその感覚が全く理解出来なかった。

    しかしこれも自分に正直な生き方、自由恋愛と言うのだろうか。本人当人が納得していて幸せならそれで良いとは思うが、今回は当人の一部は納得していないし当人の一部は知らないのだから自由恋愛ではないだろう。

    第三話までは我慢して読んだが、最終話の表題作に至っては流し読みしてしまった。すみません。
    他の方のレビューを読むと高評価もあるので、好みの問題だと思う。私には合わなかった。

  • サスペンス満載の恋愛短編集 “ハラハラする”十市社の『亜シンメトリー』 | ananニュース – マガジンハウス
    https://ananweb.jp/news/354510/

    十市 社|note
    https://note.com/t_yashiro

    十市社 『亜シンメトリー』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/353931/

  • 2話目みたいに、スルーしかけておっと待て待て、と読み直す感じは好き。タイトル作はまるでわからなかった。シンメトリーのタネを明かされても、全体がピンとこない。3話目までの雰囲気が好みだったのにラストが難解で読後感がもやもや。

  • 4つの短編集。第三章が第一章の物語の完結編となっている。

    それぞれに「騙されるもんか!」「ひっかかるもんか!」と気合を入れて読んでいったのに、ちゃんときちんと仕掛けに引っかかって我ながら良い読み手だな、と負け惜しみを言ってみる。

    第一章 大学のジャズサークルの先輩と後輩、そしてもう一人の後輩。三人の思惑が入り乱れつつ「言葉」によるひっかけにあっさり引っかかる。謎解き楽しい。
    第二章 これは最後まで分からなくて、え?どういうこと?となり、読み終わった後、自分の頭の悪さに笑う。これは二読目が楽しい。
    第三章 第一章の9年後。母親になった先輩と社会人の後輩、そして後輩と付き合っているもう一人の後輩。
    この三人の関係の複雑さよ。第一章で浮かんだ三人の思惑が何をどうしたらそうなるか、って形の提案となる。
    9年前にまかれた仕込みがどういう形で決着するのか、にやにやしながら読む。
    第四章 これは頭が大混乱。バスの中でのゲームに気を取られている間に、完全無欠の大渋滞。読んだ人と答え合わせをしたくなる。

  • 一対の関係の美しさ、収まりの良さ。
    だけどそこに収まらないものが微かな違和感/異物感と共に逆に目を惹くこともある。
    四つの短篇の裏にいったいどれだけ秘された物語があるのだろう。
    咀嚼してた文章の味が唐突に変わる瞬間!みたいなものにもっと出くわしてみたい...。

    2話目は意味がわかると怖い話的な、かなりイージーなサプライズだったと思うけど、表題作は驚きの方向性すらピンとこないまま読み終わり。
    いや僕にもっと根気があればあれとこれは自力で気付けたかもやけど。
    刊行からかなり時間経ってるけどネットでネタバレ探しても完全版みたいなやつは見つからず。奥深い...。

  • 自分の読解力の問題だが、もう一度しっかりと読まないと感想書けない。

  • 中熊美緒と千日顕に紫子(ゆかりこ)が絡んで、年代不明のトラブルを取材した高校生の書き起こしたテキストの解明をたどる「枯葉に始まり」と「三和音」はそのテキストが共通していたが、やや複雑であまり楽しめなかった.「薄月の夜に」では染谷亮輔から巧みに逃げ出す大島英里と保村の作戦が面白かった.表題作では文字の対称性にこだわる花田早由里と津村亜樹のやり取りだが、夫になる花田から早由里が貰った手鏡がストーリーの中でなぜか光っていた.

  • 『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』『滑らかな虹』でミステリに新風を吹き込んだ著者による初の短編集。帯に「求む挑戦者。」とあるものの、本格推理の色は薄く、独立して謎があるというよりは、物語そのものに謎が組み込まれている印象。長編の多い著者だけに、短編の読み味が気になったが、長編と遜色ないほどの密度の濃さを感じた。



    「枯葉に始まり」

    ジャズサークルに所属する先輩から持ち込まれた謎と、その背景で三者三様の思惑が交錯する一本。それぞれの内心を交えながら語られる三人称は当初はややとっつきにくさを感じたものの、丁寧に紡がれる人物描写の巧みさに無意識のうちに飲み込まれてしまった。以前『滑らかな虹』の感想にも書いたが、十市社の人物描写にはキャラクターへの「断定」が一切ないのが凄い所で、それは本作でも変わりがない。これは昨今流行りの、分かりやすくキャッチーな人物造形が売りのキャラクター文芸とは一線を画す所である。リアリティのある人物造形、というのとも少し異なり、出てくるのは物語の登場人物ながらも、読み手との距離感は実在の人間に近いのかもしれない。それは小説を読み慣れたメタな視点を持ちがちな読者ほどフックとなって引っかかるポイントで、人によってはその不安定さに落ち着かない心境を抱くとも思う。しかしながら、そこが十市社作品の真骨頂でもあり、その「寄る辺なさ」に、物語における役割の安心感のない不安感を覚えつつも、ページを繰って推移を見守るしか道はないのだ。

    暗号めいたテキストの解読はミステリらしさがあり、口語文ならではの引っかけも随所にありながら、その謎の解決は独立したものではなく、登場人物の思惑によって意外な輪郭を持った謎へと形成される。誰も彼もが腹に一物抱えながらも、明確についた嘘と仕方なくついた嘘、隠された本心に隠し切れなかった本音と、心理描写はグラデーションのように様変わりする。そして名前の付けない感情の正体に気づいた時には、物語が一気に色を取り戻す。これは○○の話なんだな、と一言でまとめられない所に味わいがあり、それは作中の人物と同じ思い出の共有に繋がるのだろう。



    「薄月の夜に」

    分かる人には一発で分かる、ミスチルの曲をモチーフにした作品で、最初その仕掛けに気づいた時には笑ってしまった。最初の短編に反して、こちらは逆に一人称をほとんど持ちいずに物語が進行しており、巧妙に隠されたアイデンティティは、語り手でありながらもその本質に気づくのは物語の最後になってからというのが面白い。ミステリで言うところの信頼できない語り手、というのともまた少し違うため、読後の感想としては「騙された」ではなく「気づかされた」なのだ。話の筋立てそのものは最初の短編と比較して驚くほどシンプルで、一言で説明のつく、なんてことのない浮気の話である。しかしながら、前述の「キャラクターの断定がない」のがポイントであり、読み手の第一印象を逆手に取ったわけでもなく、主人公の不貞もそれが全てというわけでもない。つまるところそれが人間というもので、よくある話だがどこにもない話という、奇妙な読後感に繋がっていくのだ。


    「三和音」

    「枯葉に始まる」の続編でありながら完結編となる一本である。母となった中熊さんの心境の変化の筆致が上手く、母という役割が先に立つわけでなく、変わってしまった中身の方を先に描けるのはこの著者ぐらいだろう。前回で残された謎と、奇妙な三角関係の決着を描く物語なのだが、珍しく三人の関係性に断定的な言葉が出てきたのはやはり決着を意識したからだろうか。面白いのは、最終的に中熊さんがポリアモリーな関係にNOを突きつけたことで、そこに至る過程も子供を持ったからだということを踏まえると納得しかなく、物語における救済がないのもリアルである。しかしながらそれが残酷な現実や保守的な社会という結末にもならないのがこの物語の真骨頂で、三角関係を通して思い出への決別であったり、しっかりと答えを出すことで、浮いたままだった紫子の恋心に失恋という形でケリをつけたのが素晴らしかった。しかしながら、愛は共有できずとも、恐らく三人の腐れ縁は続いていきそうな予感があるし、三角関係が無理でも、恋人と友人として付き合い続けるのは今後の展開次第では可能である。それはさながら地球と月のような付かず離れずの関係であり、月が地球に衝突する必要性はないのである。中熊の迂遠な策略の成就が、謎と秘めた恋心の発覚で一転して窮地に陥る様は面白く、それでいながらしっかりと幕引きとなったのも見事である。この短編集、個人的には「枯葉に始まる」と「三和音」の二作が非常に好みであり、連作短編で読んでみたいと思ってしまった。


    「亜シンメトリー」

    表題作でありながら、個人的には一番難解な短編で、掴み所に苦労した物語でもある。作中で仕掛けられたシンメトリーの漢字ゲームは面白く、それに合わせて語られる昔の初恋の物語も、昔語りの雰囲気が朝のバス停という空気感に非常にマッチしており、日常でありながら非現実的な空気の醸成に一役買っていると言えるだろう。しかしながら、僕自身の読解力の限界を突きつけられたのもこの作品で、物語の外殻をなぞる語り口に終始翻弄されて、切り込んだ語りが少なかったせいか、いまいち全体像を掴み取れなかったという悔いが残ってしまった。クライマックスで出てきた芥という老人がかつての初恋相手なのだろうか?蓮の話は心境を表していたのか?巨椋は鏡写しにすると巨は亜になるが関係はあるのか?と色々と考えたが分からず仕舞いで、自分の読解力の浅さに辟易としてしまう。しかしながら、帯の文句もあって挑戦心が沸沸と湧いたのも事実で、これから先、繰り返し読むであろう「宿題」で、そういう意味では一番贅沢かつ末長く楽しめる短編であると言えるだろう。現時点ではこういう感想で非常に心苦しく申し訳ないのだが、いずれまた機会を見つけてリベンジしたい。その時はこの続きに感想を書くと思う。

  • 2021/03/21読了

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