- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103718031
感想・レビュー・書評
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小松川事件を解決に導いた検視官(事件当時は警部)に取材したドキュメンタリー。
死体発見の様子から、犯人である李珍宇の逮捕前の挑発的な行動がつまびらかにされている。37ページから45ページ。
この犯人を死刑から逃れさせるために必要なのは、減刑嘆願運動ではなく死刑制度を日本からなくすことしかないだろう。これだけのことをしでかしたのだから、与えうる限り最も重い量刑を科した裁判所の判断は全く妥当だ。
でも、李珍宇を取り上げている論文では、必ずといっていいほど、李珍宇の無実を主張している築山の本を参照されている。まだ題名しか知らないけれど、あれはそんなに根拠のしっかりしている説得力のある本なの?
あまり読みたいとも思わないけれど、チェックしておいた方がいいかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本はたまたまノンフィクションですが、著者の山崎光夫はTVの構成作家や雑誌記者を経て、1985年に『安楽処方箋』で小説現代新人賞を得てデビューしてすでに26年の大ベテラン。
私は、新潮ミステリー倶楽部の中の『ヒポクラテスの暗号』(1990年)を手にしたのが彼との出会いでしたが、医療関連の知識と人脈と徹底した取材は半端じゃなく専門的で、それを活かした小説を得意とするばかりか、本書のような医療関係の実話ものや薬・健康などに関する啓蒙書も書く人です。
小説家以前に『日本の名医661人 専門医別全国ガイドブック』(1984年)を出したり、デビュー後の1987年には『頼れる専門医・専門病院』という本もあるユニークな作家です。
どうでもいいことですが、残念ながら直木三十五賞の候補に3度あげられながら逃しています。1985年、短編「サイレント・サウスポー」で下半期の候補。この時はほとんど酷評で、受賞は森田誠吾の『魚河岸ものがたり』と林真理子の「最終便に間に合えば」「京都まで」でした。
翌年すぐ上半期にも再び「詐病」で候補。この時もほとんど無視されましたが、それよりこの第95回は、なんとあの隆慶一郎の『吉原御免状』と、そしてわが逢坂剛の『百舌の叫ぶ夜』というふたつの傑作が落とされてしまって、結局は皆川博子の『恋紅』が受賞。
さらに続けて、同年の下半期に「ジェンナーの遺言」でみたび候補。この時の選考委員で、今までそっけなかった村上元三がエールを送りつつもっと精進せよと檄をとばしたり、井上ひさしが、文体にいつもの艶が失われている、テーマの大きさにひるむなとやはり激励し、藤沢周平は、中盤までいっきに読んだが、その後が未整理でステレオタイプの表現で残念だと惜しみつつ、陳舜臣は、主題に入れ込みすぎたために、すばらしい描写の割には人間が描けてないと提言し、黒岩重吾は、面白くて一気に読んだけれど人物が類型的、だが作品の暖かさは捨てがたいと発言し、五木寛之は、出だしなどの迫力さは受賞作にひけはとらないと明言しましたが、はたして山崎光夫はもとより早坂暁の『ダウンタウン・ヒーローズ』や落合恵子の『アローン・アゲイン』というふたつの快作も落とされて、結果は常盤新平の『遠いアメリカ』と、わが逢坂剛の『カディスの赤い星』の2作同時受賞でした。
ところで本書は、2005年11月21日に90歳で亡くなった元警視庁検死官だった芹沢常行(この本の刊行時は84歳でご存命でした)の、30年におよぶ膨大な検死ファイルからピックアップされた著名な幾つかの事件の主人公たちの死の真相を明きらかにするものです。
永山則夫にピストルで射殺されたガードマン、浅沼稲次郎、力道山などなど。
そしてその中に・・・、60年安保反対闘争の最中に亡くなった樺美智子さんもいたそうです。彼女の死はてっきり機動隊員の警棒で殴打されたか、それとも機動隊員が喉を絞めたことによる窒息死と聞いていたのでしたが、芹沢常行本人が解剖したところによると、頭蓋骨も無傷できれいなもので、つまりは殴打でも首を絞められたものでもなく、大勢の人間が踏みつけたことによる胸部の圧迫からの窒息死だというのです。
今から51年前の昨日、1960年6月15日に、そうやって樺美智子は22歳で死んでいったのでした。 -
この本を読んだ後に、人が死んだニュースを見ると、
フィルターがかかったようになる。
報道していることは本当に正しいのだろうか?
もしかしたら、
他殺と言っているが、本当は自殺ではないのか、とか、
自殺と伝えているが、本当は他殺ではないのか、
などと想像してしまう。