- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103553410
作品紹介・あらすじ
己は人間のなりをした何ものか――人と獣の理屈なき命の応酬の果てには。明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑流動物文学の最高到達点!!
感想・レビュー・書評
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第170回直木賞受賞作。
ただ生きるために、喰らいあい、とも喰らう——。 そこには人間も獣も変わらない、現実だけがある。
甘えや緩さをいっさい許容しない、硬質で乾いた文章は、まさに「試される大地」北海道の厳しい環境を彷彿とさせる。
日露戦争前、明治後期の北海道、釧路に ほど近い山で暮らす独りの山男。
名は「熊爪」。天涯孤独。名も知らぬ寡黙な養父に拾われ、山で育てられた。その名のとおり熊のような中年。
今も昔も弱き人間たちは群れ、社会の中でしか生きていけない。家族を作り、みなで寄り添って。
熊爪はその埒外で生きられる強さを持つ。山の王である熊をはじめ、獣たちを村田銃で狩る熊爪は人間よりも獣に近い。生き方も考え方も。
しかし、どんな生き物も永遠に「強きもの」ではいられない。
熊爪は、ある2つの「異物」との遭遇により生まれて初めて「弱さ」と「迷い」にとらわれる。
そして、彼のとった決断は果たして、「獣」か「人」か。「完璧なる死」か「不完全な生」か———。
死すべきとき、死すべき場所で死ねなかった「はんぱもん」の末路は。
喰らう側から、喰われる側へ。
そこには悲しみも、後悔もない。連綿と続く現実だけがある。
私たちはいまこの瞬間「とも喰らい」ながら生きている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「絞め殺しの樹」の河崎秋子さんが自然の厳しさを描くとなると、それなりの描写を覚悟はしていたが、まぁなかなかすごかった。前半で(肉体・精神、両面で)熊爪の強さがもっと強調されていると、より良かったかな。。(強そう感ではなく、リアルに)
ラストの展開は、ある意味で熊爪の究極の自己肯定による選択と解釈した。
それにしても、本作は直木賞受賞作品だが、芥川賞の香りも漂う不思議さもあった。 ★3.7 -
2023年下期直木賞受賞作品
直木賞作品であり一読しました。
熊文学いや野獣文学いや動物文学の傑作とい言えるでしょう。
熊との闘いリアルな描写は圧巻です。 -
河崎秋子さん著「ともぐい」
初読の作家さんで本作品は第170回直木賞を受賞した作品。
舞台は明治時代、日露戦争開戦前の北海道の田舎町。この近代国家と歩みだしたばかりの時代背景がかなり物語の重要なプロットとなっていた。
北海道の片田舎で情報やら最新文明や近代化等が及んでいない、限られた生活環境の中で住人達は暮らしている。それがとても原始的で自然的な営みに思え魅力的に感じられた。
物語も中盤まではただ面白くすんなり読んでいた。熊爪という天涯孤独な男の壮絶な熊との戦いが大自然を舞台に描かれており読んでいて漂う臨場感が素晴らしかった。自然の中で生きるとはこういうものかと考えながら読んでいた。
しかしこの作品、最後が強烈すぎる。
今も色々と考えながら書いているのだが、「ともぐい」というタイトルに沿ってこの作品を熟考してみるのが一番筋道が通るのではないかと感じている。
熊爪の最期の描写、陽子に殺されるシーン。
自然界の熊の生態の描写等が伏線となっており、それと同等の事が人間界でいたって自然に行われただけなのではないか?
人間的な考え方で因縁やら殺人動機とかを考える事より、もっとシンプルで動物学的発想で捉えると腑に落ちてくる。
そもそも熊爪も陽子も愛や家族や学や社会に触れて生きてきていない。そういう所で育まれる情を深く持たない生き方をしてきている。逆に言うと知らずに育ってしまっている。
熊爪は犬に名前をつけない、家族愛を知らない、性欲に関しても男というよりは雄と言った方が的確で、全てにおいてかなりシンプルな発想力と行動力でいかにも動物的である。
陽子も見えるものを見ない、自らの子に名前をつけない等からもだいぶ野生的な鋭角的な思考の持ち主。二人は動物界の中での人間として、その秩序の中でも各々彼らなりの秩序が存在していた。
人間としてみてみれば軽薄だが動物としてみてみれば濃厚な秩序が読み取れる。
その延長線上でこのラストシーンを「ともぐい」と言われれば確かに同形種の二人だからだろうと頷ける。
この二人をいわゆる人間としての物差しの目線で見てしまえば最期のシーンはホラーに近いものになってしまう。
もっとシンプルな人間という生態の描写なのだろうと考える。
陽子はただ子供を守りたかった、もしかしたら身籠った熊爪の子は女の子だったのかもしれない。その子を守るためには熊爪の存在が邪魔になり、その為に殺したのでは?と考える。
非常に特殊な見えにくさ、読み取りにくさがある作品だった。
一読者として自分はこの終わり方よりも熊爪と陽子と子供達と犬とでもっと人間味溢れる家族愛を構築し深めていく未来を見たかったと感じてしまう。
直木賞受賞作という前振りでこの作品を手にとったがこんなにも考察しないと腑に落ちない作品は珍しいと感じている。
そういう意味ではとても印象に残る作品だった。
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ハッピーアワーさん、こんばんは♪
みなとみらいへようこそヽ(´▽`)/
お前ん家かいΣ\( ̄ー ̄;)ナンデヤネン
いいなぁ~
まだクルー...ハッピーアワーさん、こんばんは♪
みなとみらいへようこそヽ(´▽`)/
お前ん家かいΣ\( ̄ー ̄;)ナンデヤネン
いいなぁ~
まだクルーズ船に乗ってないんですよねー
シーバスには乗りましたが^^;
それにしてもすんごい人でしたよね(;。□。;)2024/05/07 -
はい、お邪魔させて頂きましたよヾ(〃^∇^)ノ
シーバスも混んでいましたね
良いですねえ、横浜と赤れんが間行き来出来て
乗ったことないのです...はい、お邪魔させて頂きましたよヾ(〃^∇^)ノ
シーバスも混んでいましたね
良いですねえ、横浜と赤れんが間行き来出来て
乗ったことないのですけどね
山下公園にも行ったのですが、海を目の前に足湯に入れるんですね?!
海と夜景(観覧車やインターコンチ等)眺めながら。。。最高だと思います
やっぱりいいなあ、みなとみらい☆.*.。(⁰▿⁰).:*・゜2024/05/07 -
2024/05/07
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ハードボイルド小説でした、始めは。
明治の世。
熊爪という名の男は山奥に住み、猟をして暮らしている。自分が食べて、残りの肉や毛皮などは町に売りに行き、米や銃弾を買う。その暮らしが熊爪の全て。それ以外の行動、感情はすべて無駄なもの。
しかし、町へ出るということは他人と関わるということ。その関わりの中で熊爪の中の何かが少しずつ変わっていく。温もりがほしいとさえ感じ始める。
ハードボイルドだった小説がここから急に湿度を持ち始めます。変わり始めた自分が、何者なのか分からなくなってくる熊爪。そんな自分は、はんぱもの、でしかないのか?
“ともぐい“とは、獣同士のことなのか、獣と熊爪のことなのか、いやそうではなかった‥‥
圧倒的な力強さで読者の心を掴んで離さない、そんな作品でした。 -
周囲に余計な物がなく、静かな環境で読みたい凍てつく冬に相応しい一冊です。河﨑秋子さん作品は『鯨の岬』に次ぐ2作目。北海道の実家での酪農従事経験からか、本作も北海道土着の自然の厳しさ・寂寥感を感じさせる圧巻の物語でした。
主人公の熊爪は、家族もなく他とも交わらず、山中独りで狩猟を生業とする男です。
人を拒むような透徹した山々。その自然がもたらす四季折々の光、風、音、湿度、臭い‥。静寂の中に動物たちの息づかいをも感じ、映像が目に浮かぶような描写が秀逸です。
さらに、鹿や熊との格闘場面、獲物を捌く場面の生々しさの描写は、森の中に入り込んでしまうような錯覚を起こします。このリアルさが説得力をもって、自ずと生き物たちの脈々とくり返される「生と死」を考えさせ、畏敬の念を抱かせます。
本作の奥深さを感じたのは後半です。二度にわたる熊との対峙を経て、この後どう展開するのか疑問でしたが、人の命さえも循環という摂理に組み込まれたものと気付かされます。
生きることは他の命を食らう『ともぐい』を繰り返すことなのですね。
熊との死闘の先に待ち受けているものが、生死の根源的な意味や無常感が色濃くなる後半‥、正直個人的嗜好からやや逸れた感がありましたが、深くえぐられ後味引くような読後感でした。 -
第170回直木賞受賞作。
以前に「肉弾」を読んだことがあり、かなり強烈な印象を受けたことを思い出した。
この作品もそのときを彷彿させるようで、より一層凄味を増している。
明治後期、人里離れた山中で犬を相棒にひとり狩猟をして生きている熊爪。
熊爪が、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていると若い雄熊の赤毛との戦いを見る。
2頭の獣の闘いは、穴持たずの苦し気な断末魔で終わる。
熊爪の怒りの火が消えたあとに「俺は、熊か」と呟く。
最後に赤毛と対峙した熊爪は、死を覚悟していたはずだが生き残る。
望む己の姿からは最も遠いところまで来た。
このときから熊爪は、人として生きるのは終わったと感じたのかもしれない。
それからどんな生き方をしても、もはや熊爪らしさは消えている。
ずっと獣のように生き死んでいくことが望みだったのだろう。
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動物たちの表情、内臓の旨みや山菜の苦味、山で聞こえる微かな音、血や獣の臭い、皮や木の手触り…五感で想像する小説でした。
もっと歴史的要素が入ってくるのかと思いましたが、情勢の変化が漠然と感じられる程度で、潔いほどに切り離されていました。
犬がいいなぁ。 -
「小説讀物」の直木賞特集で2章まで読んでいたので、やっと最後まで読めた。最初の印象では猟師である熊爪が動物の解体している姿が細かく描写され、凄いなという印象。熊に襲われた猟師を助ける時に眼球を処理するのも、ここまで女性作家が描けるのだと驚く。2頭の熊との闘いもそう。
眼の不自由な陽子との生活は壮絶。他の男の子どもを殺したくなる熊爪。熊との闘いで死を間近に見た熊爪が、最期に見たものは生きることに絶望した自分なのだろうか?
最後の方は、こう言う結末で良かったのだろうかと考えてしまう。少なくとも明るい未来は来ないだろうと思ってしまう。
著者プロフィール
河﨑秋子の作品





