風の盆恋歌 新装版

  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103569091

作品紹介・あらすじ

散る前にせめて一度は酔いたい、あの酔芙蓉のように…。ぼんぼりに灯がともり、胡弓の音が流れて、風の盆の夜が更ける時、死の予感に震える男と女が忍び逢う…。互いに心を通わせながら離れ離れに二十年の歳月を生きた男女が辿る、あやうい恋の旅路を、金沢、パリ、八尾を舞台に描く長編。

感想・レビュー・書評

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  • 古い時代の不倫ものって割には2000年以降の作品でびっくりした。まずは風の盆ってのが何かをyoutubeで見てみると、主人公の奥さんが言ったように阿波踊りの方が興味あるかなぁって感じで、動画が悪かったのかもわからんけど、あの踊りからしっとりってイメージがなかなか湧かない。それでも小説の中の踊り手には艶があり色香を感じる踊りを披露してくれるので頭の中のイメージで読み進めた。単なる不倫ものとしてじっくり書いてくれればよかったんだが、戦争から帰ってきた背景を加えているから全体に散漫として、人物もぼやけていてなんら感情移入が出来なかった。家を管理するおばあさんだけが役者だなぁと感心したくらいかな?
    情景の描写は上手いので雰囲気は伝わるものの、人物が全部消化不良で魅力ある人が一人もいなかったのが残念。

  • ★この踊りは、動きの美しさより、止った時の線の美しさを見せるものなのね

    【感想】
    ・写真でしか見たことがないけど踊り手の美しい線が神秘的に思えて「風の盆」には興味を抱いているのでそれを題材にした小説でもあれば読んでみようかと思いました。
    ・久しぶりに昔ながらの文芸作品を読んだ感じ。

    【一行目】
     〝水音が聞えない〟

    【内容】
    ・風の盆の幻想的な踊りが催される三日間を背景に、かつて結ばれなかった男と女の五十歳過ぎてからの年に一度の会瀬。危うい愛の橋を渡る二人。

    ▼簡単なメモ

    【雨】《見る眼には、雨が踊りに紗をかけたような効果になっている。えり子が墨絵といった踊りの様が、ぼかしをともなったように、にじみを持ったように見えるのだ。》p.191
    【杏里/あんり】清原の娘。父親に劣らぬおわらの名手。妻子ある男と心中して自分だけ生き残った。清原は許さず地元に足を踏み入れさせないし自身も踊らなくなった。
    【えり子】中出えり子。主人公の一人。かつて互いに憎からず想いつつ都築とは結ばれなかった。前庭に植えられた酔芙蓉は彼女の仕業らしい。京都在住のようだ。《八尾から帰った私の身辺にはなにひとつ新しいことが起こっていないの。私が元の私ではなくなってしまったのに》p.142
    【小野田幸一】小絵の恋人。キリスト教系の大学で神学を学んでいる。
    【おわら】《この踊りは、動きの美しさより、止った時の線の美しさを見せるものなのね》p.50
    【清原親明】おわら保存協会会長。抜群の踊り手。男女どちらの踊りも美しく踊った。都築の知人。
    【小絵/さえ】えり子と中出の娘。
    【幸せ】《あのね……幸せって、いいことなの? 人間にとって、生きたって実感と、どっちが大事なの?》p.109
    【志津江】都築の妻。有能な弁護士。《影になった部分が少い女なのだ。》p.39
    【ジッド】アンドレ・ジッド。日本ではジイドとかジードとも呼ぶ。都築たちの世代は競ってジッドを読んだらしい。ぼくらの世代は代表作のいくつかは読んでおこうといった感じだった。とはいえ、古い全集を持っていたりする(ほとんど読んでないけど)。
    【自由】《たしかに、滅多に味わえない自由な時間の中にいる。しかし、そこを突きつめて行けば、ひどく無責任な人間のあり方につながってしまう。そう気がついて都築は考えることの方を止めた。居直るようにとれなくはないが、人生にひとつやふたつそんなことがあってもいいのではないかと思ったのだ。》p.33
    【正気】《……矢張り、正気ではない私が好きよ》p.201
    【知らぬふり】《人間には知っとって黙っとるということがあるさかいな》p.185
    【酔芙蓉/すいふよう】都築の買った家に咲いた花。《朝の中は白いのですが、昼下がりから酔い始めたように色づいて、夕暮にはすっかり赤くなります。それを昔の人は酒の酔いになぞらえたのでしょう》《一日きりの命の花です》p.37
    【谷口妙子】杏里にも負けないほどの踊り手。小学校の頃から同級生。歌も上手い。
    【都築克亮/つづき・かつすけ】主人公の一人。諏訪町に、毎年風の盆の三日間だけ使う家を買った東京の男。五十歳前後で背が高い。大新聞社の外報部長。妻は志津江。四高(しこう、後の金沢大学の一部か)出身。
    【とめ】太田とめ。七十歳を越えた女性。若い頃はおわらの有数の踊り手と言われた。毎年三日間だけ都築の世話をすることになった。
    【とめの夫】胡弓の名手と言われた。菓子職人。戦争で死んだ。
    【長沢辰巳】中出が勧める小絵の見合い相手。
    【中出】えり子の夫。心臓外科医のようだ。都築の学生時代の仲間でもある。
    【永吉広美】牛首紬の織り手の一人。
    【何もしない日】《長生きしてみると、ぼんやりしてなんもせんで過した日なんて、一日もなかったような気のして来るもんや。ほりゃ味気ないもんやぞ。人生なんも急ぐことないわいね》p.180
    【光】《光まで音をたてるものなのね》p.201
    【堀麦水/ほり・ばくすい】俳人。都築が学生時代に調べた。
    【三枝子】水谷の妻。八尾の出ではない。
    【水谷修一】喫茶店「華」を経営しながら刀を鍛つ。都築に清原を紹介した。
    【民主主義学生同盟】通称民学同。村木やえり子や志津江が参加しており都築の下宿によく集まっていた。
    【村木】学生時代の仲間の一人。えり子に恋愛感情を抱くが成就しなかった。自殺した。
    【八尾/やつお】水音の町。積雪を処理するための雪流しは急な坂を利用しておりつねに水音が聞こえてくる。九月一日から三日間「風の盆」が行われる。

  • 酒井順子さんのエッセイに2回?位出てくるので興味を持ち読んだ。
    後半わけがわからなくなった。

  • 水の音、酔芙蓉、前を進み続ける振り向かない

  • 五十代の男女の恋愛物語。
    綺麗事過ぎないリアルさを感じた。
    まるでロミオとジュリエットのような最期だったが、もっと生きて生き続けて、二人が気持ちを貫く姿を観てみたかった。

  •  ぶっちゃけ言うと、不倫の話。
     しかし、その根底に流れているものは、とても綺麗な風の盆。手紙に和歌を添えたり、風の盆の歌に合わせて踊ったり、八尾の町並みなど、綺麗な文章は流れていくように頭に入って透明な雰囲気を持ってます。
     少し退廃的な匂いも感じさせつつの、ラストは切なく物悲しいです。

  • 金沢、富山などを舞台とした作品です。


  •  美しい世界を見ました。

  • おわら風の盆に行き,薦められたので読んでみた。
    おわらの雰囲気は伝わってきたし,とてもきれいな映像が浮かんでくるので,富山人間としては,こんな伝統行事があって誇りに思える。だけど,悲劇にしてほしくなかった。悲劇のヒロインを演じるほどむなしいものはないと思う。<div class="booklog-all" style="margin-bottom:10px;"><div class="booklog-data" style="float:left; width:300px;"><div class="booklog-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103569093%3ftag=booklogjp0937-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank">風の盆恋歌</a></div><div class="booklog-pub">高橋 治 / 新潮社(2003/06)</div><div class="booklog-info" style="margin-top:10px;">Amazonランキング:82,409位<br>Amazonおすすめ度:<img src="http://booklog.jp/img/5.gif"><br></div><div class="booklog-link" style="margin-top:10px;"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103569093%3ftag=booklogjp0937-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank">Amazonで詳細を見る</a><br><a href="http://booklog.jp/asin/4103569093/via=esponozo" target="_blank">Booklogでレビューを見る</a> by <a href="http://booklog.jp" target="_blank">Booklog</a><br></div></div><br style="clear:left"></div>

  • 今、日経新聞で、渡辺淳一さんの連載が始まったが、そこにも風の盆が書かれていた。
    まだ見たことがないが、なんだか艶っぽいものを感じる。
    不倫は賛成できないけれど、人を愛する事は素敵な事だし、止められない。

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著者プロフィール

1929年千葉県生まれ。小説家・劇作家。1983年『釣師』で直木賞受賞。

「2016年 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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