受け手のいない祈り

  • 新潮社 (2025年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784103557326

作品紹介・あらすじ

他人の命のため、自らの命を削る。過酷な救命の現場を描く、魂の衝撃作。感染症の拡大を背景に周囲の病院の救急態勢が崩壊する中、青年医師・公河が働く病院は「誰の命も見捨てない」を院是に患者を受け入れ続ける。長時間の連続勤務による極度の疲労で、死と狂気が常に隣り合わせの日々。我々の命だけは見捨てられるのか――芥川賞受賞の気鋭が医師としての経験を元に描いた、受賞後初の単行本。

感想・レビュー・書評

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  • 総合病院で医師として働く公河は、別の医院で産科医だった同期が過労死したことを知る。
    公河もまた、昨日と今日の境目がわからないくらいに働き続けていた。
    近隣の病院が夜間救急から撤退し、公河の病院が最後の望みであるためか、徹夜での治療や手術が寝る間もなく延々と続いていく。

    外科手術の様子が仔細にある場面や睡眠がとれなくて麻痺している状態がこれでもか…と。
    あまりにも過酷すぎる救命の現場に人の命よりも自分の命は考えられないのか、とさえ思ってしまう。
    ここまでくると限界を通り越して、考えることすら停止してしまう怖さを感じた。
    医師としての経験があるからこそ、すべてがリアルに思えて余計に衝撃の度合いが増した。



  • 芥川賞作家。激務のために肉体も精神も病んでしまう若い医師の話。

    周りはなぜ気が付かないのだろうか。人手不足の職場だと、誰もが自分のことで手一杯になってしまうのか。

    誰の健康も害することなく回っていく仕組みが作れたら良いのに。

  • 他人の命を救うためとはいえ、自らをここまで犠牲にしなければいけないとは。医師の経験を持つ朝比奈さんなので、リアルな体験を踏まえて書かれたものなのだろうけど、想像を超えた過酷さだった。
    そもそも、医師にはこれまで残業規制がなかったことも初めて知った。働き方改革で規制ができたけど、そのラインが960時間!普通に多いわ。
    これだけ長時間、しかも神経を使う仕事をやり続ければ、身も心もおかしくなってしまう。
    内臓のグロテスクな描写が、医師の心の中を表しているようで、こちらまでちょっと気分が悪くなりながら読んだ。

    • ねこさん
      へぶたんさん、なかなか重たい内容でした。読後感、悪いです。でも、怖いもの見たさ(?)なのか、筆者の文章力によるのか、すいすい読み進められまし...
      へぶたんさん、なかなか重たい内容でした。読後感、悪いです。でも、怖いもの見たさ(?)なのか、筆者の文章力によるのか、すいすい読み進められましたよ。
      2025/05/13
    • へぶたんさん
      とりあえず少し立ち読み...(〃ω〃)
      とりあえず少し立ち読み...(〃ω〃)
      2025/05/13
    • ねこさん
      うんうん。立ち読みで様子見がいいかもです。
      うんうん。立ち読みで様子見がいいかもです。
      2025/05/13
  • この主人公は、作者ご自身であると決めつけている。
    テレビで観た朝比奈さんの印象そのものだった。

    医療現場の労働環境がここまで来ているとは。同情なんて申し訳なさすぎるほど。
    「一日」という単位の繰り返し。睡眠がその単位を区切っている。
    その区切りなく、人の生死に関わらざるを得ない人間。その人たちがいるから安心して「一日」を生きている俺。治してもらわないと困るけど、当たり前と思ってはいけないな。勝手なもんだ。

    「何十時間も横にならんかったら、縦に連なった内臓がな、重みで潰れていくんや」

  • 救急医が多忙すぎて追い込まれて壊れていく話。

    「あの本、読みました?」で朝比奈先生と山口先生の話を聞いて、そしてこの本を読んで。
    そりゃあ、自分の命を削って限界まで働くよりは、たまに医師として働いて小説を書く生活の方が人間として暮らせるよねーと思った。

    外来で、先生が全く寝てなくて徹夜状態とか、患者の立場からはわからないし。
    寝てないと昨日と今日が地続き。
    おはようって言われてもそんな気になれないよね。

    4日間眠らずの勤務。
    幻覚も見えてヤバい。
    こんな先生に手術されるの嫌だな。
    医療ミスになるからほんとやめてほしい。

    睡眠がとれないって本当におかしくなる。
    壊れていく様が人間の本質をさらけ出してる。
    狂気で何がなんだかわからなくなってるよ。
    もうね、先生たち。どうにかしてあげて。

  • 朝比奈秋、ハズレが無い!
    やりがいに搾取され、逃げ場のない労働者が、睡眠をもぎ取られるとどうなってしまうか。
    それを医師という職業で、表現してくれた、ということだ。

    追い詰められた人間がどうなっていくか、公河の内面を追うことで読者に見せてくれる。
    恐ろしや恐ろしや。
    医師って、子どもたちが目指すいい仕事のはずなんだけど…。直美(ちょくび)もわからなくはないね。

  • この作品はフィクションだけれども完全なフィクションではないんだろうな。
    ただただ過酷な医師の日常を綴っている。
    重く暗く苦しい長い長いドキュメンタリーを観ているような感覚。
    自分なんかがコメントするのも厚かましいが、情景・気持ちが良く分かる。

  • 1日で読み終われそう、と思ったけど、とんでもない。読み進めていくと、どんどん胸が苦しくなって、休憩を挟まずにはいられない。
    小説とはいえ、救急の現場は実際にこのような状態なのだろう。睡眠もとれずに連続4日間の勤務。精神的にも肉体的にもあまりに過酷。ラストシーン、主人公は生きているのか?明日は?明後日は?

  • 最初から最後まで重苦しかった。

    救命救急の現場の過酷さが、一人の外科医目線で描かれる。
    近隣の総合病院が救急から撤退する中、外科医の公河が務める病院は「誰の命も見捨てない」を院是に掲げ、患者を引き受け続ける。
    公河らは70時間以上の連勤を余儀なくされ、心身共に極限に達している。
    そして他病院でも、公河と医学部同期だった産婦人科医の過労死。誰の命も見捨てないという“命”に、医師の命が含まれていない現状。
    医師はどんどん辞めていき、病院は赤字経営、現実に起こっている地方中核病院の撤退や、たらい回しが頻発する救命医療の崩壊は今後加速度的に進んでいくのだろう。

    人の命を救うのが仕事とはいえ、医師の命を犠牲にして成り立つ医療って何?と思う。
    救急車を呼べば当たり前に助けてもらえる救急医療がなくなる未来はすぐそこに来ているのかもしれない。

    全体として良かったけど、ユカリの手術シーン以降の公河の行動や思考過程にはどうにもついていけなかった。まあ、この部分が芥川賞作家による作品たらしめているのかもしれないけど。

  • 読んでいたただただ辛かった。

    ここまで追い詰められた状況をこれでもかと表現できる凄さ。
    受け手のいない祈り・・・深刻だ。

  • 受け手にとっては天国、担い手にとっては地獄とも言える日本の医療現場をこの作品以上にリアルに描写した作品は今後も出てこないのではないでしょうか。

    概要解説は他の方にお譲りしますが…

    希望を心ごとすり潰されても立ち止まれない。立ち止まることが許されるのは自身の肉体あるいは精神の死を迎えた時という極限の状態で見るのはどんな光景なのだろうかと、静かな気持ちで読了しました。

    作品全体を通して過重労働の描写が出てきますので、過去に働きすぎて心身を著しく疲弊した経験のある方はメンタルの調子が良い時に読むことをお勧めします。


  • 読んでいてずっとしんどかった。救急医療で人の命を救うために自分の心も体もぼろぼろにして。
    文章が私には合わないと感じたし、とても疲れた。


  • 過酷すぎる救命医療の現場。

    患者の命を救うために自らを削り、
    身を守るために抜け出すことも許されず、
    膿んで壊れていく様があまりに生々しくて
    読んでいてとても辛くて苦しかった。

    『誰の命も見捨てない』という創設者の院是。
    そこに医師たちの存在が含まれていない衝撃。

    医師や医療従事者、多職種の医療人たち
    治す側にとっては、当たり前に頼る患者たち
    として一括りにされ、弱さを振りかざすと
    記されていた箇所は身につまされた。
    (精神崩壊しつつある主人公視点だからだけど)

    常に手の届く所にある医療の存在、その内側に
    生と死の狭間で朝と夜の境目のない一続きの
    時間を、1日を超えて働き続ける人たちに
    もっと想像力を働かせなければならないと
    強く感じた。

    学びはとても多くあった、でもそれ以上に
    読んでいて頽れていく精神と肉体が切々と
    綴られていてしんどかった。

  • 「あの本、読みました?」にゲスト出演していた、
    朝比奈秋さんの話を聞いて図書館で借りました!

    誰も断らない救急医療の現場
    地域に3つあった救急医療が2つ崩壊し、残された1医療機関に患者が押し寄せる。僅かな睡眠すら削られ辞めていく医師たちの中、残された医師にかかる負担は心身を蝕んでいく。

    辛くしんどい読書でした。

  • 予備知識なしで読み始めたのだが、、、つらすぎる。
    医師の芥川賞作家が、救急病棟の医師の過酷な労働環境をひたすら綴っている。
    仮眠、徹夜、過労死、退職、廃業、
    街に救急病棟がなくなる、でも急患はなくならない。
    地獄だ。

    若い医師を犠牲にする今の医療体制。
    この小説を読んで思う。
    日本でトリアージが当たり前になる日は近い。
    いや、もう始まっているのかもしれない。
    119で救急車を呼んでも助からない急患はこれから増加することだろう。
    自分の命は自分で守らなければならない。
    健康でいなければいけない。
    事故に遭ったら後は運任せだ。
    若い医者は圧倒的に足りない。
    増える見込みもない。
    老人は増え、若者は減る。
    老人には諦めてもらえばいいが、出産のトラブルで母子が危険になっては本末転倒。
    ますます若いものが減る。
    今の日本はそれを知っていながら手を打たない。知らぬふり。
    自分だけよければよい。
    トリアージしかない。

  •  コロナ禍で救急を受け入れないことに決める病院がある中、地域で唯一救急を受け入れる救急病院で働く医師公河。

     ある日、同期で産科に勤めていたヤナザキが過労死したということを聞く。

     ヤナザキの過労死、連日救急の受け入れで不眠の主人公の公河や同僚たち。

     これは、命を救うために命を捧げる医師たちの物語である。

     実は、血とか内臓とか手術とかのシーンがとにかく嫌いな私。

     作者が医師ということもあり、描写がリアルすぎて、登場人物の医師がメスを入れているシーンや腸をもつシーンなどが生々しく想像できてしまい、想像力との戦いとなりました。

     そこは本当に読んでいてしんどかったというか、お酒なしでは読めないくらいに生々しすぎました。

     そんな、本作品ですが、毎日毎日途切れなく救急車で運ばれてくる患者たち。

     不眠で、過労死するんじゃないかくらいの医師達からすると患者の命よりも自分たちが休みたいくらいのはずなのに、まさに寝る間を惜しんで患者を救おうとする医師達。

     そんな彼らを突き動かしているのは、目の前に救えるかもしれない命がある以上は救いたいという医師としての使命感や義務感なのか?

     何が、彼らをそこまで動かすのかということを読んでいる途中で考えました。

     仕事をやっているときに、やりたくない仕事もあれば仕事をする気になれない時というのが私にもありますが、やりたくない仕事であっても、生活のためだからとかいろんな理由で奮起してなんとかやりこなすということはあります。時には手を抜いたりしてしまうことやさぼりたいと思うことだってあります。

     本作品に登場する医師達も人間ですからそういうズルい面を見せたりするのですが、いざ救急の患者を目の前にするとまさに自分の命を犠牲にしてでも目の前の患者を救おうとしている。

     そんなブラックな職場を続けたいわけでもないのに、救おうとしなければ自分は休めるはずなのに。

     おそらく、この究極の状況でも医師という生き物は自分の命を削っても患者を救おうとする生きものなんだろうなと思いました。

     そういう意味では、自分があるいは家族が病気になった時、私たちが祈る相手というのは医師達で私たちには祈りの受け手というのが確かに存在している。

     しかし、治療する側の医師達の祈りの受け手というのはあるのか?そもそも祈りすらないのではないか。

     そんなことを思ってしまった作品です。

  • 読書記録25-45
    『受け手のいない祈り』
    芥川賞を受賞された『サンショウウオの四十九日』を読んでその文体の虜になった朝比奈秋さんの作品

    現役医師であり作家である作者が描く救命現場
    魂を殺して命を救う
    患者を救う為ならば医師の命は、魂は
    蔑ろにされてもよいものなのか?

    一日の区切りのない医師達の背骨が
    横たえられる日々であるように願う

    トークイベントでお会いした朝比奈秋さん
    「小説が頭に浮かぶようになってから、仕事や人間関係などが崩壊した」

    「頭に浮かんでくるものを書いているだけで、自分は通路のようなもの」

    「散歩が気分転換」

    今この瞬間も朝比奈秋さんの頭の中は小説が溢れるように湧いているのだと思う

  • ただひたすらに救急医の凄まじい勤務実態~長時間の連続勤務~を描いた作品です。
    著者は消化器内科医だそうですから、作品に登場する小谷という内科医が著者の分身かもしれません。
    私も若い頃、結構な長時間勤務をしました。休みは月に1日だけ、休出の土曜も含め毎日終電近くまで残業、日曜日くらいは「定時で帰ろう」、そんな数カ月。肉体的にはしんどかったけど前は向いて居れました。期限は見えてたし、ある種の達成感も有りました。そして不足気味とはいえ毎日一定時間の睡眠は取っていた。それに比べると無茶苦茶ハード。しかも終わりが見えない。
    内科医で作家の南木佳士さんは、末期癌患者を見送り続けてパニック障害に陥ったそうです。南木さんもハードな勤務もったようですが、何となく感じるのは精神的な「静かな死」・鬱。それに対しこの救急医は、他の救急病院や仲間が一人一人と過労死で倒れるなか、まるで太平洋戦争中の日本軍の兵士の様に物資もなければ支援もない中、ただ前に進むしかない肉体・精神両面での壮絶な戦闘死(死んでは無いけど)。不眠不休によって思考は完全に混乱しながらも手は手術を続ける主人公。凄まじい表現が読み応えがある。このあたり、流石に芥川賞作家。
    ただな~、私の様なヤワな読者としては、物語として、もう少しサイドストーリーや救いが欲しいな。

  • 壮絶な救急外科医の話。医療崩壊した現場で働いている人の過酷さがこれでもかというほど連ねられた渾身の一作。2日寝ない(最後は4日不眠労働になる)、残業300時間(≠労働時間)、過労死する同期、麻薬シールで眠気と辛さを飛ばす同僚…主人公・公河もそんな職場でまち全体から流れてくる患者たちを次々に受け入れ、何日も眠らずに手術し、血尿や高血圧を患いながら働いていく。
    人間が一番狂うのは眠れないことだと聞いたことがあるが、この主人公公河はまさしく仕事のために眠れないことを強いられており、そのために発生する「普通に暮らしている人」への怒りや嫉妬、幻覚などはリアルさを通り越していっそ恐ろしい。だがここに書かれた過酷な話は決してフィクションに留まらず、現実と地続きなのだろうとも思う。配属される科によって全然状況が違うというのもまたリアルというか…私も看護婦の親戚である叔母から各科については似たような話を聞いていたので、やはり一口に「医療」といっても状況は様々だなと。
    そしてこんなギリギリの精神状態、現場でありながら、そこに外科医として「人を切ること」への抵抗感や許しを求める様などを入れてくるのは文学的であり、同時にタイトルの「受け手のない祈り」を象徴しているにも思えた。公河が最後にたどり着く境地である「死人でも麻酔を打っていても、人を切ることは許されない」という外科医の背負う業と、そこから自らの死や眠りをもって解放を望む様、何より同僚たちの不義(健康な虫垂の切除、堕胎手術など)を糾弾しながら自分はそれをしていない、許されるべきだと考える思考などは、まさしく「祈り」に他ならない。途中で奥内が麻薬シールで暴れてるところを見ながら「もう死なせてやろうと思った」などと思ったのは、一見非情に見えながらも同僚ゆえの慈悲のような気さえしてくる。(このシーンの迫力が本当に凄まじいので、映像になったら軽くトラウマになりそうである)

    私たち何でもない人間が、医者に掛かり、悪いところがあったら手術してもらえるということにありがたみを感じるのに十分すぎるほどの重さを持つ小説。今後、医者にかかる機会があったら存分に感謝せねばならないと思った。

  • 過酷な医療現場小説。
    ただ描写や表現がフワフワしてるからか
    好みのものではなかったな。暗い

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著者プロフィール

1981年京都府生まれ。2021年、「塩の道」で第七回林芙美子文学賞を受賞。22年、同作を収録した『私の盲端』でデビュー。その他の著書に『植物少女』。現役の医師でもある。

「2023年 『あなたの燃える左手で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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