君といた日の続き

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 670
感想 : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103547914

作品紹介・あらすじ

娘を亡くし妻と離婚した僕に、未来を生きる資格があるのだろうか。終わりがあると知りながら過ごす、僕と君のひと夏の物語。コロナ禍のリモートワークを言い訳に自宅に引きこもるばかりのある日、僕はずぶ濡れの女の子を拾った。1980年代からタイムスリップしてきたらしい彼女は、僕の大切な人の命を奪った連続少女誘拐事件に関係しているのか……。その時の僕は、全ての過去の意味を知るよしもなかった。その答えは、今の僕が持っていたんだ。

感想・レビュー・書評

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  • 10才の娘を亡くし、妻とも別れた譲がアパートの前で拾った小学生の女の子ちぃ子に救われる話。

    亡くなった娘と一緒にやりたかったことをちぃ子とやり直していく譲。人はいつ死ぬか分からないのだから、やりたいことはすぐにやらないといけないと改めて思った。

    後つくづく、同じ日常でも心の持ちようだけで、世界の見え方は180度変わるんだなと思った。

  • 10歳だった娘を亡くし、妻と離婚した譲。
    雨上がりのある日、買い忘れのものを買いに出た道で少女と出会う。
    どうやら現実の状況に戸惑っている様子で、行くさきもない彼女を連れて帰る。
    どうやら1980年代からタイムスリップしてきたようで…。
    前半は、亡くなった娘にしてやれなかったことを一緒にし、思い出を作りながら楽しむのだが、次第にこの少女が誰なのかわかるようになり、何故この時代にやってきたのかも明らかになった時点で現実になる。

    少女がまさか…とわかったときに腑に落ちる。
    あちこちに散りばめられた伏線が、回収されたときにこんなふうに繋がっていたなんて、と驚きよりもふわっとした嬉しさを感じた。

    生きる気力を無くした譲にもう一度、と光を希望をくれたのはまさしく運命の人であり、寄り添ってくれていた人だったなんて。

  • なんとなく先が読めてしまった。
    でも、昔目線の気付きが面白くてスイスイ読めた。


  • 娘を亡くし、離婚して孤り暮らす主人公は
    ある日、道でずぶ濡れの少女を見つける。

    亡くした娘と同じ年頃の少女を見て見ぬ
    ふりもできず、声をかけたことで始まった
    主人公と少女の奇妙な共同生活。

    傷心の主人公にとって本来なら近寄りがたい
    はずの、亡き娘に近い年齢の子どもなのに
    放っておけない心根の優しさや無力な子供へ
    向けた大人の親切に心が和みます。

    主人公と少女の隠されていた関係が
    徐々に明らかになって謎が解けた時、
    過去も現在も未来も全部丸ごとひっくるめて
    進んでいこう、という前向きさを主人公が
    取り戻したことに明るい印象を覚えました。

    主人公はこの少女と時間を過ごす中で
    亡き娘と出来なかったことや後悔の記憶を
    少しずつ上書きする事ができるのに対して、
    同じように娘を失った妻の心はどうやって
    救われるんだろう、と切なさを覚えました。

  • 父子の物語は、どうしても感情移入が激しくなりがち。でも、なんでタイムスリップ?科学的にどうなの?しかし、そんな思惑を超え本作は丁寧に感情の機微を描いていく。とてもいい。ほんとうにちょっとした日常的な会話が心に滲みるのだ。最後のネタも、オマケのようだけど絶対あった方が良い。なんかホッとする。今の世の中意外と殺伐としているので「いいひと」の存在はレアだし、そういう人には幸せになってほしいと思うし、自らもそうありたいと願う。秀作とか傑作とか言う前に、こういう作品はこういう作品は好きだな。

  • 大切な人を失う喪失感は、想像を絶するものがある。
    失った後、残された者の気持ちのすれ違いが起こってしまうということは実際にあって、追い打ちをかけるように非常に辛い。
    80年代からタイムスリップしてきた「ちぃこ」は、ひとりになった譲とどんな関わりがあるのか。
    後半、伏線が回収されていくにつれ、温かさに包まれていく感じがした。


  • タイムスリップファンタジーと読みました。摩訶不思議なからくりに読む手が止まらず。
    妻との復縁を願いつつ、ラストの驚愕の真実に感動間違いなし。あなたも読んで涙して下さい。

  • 10歳の娘を亡くし、妻とも上手く生活を続けられずに一人で安アパートに籠っていた僕の前に10歳のちぃ子が来た。どうやら、タイムスリップしてきた様子?あり得ないよな…?ドッキリか?
    コロナ禍で繰り広げられる擬似家族の二人の会話が微笑ましく、時に痛みを伴う。なぜちぃ子はタイムスリップしてきたのか、戻れるのか?主人公の心の痛みは癒されるのか?などなど、とにかく沢山の?が一気に回収されるところが秀逸で★5。少しオマケあるかな~。
    40~50歳位の人には昭和の会話が懐かしく、楽しいかも。
    変態系事件の表現(裸体の死体とか)あるので、中学から。

  • カルチャーショックをそれぞれが感じるシーンは分かるものとわからないものがあったが、それでも互いの反応が面白く、伏線所々に張り巡らされていて最後に綺麗に回収されていく所が気持ちよかった。

  • 10歳の娘を病気で亡くし、それに耐えられなくなり離婚した譲の前に、10歳位のずぶ濡れの少女が現れた。ひょんな事から「ちぃ子」と一緒に暮らす事になり…

    ちぃ子は過去からタイムスリップして来たらしく、戸惑いを隠せない譲だったが、ちぃ子との生活はかつて娘と暮らしていた時の事を思い出させてくれて、次第に仮初の親子として距離を縮めていく姿が微笑ましかったです。

    ちぃ子が何故過去から来たのか、そしてちぃ子の正体は?
    全てのピースがはまり始めたとき、ちぃ子にとっても譲にとってもこの出会いは必然だったんだと思います。

    ラスト迄読むとタイトルの意味が判って、それが前向きなラストでホッとしています。
    譲もやっと本来の穏やかな性格に戻れた気がしました。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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