象の皮膚

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  • 新潮社 (2021年6月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784103541110

作品紹介・あらすじ

皮膚が自分自身だった――。痒みに支配された女性の生きづらさを描く三島賞候補作。肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティで各紙絶賛の話題作。

感想・レビュー・書評

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  • アトピーの痒みに支配された女性書店員、五十嵐凛の生きづらい日常である。

    本人にしかわからない痒みと日々たたかっているのがとてもわかる。

    物心つく頃だろうか、兄も弟も丈夫で綺麗な皮膚なのに自分だけが…という思い。
    小学校で「あいつはカビ」だと言われて級友や教員を避けて、教室の隅でじっとしていた我慢の6年。
    中学で新たな級友の視線を感じ、「首黒いね」からカビという呼び名から象女になる。
    家族でも兄からは露骨に汚いと言われる。
    父は「おまえは気合いが足りない」と言う。
    ひとり暮らしするようになり、たまに実家に帰れば母から「あんたに愚痴を言う資格はない」と…。
    非正規で未婚だからか。
    職場でもアトピーを長袖で隠し、男性スタッフが少ないなか、万引き犯や転売屋やハードクレーマーとの闘いの毎日である。
    そして、災害があり…
    何があろうと皮膚は痒い。
    痒みがなくなることはない。
    なんとかしたいが、どうにもならないのが皮膚なのか…。
    皮膚が自分自身だった。は辛すぎるだろう…





  • わかってもらえないってつらい。
    しかも、家族にさえも軽くあしらわれてしまうなんて。

    皮膚の病気は、性格にも影響を与えると思っている。
    アトピー持ちで、明るく社交的な子を見たことがない。どちらかというと、やっぱり肌を隠したくて、人に自分を見られたくなくて、自分を隠したくなるような性格になると思う。
    好きな服を着れない。好きな髪型にできない。好きなように振る舞えない。
    肌のきれいな子がただただ羨ましかった。

    私も子どもの頃アトピーがひどくて、この本を手にとった。(大人になった今もあるが、子どもの頃ほどひどくはない)
    だけれど、期待していたものと違った。

    子どもの頃のエピソードやかゆみの表現には共感したけれど
    大人になってからは皮膚がどうこうではなく、書店員の仕事の大変さや、震災のときのごたごたが中心だった。登場するいろんな人にいらいらした。
    限定のものに飛びつくというのは、誰もが持つ本性なのだろうか。自分はそれで大変な思いをしたのにもかかわらず、だ。
    いろいろとりとめもなく書き連ねた印象。まとまりのない作品のように感じた。
    最後の主人公の行動は唐突で謎だった。

  • 仙台在住でジュンク堂に勤める書店員の著者による、大手書店の仙台店で非正規書店員6年目として働く女性、五十嵐凛の物語。『象の皮膚』というタイトルは、アトピー性皮膚炎を持つ凛の皮膚のことを表している。彼女の子供時代から書店員となった日々が淡々と描かれている。東日本大震災時の書店と人々の混乱も取り上げられていた。アトピー性皮膚炎を巡る凛の家族や周囲の心ない反応、書店を訪れる大変迷惑な客の相手、などなかなか辛い思いをし続けている凛だが、いたずらに落ち込んだり、自暴自棄になったりすることなく、淡々とやり過ごしているところがすごい。自分で自分の機嫌を取ることのできる凛は人としてとても成熟しているなと思った。大手書店の仙台支店が舞台という、これまで読んだことのない設定の小説であることも新鮮だった。決して明るい話ではないが、著者の描写力のすごさに触れられる本。

  • 河北抄(5/25):仙台市の書店員佐藤厚志さん(39)が著し… | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
    https://kahoku.news/articles/20210525khn000021.html

    【受賞後初インタビュー】 第3回仙台短編文学賞 大賞受賞作 「境界の円居」 佐藤厚志さんインタビュー | ARTICLES | Kappo web
    https://kappo.machico.mu/articles/1580

    象の皮膚 佐藤 厚志(著/文) - 新潮社 | 版元ドットコム
    http://wp.hanmoto.com/bd/isbn/9784103541110

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      震災の思い伝える受け皿に 仙台短編文学賞の合同授賞式 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
      https://kahok...
      震災の思い伝える受け皿に 仙台短編文学賞の合同授賞式 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
      https://kahoku.news/articles/20210605khn000048.html
      2021/06/06
  • 最初から最後までしんどかった。

  • 面白いとは思えなかったが、考えさせられることはあった。

    痒みの描写が上手すぎて、こう言ったら悪いのかもしれないけれど、どうしても気持ち悪かった。確かにアトピーは生命に関わる病気ではないが、人生に関わる病気であると思った。
    アトピーひとつで、人の一生は、生き方は、こんなにも変わってしまうものなのか。アトピーさえ無ければ、凛さんにはどんな可能性が広がっていたのだろうと思うと、胸が痛い。

    私自身、小学生の頃に軽度のアトピーだったことがあり、痒くて掻いてしまったために皮膚がただれて、それを友人に「掻くのが悪いんじゃん」と言われたことを思い出した。なかなか、自分に起きていない他人の事に思いやりを持つのは難しいことかもしれない。

    人間、コンプレックスに思っていることは誰にでもあって、「ここがこうだったなら」「ここさえ良くなったらもう何も要らないのに」と思うことがあると思う。
    私も容姿の悩みは尽きないし、他人からは分からなくても、私にとっては最重要事項で、病むほど気にしてしまう事もある。
    ただし、自分が当たり前のように持っている健康な皮膚や、五体満足に関しては、幸せとも有難いとも、あまり感じる機会は無い。なぜ、持っているものには目を向けられないのかなぁ。
    もう少し、自分の持っているものについて、目を向けてみようと思えた。

    評価とは関係ないが、少し前に読んだ「推し、燃ゆ」となんだか似ている感じがした。
    人生の不毛さ、それでも生きていかなければならない辛さとか。

  • 凛は、幼い頃からのアトピー性皮膚炎で、いつも痒いし、肌も色素沈着で黒ずんでしまう。肌を見せないように、気持ち悪いって思われない様に、夏でも長袖だし、水泳の授業は身体を張って避けた。

    仙台の書店で働く凛は、日々書店に来るさまざまなお客さんの対応をする。
    お客さんもバラエティー豊かなら、書店員もかなりの曲者揃いだ。

    お仕事小説のようでもあり、アイデンティティの話でもあり、震災はさっくりと挟まれているけど、それはメインではない。

    子供の頃から、日々家族にもじんわりと煙たがられていると感じている凛。そのため、考え方が後ろ向きになるところも、仕方ないとはいえ、そんな凛のラストシーンはすごく好きなシーンだった。

  • 淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。

  • 意図とせず一気読みしてしまった。タイトルから想像がつくようにアトピー持ちの主人公のお話だった。
    私も昔から肌トラブルが多かったけど酷いアトピーは体験したことがなかったため痒くて眠れない話しやクラスメイトからの心無い言葉やモラハラ教師の話は読んでいて辛かった。

    難病にかかりその治療の過程で肌が荒れて痒くて掻きむしって赤くなり黄色いネバネバした分泌液が出るくらい酷かった時期を思い出した。
    痒さは我慢ができないし掻けば掻くほど悪化する。

    分かる部分と想像を絶する部分が入り混じった。

    主人公の身の回りがひどい人間ばかりなのが余計に辛い。肌のことだけでなく書店での犯罪者の対応も私までストレスを感じたし震災の描写もあって薄い本なのに濃い内容で盛りだくさんだった。

    東日本大震災はある程度ドキュメンタリーやネットなど見てきたけど書店での状況は想像してなかったので確かにこの描写の通りだったのだろう…

    若い女性にレジを指名するだの卑猥な本のタイトルを読ませるだの実際いるであろう生々しい人間が気持ち悪くて仕方ない。

    辛い境遇でも推しがいる主人公の熱い思い(グッズの争奪戦に果敢に挑む)は救われるものがあったし最後の締め方もほんの少しの救いがあって良かった。

  • 『荒地の家族』で興味をもってこちらも。
    アトピー性皮膚炎に苦しみ続ける女性。
    書店員というモチーフはやはりこの著者ならでは。
    持病に苦しみながらも、数々のトラウマを抱えながらも健気に生きる主人公と、それに対しあくまで無理解、抑圧的に接し続ける家族の姿に最後までつらさがあった。
    なぜああまで冷酷なのか。
    小説に「答え合わせ」は必ずしも必要ではないと思うけど、これは腑に落ちなさ過ぎた。

  • 家族にアトピーがひどい人がいたから、最初から最後まで共感しまくりだった。
    寝ている最中も皮膚を掻きむしり、真夜中に二人で泣きながら冷やして薬を塗った、あの辛かった時期を思い出した。皮膚が自分自身だった…というの、すごくよくわかる。皮膚と心は文字通り表裏一体なのだ。


    書店員6年目の五十嵐凜/幼い頃からアトピー性皮膚炎/理解のない心無い医師の一言のせいでいじめられる/保湿生活、自分(内面)よりも皮膚第一の生活/制限の多い生活を強いられる
    プールの場面はすごく辛かった…。家族や先生の配慮、救いの手が欲しいと思いながら読む。心が歯痒い思いでいっぱいになった。


    さらに書店に来る癖の強い客、突然の大震災とストレスに晒されまくる凛と、凜の肌をハラハラと心配しながら、応援している自分がいた。トートバック争奪戦あたりは、可笑しくてつい声を上げて笑った。頑張る凜氏を、そっと見守る感じで読了した。


    「心を動かしてはいけない」と自分に言い聞かせ、「石になれ」と自分に言い聞かせる凜を、弱い人と思えなかった。ネガティブな感情に振り回されない、芯がしっかりしている心が強い子だと思った。最後の場面は遠野遥の『改良』の“私”という人物と重なって見えた。

  • 読んでいて楽しい気分には決してならないが、主人公の抱える問題が「皮膚」感覚で伝わってくる表現は読み応えがある。

    なかなか救いのない彼女の下降線が、最後のところでクッと上に向き、微かな光明を見せる。

    職場の人間模様や、人物造形がリアルだ。
    いるいる、こんなひとたち…。

  • 皆大なり小なり何かしら抱えてることあると思う。生い立ちや体のコンプレックスをさらけ出し、これが私ですが何か?と堂々と生きていけたら一番いいけど。人にも自分にも優しくありたいね。

  • 主人公の女性が、周りの人間に頼るのではなく、自分自身に希望を見つけるような終わり方でよかった。

  • 主人公の凛は、アトピー体質な肌に対し長年家族や同級生から心無い言葉や視線を浴びせられたことがトラウマとなり、他人を信用できず自分の思いや考えを秘めてしまっているのではと感じた。彼女の過去のエピソードはとても残酷だが、誰しもが持っている人に見せられない心の内が描かれているようで親近感を覚える部分もある。

    過去と対比して現在の主人公を取り巻く人物は十人十色で、凛が気にするほどアトピーを蔑視していない人も多いように感じたが、頑なに心を開ききれない彼女の言動からは、本人が抱えるトラウマは側から見るよりはるかに当事者を支配しているのかもしれないと感じ取れた。

    ラストの公園のシーンでは、直接的な描写ではないがその事実に凛自身が感覚的に気づいた(というよりは気づきそうになり慌てて一度、その思考から離れようとしたのか…)のではと考えた。裸になって過ごした時間のあと、凛自身の中で何かが少し楽になっていたらと思う。

    自分に置き換えて考えた時に、悶々と悩んだり、自分のことなんて誰も理解してくれないんだと孤独感を感じたりすることもあるが、実はそこまで重大なことではなく、一旦考えることを放棄して楽になることを試みてみるも大事なことなのかなと思った。


  • 地元仙台を舞台に描かれていることは楽しめた。

    一方で、凛を取り巻くストーリーの方向性が分かりにくく、どこを目指してストーリーを展開していきたいのか、著者が本著を通じて何を伝えたいのかが曖昧だった気がする。

    アトピーの痒さが生々しかった。

  • 生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
    大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。
    まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアルなのだろう、という気にさせられる。
    非正規で働き余裕のない生活、家族からも受け入れられない孤独感、アトピーで痒い身体を掻きたい、でも掻けない、という苦しみ、震災後、薬も食料も思うように手に入らないという辛さ、という主人公の描写から、この作品は震災後小説であり、光の当たりにくい社会の一片を切り取った作品だと感じた。

  • 肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティ。


    割と強めのアトピー持ちの五十嵐凛は、仙台の書店に勤める契約社員だ。出てくる客も握手会イベントにくる作家も同僚も家族も、出てくる奴らの大半が糞という設定。抑圧された人生を送ってきた凛が、真夜中の公園で自分を開放するシーンにはジンとくるものがあった。でもジーンズをコソコソと回収する姿を想像したときには笑えた。著者である佐藤厚志さんはジュンク堂の書店員だそう。だから話がリアルだ。

  • 幼い頃から重度の皮膚炎に悩まされてきた凛。つらい学生生活を経て、現在は仙台の書店で非正規社員として働いている。そんな彼女の日常をリアルに描いた作品。最低の同僚やカスハラのオンパレードで、読んでいて楽しくはない。そこに震災まで襲いかかり、この子は生きていけるのだろうかと心配したが、意外と図太いのでほっとした。人目から逃れるようにしていた彼女が、深夜の公園で思いがけない行動をするラストは意外性に満ち、一皮むけた今後を予感させてよかった。


  • 「現役書店員が執筆」という手書きのポップに惹かれて読みました。


    アトピーの描写がとにかく濃厚!
    こちらの体までムズムズと痒くなります。

    この不快な状態の皮膚が、主人公の凛ちゃんにとって自分そのものなのですよね。

    見せてはいけない、隠したいけれど、本当は誰かにありのままを受け入れて欲しい。


    幼い頃からの抑圧、葛藤、折り合い、攻撃性…

    心の動きが丁寧に淡々と書かれていたからこそ、全身の皮膚を曝け出して夜の街を疾走するラストは衝撃でした。


    「感じること」をフリーズさせて自販機のように生きてきた凛ちゃんが、五感を大解放して走る走る!


    一皮剥けた凛ちゃんはどこか逞しく、これからの彼女をもっと見ていたいと思える終わり方でした。


    本屋さんの内部事情もとても面白かったです。
    オールスターズ大集結(握手券配布)のシーンは何度見ても笑っちゃう。大好きです。

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