天平の女帝 孝謙称徳

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103737155

作品紹介・あらすじ

奈良時代、二度も皇位についた偉大な女帝がいた。著者渾身の本格歴史小説。「女に天皇は務まらない」と言われながら、民のため、国のため、平和の世のために生きた孝謙称徳帝。遣唐使を派遣し、仲麻呂ら逆臣の内乱を鎮め、道鏡を引き立て、隼人を傍に置いた。一人の人間として、女性としての人生も求めた女帝の真の姿とは。突然の死と秘められた愛の謎を和気広虫ら女官たちが解き明かす、感動の歴史大作。

感想・レビュー・書評

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  • 古代小説が面白いという日経の文化系記事がキッカケで読んだ本、2冊目。

     今度は、女性の労働環境を考えさせる一冊だ。女帝孝謙・称徳(重祚)天皇は、一般には「僧の道鏡に傾倒したため、男によろめいた女帝」という醜聞が思い出されるが、著者は「それを覆したかった」と筆を執る。
     女帝に仕える高級女官和気広虫の目線で物語は綴られ、朝廷内で様々な役割を担う女性官僚の活躍が描かれる。著者は古代史を学ぶ上で「能力があれば女性も評価されるシステムだった。男社会で奮闘する女官の姿は、現代に重なる。女性の読者に共感して読んでもらえたらうれしい」と語る。

     つまり、道鏡事件スキャンダル、その後の女帝の死の真相を暴くことと、古代を舞台に女性労働力のあり方を考えさせる二軸を描いている。そこが、ちょっと中途半端で冗長になっていて残念。
     ミステリー的に“道鏡事件”の真相に迫る迫力にも乏しく、一方、女性にとっての働きやすい職場環境を実現させたいという女帝の遺詔を成文化する作業も最後はどうなったのか?というところで終わってしまってスカっとしない。
     そもそも作者も、広虫と共同戦線を張る女官由利(吉備真備の娘)を評して、「しょせんは由利も女。もろいばかりに情と熱とに流されてしまう、女なのだ」と、そこで“しょせん”を使っちゃいけないんじゃないと思うほど、根柢のところでは女性登用に対しての諦念が見て取れる気がして凄味に欠けるところが、ちょっと惜しい。

     とはいえ、確かに古代史は資料も少なく、歴史考証も諸説紛々、自由に現代の意図や解釈を、皇統の歴史においてでさえも投入できる面白さは大いに感じることができた。もっともっと自由にダイナミックに描けると思ったけど、天皇家のスキャンダルや、女帝の政治思想なんだもんなぁ、けっこう頑張って創り上げてるのかもしれない。邪推だが、本書が書き下ろしなのは、どのメディアも連載として取り上げるにはタッチ―だと感じたからか、あるいは著者が掲載媒体サイドの圧力を回避し自由に筆を振るいたかったがためか、と。
     古代史を描いた水木しげるの著書も、そういえば書き下ろしだった(大和朝廷から皇族に繋がる歴史の正当性の担保のために神話は利用されているという主張が入っているからね)。

     閑話休題。
     日本にはかつて男女の差のない律令が定めた官人制度があり、それは当時手本とした中国にもなかったこと(中国は宦官制度という世にも恐ろしい、人を人とも思わない制度があった)。男性と女性が協働する仕組みが大和朝廷の中にあったということを自覚するのは、現代の労働環境を考える上で大いなるヒントになる。

     また、女性の天皇という可能性も。

     本書は、最後に
    「この後、この国において、数百年間にわたって女帝の即位はない」
     と語り、
    「男たちの政権はその後、久しく続いて行くが、人々が求める平和で安らかなる日本に落ち着くには、歴史はまだまだ、時間を必要とするようである」
     と締めくくる。

     女性の活躍と、女帝もありじゃなかろうか?という問いかけが、他の作品でも女性の活躍を描く著者の思いではあるのだろうが、孝謙・称徳時代の混乱を克明に描いた本書を読むと、やはり女性天皇の存在は多くの問題を孕むと思わざるも得ないところ。

     著者はいう(誰もが言うことだが)
    「歴史は繰り返す。それは人が歴史から学ばないからだ」

     はてさて、学んだが故の現在もあると思う。遠い記憶の彼方に霞む古代史に、現代の思考、主義主張を自由に羽ばたかせることが可能なように、歴史も現代の“都合”でどうにでも解釈できるだろうし、利用もできるもの。学ばないのではなく、学んではいるが、それでも繰り返す、繰り返せざるを得ないところがあるのが人の世なんじゃないかな、と思いながら読む歴史。 やはり面白いな、歴史は。

  • H31/3/6

  • 天平の女帝、孝謙・称徳。重祚した2回の治世とも、廷臣の専横を招いた女帝。
    恋に盲目だった乙女の孝謙期と、全てを慈しむ母性へと変わった称徳期。

    彼女の死後の宮廷で、過去を思い出し現在を俯瞰する女官の目線で物語は進みます。
    良くも悪くも、一人の愛の行く末に左右された時代だったのだな、と。

    彼女の愛の生涯をたどるように進む物語の裏で、暗躍する藤原氏の権力への執着に恐れ戦く。

  • なかなか読み進まなかったが、中盤からは毒殺の犯人捜しが気になってなんとか読了。

  • 登場人物の名前がややこしくて苦労した。特にカタカナの名前の彼ら。

  • 孝謙、称徳天皇や道鏡など、歴史の授業などで聞いたことあるなー、というくらいの知識だったけど、楽しめた。
    ただ登場人物の名前が難読で覚えにくく、人物相関がわかりにくかった…。

    歴史物、ではあるけれど、女性が働くには、など現代とも共通する点もあり、はるか昔のお話が身近に感じられた。

    フィクションを交えたあくまでも「物語」なのでこれが真実とは思わないものの、歴史上の人物や事件には色々な解釈の仕方があり、それが古い時代であればあるほど100%の真相がわからないだけに「もしかしたら…」と思わせてくれる、楽しいお話だった。

    ただ、後の男性たちが女性天皇を貶めることは大いにありえそう。

  • 古代最後の女帝、孝謙称徳の物語。で、主人公は孝謙称徳かと思ったら、何と和気広虫だった。広虫の視点から孝謙称徳の心の内を慮るという凝った構成であった。しかし、毒殺のミステリーは、あまり効果的でなかった。

  • 初めて読んだ作家なので、どう評価したらいいのか…。
    突っ込みどころはたくさんありました。
    でも、すごく面白かった。
    昨日、仕事があまり忙しくなかったら午後から休暇を取って、一気に読み上げたい!と思うほど。
    結局休暇は取れずに今朝読んだんですが。

    数少ない女性天皇の中で、二度皇位についたのは彼女だけです。
    孝謙天皇。称徳天皇。同じ人。

    仏教に帰依し、日本の各地に国分寺を作り、仏教王国をめざした聖武天皇の娘は、藤原氏の血を引く母(光明皇后)の意向で、藤原氏の血を引く男性天皇が出てくるまでの繋ぎとして天皇になります。
    そして一度母の看病に専念するために、藤原氏とつながりの深い男性に皇位を譲って上皇となります。
    が、母の死後病に倒れた上皇は、看病にあたった僧・道鏡を寵愛し、彼を天皇にしようと画策しますが事はならず…と、教科書には書いてあります。
    しかし真実は一体どうだったのか。

    てっきり女帝の生涯が書かれた作品だと思いました。
    が、女帝が崩御され、彼女に追放された和気広虫(っていう名前の女官)が都に戻ってくるところから話が始まります。

    一年ぶりに戻った都の様子、特に藤原氏の政治的な立ち回りに、折々思い出される女帝との日々を差し挟むことによって、女帝がどのような思いで天皇としての日々を送っていたのかが浮かび上がってきます。

    繋ぎの天皇ですから、結婚して子どもを作るなんてことはできません。
    しかし人の気持ちはそうそう割り切れるものではないのです。
    あくまでも恋する乙女であった孝謙天皇時代。
    挫折を知り、天皇として国や民を安んじることの大切さと責任の重さを痛感した称徳天皇時代。

    それを、女帝のいちばんそばに仕えていた広虫の視点で語られます。
    腹心の部下であったはずの広虫は、なぜ都を追放されてしまったのか。
    教科書に書いている一文には納まりきらない、互いの思いのすれ違いがそこにはありました。

    女帝は毒殺された。
    誰に、なぜ?
    これが一本の筋になっているのは確かですが、これはミステリではないので、割と早いうちにトリックはわかります。トリックがわかると犯人が、そして動機もわかります。
    しかし、このトリックで毒殺するくらいなら、この時代ですから呪い殺すでよかった気もします。

    「宇佐八幡宮神託事件」と「道鏡事件」についての真相(あくまで作品中の)に至るまでの流れが、実在の人物たちを使って、全く別物に見せていく手腕に、目からウロコがぽろぽろ落ちました。

    けれど、道鏡が弱い。
    人物造形がゆれている。
    徳の高い僧なのか、俗物なのか。
    女帝に対しても、一族のものたちの振る舞いに対しても、首尾一貫していないような気がします。

    で、藤原氏。
    「国」や「民」に責任を持つ天皇と違って、彼らは「藤原氏」の栄光しか考えません。
    称徳天皇が崩御されたときに権力を持っていたのは北家の藤原永手(ながて)。
    この人のことは知りませんでした。
    しかし彼が急死した後に勢力を伸ばしたのが式家の藤原良嗣(よしつぐ)。
    そして弟の雄田麻呂(おだまろ)。
    聞いたことがない名前だったのでてっきり架空の人物かと思ったら、のちの藤原百川(ももかわ)でした。
    他の勢力に対して一致して藤原家を守りますが、藤原家の一人勝ちになるとその中での勢力争いが始まる。
    実に生々しい一族です。

    藤原氏のために存在した孝謙天皇は、称徳天皇となって藤原氏のためだけではない国を作りはじめます。
    そのためには、男女ともに働きやすい朝廷であること。女性天皇への道を作ること。
    うーん、この辺も弱い。
    が、いま書かねば、という思いで書かれたことだとは分かります。

    “一度書かれて皆の目に触れたものを、後世の者の都合でそう簡単に書き換えることなど、できませんよ”

    書き換えられてしまった女帝の生涯。
    今までの歴史とは全く違った物語でしたが、これもありかと思わせられました。
    こういうのが歴史小説の醍醐味だよねえ。

  • 凡作。苦労して読み終えた。世評芳しくない孝謙帝を見直すきっかけを与えてくれるかと淡い期待をしたが残念ながら至らなかった。文章は読みづらい。治世中は「謀反や騒乱が繰り返され」、「労役や徴税で民は疲弊」、だが「偉大なる女帝陛下」は具体的に何を成したのか…?「この国は独裁ではなく合議を旨とする」と書かれた次の頁では「女帝がよしとされればすべては通る。女帝の意思がこの世の真理だった」…?支離滅裂じゃないですかね。陳腐な犯人探しやファンタジーも混ざって著者の妄想についていけなかった。…あれじゃ、不特定のターゲットを殺しちゃうでしょ。

  • 2016.8 いやまぁ読みにくいこと。人名に苦労しました。

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著者プロフィール

作家

「2018年 『姫君の賦 千姫流流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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