荒地の家族

  • 新潮社
3.21
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  • (19)
本棚登録 : 2008
感想 : 243
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103541127

作品紹介・あらすじ

あの災厄から十年余り、男はその地を彷徨いつづけた。第168回芥川賞候補作。元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、あの災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。

感想・レビュー・書評

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  • 静かな海の中をもがくような内容で、読後感はただただ重く苦しい。まさに芥川賞受賞作品であり、純文学につき、読み手を選ぶ作品であることは間違いない。一方で比較的読みやすいトーンでもあったので、普段純文学作品が苦手な方や、あまり手にしないような方にも読んでほしいと思う。
    内容は勿論のこと、震災が閉塞感に作用しているが、スパイス程度の塩梅で、東日本大震災を語るに次のステージに来ているように感じた。 ★3.7

  • きゃろらいなさんが、本作のイメージを「灰色の情景」とおっしゃっていたので、僕も本作の色を考えてみた。灰色…すぐにも雨が降り出しそうな濃い雨雲いっぱいの空の色。そしてそれを映し出すどす黒い海の色…
    しかし、その海は荒れ狂う海ではない。静かだが厳しい海だ。

    淡々と綴られる震災後の日常。
    そこはかとなく薫る暴力性。
    若干オカルティックな結末に、ショックを受けて言葉を失う。

    精神的にしんどい時に読むのは避けたほうが良いと思う。読む人に寄り添うのではなく、突き放して「それでもなぜ生きるのか?」と自問自答を促す作品だ。

    第168回芥川賞受賞作品。

    ♪Firework/Katy Perry(2010)

  •  ずっと読みたいと思っていたこの作品、予約なしで借りられるようになってました。震災を取り扱った作品ではありますが、被災状況を前面に出したというよりは、それが生活の根底にある、それを描いた作品なのかと思いました。

     40歳の植木職人祐治と、その友人である明夫の生き様を描き出した作品。終始希望が見いだせないので、読みにくい作品と感じてしまいました。読み方が悪かったかな…。そんなに文書量はないのに、それにしては読了までに時間がかかってしまいましたね…。

     だいぶ期待して読み始めただけに、ちょっと残念な気持ちが大きくなってしまい…。あぁ…すみません!私には、佐藤厚志さんが、どんなことをこの作品を通して伝えたかったのかがわかりませんでした。

    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます。
      えっ!なんでわかったんですか(゚д゚)!
      そう、もう1冊
      旦那が持っていた芥川賞受賞作品を読み...
      1Q84O1さん、おはようございます。
      えっ!なんでわかったんですか(゚д゚)!
      そう、もう1冊
      旦那が持っていた芥川賞受賞作品を読みましたので
      今からレビュー投稿するつもりです。
      2024/11/16
    • 1Q84O1さん
      並べるのが好きなかなさんなので、たぶん3冊は並べるだろうなと思っていました!
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      並べるのが好きなかなさんなので、たぶん3冊は並べるだろうなと思っていました!
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2024/11/16
    • かなさん
      1Q84O1さん
      もう、そろそろ芥川賞受賞作品は
      おなかいっぱいなので、次いきますっ(・∀・)
      1Q84O1さん
      もう、そろそろ芥川賞受賞作品は
      おなかいっぱいなので、次いきますっ(・∀・)
      2024/11/17
  • 東日本大震災から12年目の今日は、芥川賞の本作を。震災でご家族を亡くされている、佐々木投手がWBCデビューです。9歳で被災した少年が日本代表となって戦います。
    震災で、家族・友人・仕事・思い出等々、多くの何かを失なったまま生活を続ける震災地の人達。街の形態は、徐々に復旧していきますが、失なった心の中は、他の何かで埋める事ができないのでしょう。
    震災当日そのものの描写は、克明に書かれているわけではありません。“海が膨張して”全てを飲み込んだ、その後の、喪失感を持った日常が淡々と書かれていきます。日常の現在と災害当時が、時折重なり合います。震災経験者の感情そのものだろうと思います。
    主人公は、40歳植木職人。独立直後の震災で仕事道具を失い、2年後、妻を病気で喪い、息子と実母の三人暮らし。日々、仕事に没頭していきます。又、友人も病気で亡くなります。作者は、意識して、震災は免れても、日々暮らしていけば、他の厄難に遭遇していく事を認識させているのかなと思います。それでも、三人の家族の周囲には、同じように残された人達の優しさがあります。
    仕事を食事を気にかけ合う人達が居ます。ここが、震災を身近で感じてきた作者さんの書きたかった事だろうかとも思います。
    ただ、主人公の生きる拠り所は息子と思うのだけれど、再婚して離婚した女性との話と、つながりが掴めないかなと。

    • 土瓶さん
      おっ。またサイン本や。
      よし。ワイも書いたろ( ..)φ
      おっ。またサイン本や。
      よし。ワイも書いたろ( ..)φ
      2023/03/11
    • おびのりさん
      汚さんといて。

      近くに、書店がオープンして、様子見に行ったら、サイン本が残っていました。芥川賞本で自筆サイン、私が買わせていただきました。
      汚さんといて。

      近くに、書店がオープンして、様子見に行ったら、サイン本が残っていました。芥川賞本で自筆サイン、私が買わせていただきました。
      2023/03/11
  • 改めて思う災厄のあとを。
    喪失感のなか、生活していかなければ…とわかっているのに思うようにはいかない。
    そのあとには妻を亡くし、がむしゃらに働いて忘れようとする辛いこと。
    だが、何年経っても何かに足を取られてしまうような、立ち止まらざるを得ないようなことがある。
    笑顔がない日常を見るのは切ない。


  •  第168回芥川賞受賞作。読む人によっては、単に暗く重い物語という印象をもたれるかもしれませんが、「あの日」から連鎖の様に続く日常の癒えない傷痕を、淡々とストレートに描くことで、個人的に心に響き、染みました。

     「東日本大震災」「津波」は「厄災」「海の膨張」と書き換えられ、これは婉曲表現というより、より広い意味合いを持たせる意図があるようです。
     震災そのものに囚われている人ではなく、震災その後その先に生きる人たちの、苦悩や葛藤、喪失を抱える生き様を上手く切り取り、私たちに突き付けている気がしました。
     〝十年一昔〟と言いますが、震災から12年が経過しようとしている今、震災は過去のものなのか? 復興は進んだのか? と問われれば、「絶対にノーです!」と著者の佐藤厚志さんは、この物語に想いを載せようとしている気がします。

     「厄災」「海の膨張」の他、「巨大な防潮堤=海と陸の断絶であり恐怖の具現そのもの」「津波(海の膨張)=隙あらば人をたらふく飲み込もうと手ぐすねを引く化け物」「死=どれだけ土をかぶせても埋まらない、底なしの地獄まで続く穴」などの表現は、被災地のこの12年を直接自分の目で見て、体験した者にしか書けないのではないかと感じました。

     想いを寄せるくらいのことしかできませんが、震災を考える新しいきっかけを得ることができました。今後も細やかながら、被災地の今を知り、応援していきたいと思います。

  • あの厄災から十二年。
    厄災後の荒地で新たな家族を築こうと必死でもがきながらも上手くいかない不器用な男の生活が描かれる。
    とにかく動き続けていないと辛い現実に押しつぶされてしまうような、閉塞感。考えるのが怖かったのだろう。始終息苦しさが伴う。
    厄災は命に留まらず、残された人たちの生活も奪っていったんだ。
    あの日から今日まで、一度も終わってなんかいない。残された人たちの生活はずっと続いている。
    忘れることなどできないが、当時からすると心穏やかでいられるようになったなと思うと、そんな自分がかなしい。
    最後、かすかな希望を感じ取れたのが救いだろうか。

  • 2011年3月、未曾有の大災害が東北を襲った。
    その襲ったものは、人間の記憶に深く鋭利に入り込んでいき、世界を震撼させた。
    本作は、震災で何かを失った人たちの深く鬱蒼とした気持ちを問い続ける作品です。
    著者の佐藤さんは、仙台出身で、現在も仙台に暮らし、仙台で書店員をしながら、執筆活動をされている。自分の故郷の暗いイメージを作品にするのは、中々勇気のいることだと思うし、難しいと思うし、どう作品として、表現するのか。
    でも、負のイメージだけでは無くて、次に再生することも表現さてれいて、希望の作品なんじゃないかと感じました。 
    この作品が芥川賞を受賞して、とても良かったと個人的には感じました。(偉そうですいません)

  • 芥川賞受賞と宮城出身だったことから読んで見た。
    まだ作家として出たばかりというのか、難しい言葉を使おうとしているようだし、同じ場面が何度も出てくる。「災厄」の言葉も何度も使われているし、その通り暗く辛い内容が多い。
    主人公も取り柄が無く、苦悩のかたまり。奥さんが震災後に病気で亡くなったが、介護出来ずに後悔。再婚した嫁さんも逃げて、勤め先に再三出向いて拒否されて追い出される。子供にも拒否され距離感を掴めず。友達にも拒否されるが、何とか和解するも癌の末期。最後も老いたような突然の終わり。気持ちも暗くなってくる。
    純文学の芥川賞と言えばそうなのだろうが、やはり自分には娯楽系の直木賞の方が性に合うようだ。

  • 震災があって
    生活も造園業の仕事の道具も失って
    その後、奥さんも亡くして
    再婚したら、子どもが流産して
    その奥さんは家を出て行って
    子どもの頃中良かった同級生は、癌に侵され密漁して自殺して…

    って、暗い話し

    再婚相手が家を出て行く時
    自分と息子の食器を割って出て行くって最悪

    気持ちも暗くなる本でした

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