この世の春 下

著者 :
  • 新潮社
3.84
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本棚登録 : 1204
レビュー : 199
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103750147

作品紹介・あらすじ

小説史に類を見ない、息を呑む大仕掛け。そこまでやるか、ミヤベ魔術! それは亡者たちの声? それとも心の扉が軋む音? 正体不明の悪意が怪しい囁きと化して、かけがえのない人々を蝕み始めていた。目鼻を持たぬ仮面に怯え続ける青年は、恐怖の果てにひとりの少年をつくった。悪が幾重にも憑依した一族の救世主に、この少年はなりうるのか――。21世紀最強のサイコ&ミステリー、ここに降臨!

感想・レビュー・書評

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  • なるほどそうきたか!
    父成興も狭間の桐葉を側女に置き、陰廻と狭間の一本化を図ろうとしていたのが、思うがままに桐葉に操られていたのだった

    重興は悪霊に取り憑かれていたのではなく、自分の意思とは無関係に病むことによって、多くの男児が自分を苛めるために多くの生贄とされた過去の事件を告発していたのだった

    何はともあれ、名君として家臣や領民から尊敬され慕われていた成興に稚児好みの性癖がなくてよかった

    桐葉の呪の力が、蘭学かじりの青二才の医師の施術や多紀のような無力な女子の愛情になどに負けるわけがないと高を括っていたわけだが、見事その予想を覆した

    重興が回復するにつれ、五香苑が明るさを取り戻していく様子、重興と多紀が夫婦となり、地域の人々のために防雷対策を研究していく様子は、それまでのおどろおどろしい展開とは打って変わるハッピーエンディングとなった

    ハッピーエンディングと知った週刊誌の連載担当者や文芸担当者が「ええーっ」とのけぞったという
    それほど宮部作品でハッピーエンディングは珍しいことなのか

    成興・重興父子と対照的に描かれた石野織部・直治郎父子の深い信頼と尊敬の上に成り立った父子の描写が清々しく、大好きだった

    「もともと織部も直治郎も、小才ある利け者とは違う。些事であれ大事であれ、人と人との関わりが生み出す軋みに、決してあせらず、短気を起こさず、寛容を持って地道に解決策を探し、愚直で勤勉であることが身上の似た者父子・・・」

    宮部みゆきデビュー30周年記念作品「この世の春」さすがでした

  • 下巻は正に「解決編」だった(以下、ネタバレの中枢には言及していないけど、そこから波及する結果には言及しています)。

    謎は大まかなところでは解けた。もっと、藩の中枢の政治的な歪みが、事件を起こしたのかと思っていたが、政治というよりも、やはり人の心の中の欲望、恨みなどが発動したのだ。相手が権力の中枢にいるだけに、慎重に慎重に行われ、その周辺の庶民に対しては、もっと簡単に殺されたり、隠微されたりしていたことが分かった。そういう意味では何時もの宮部みゆきなのだ。

    しかし、謎は100%解かれたわけではない。「真の黒幕」(386p)は、未だ影さえ現してはいないように思える。しかし石野織部は「内訌が露わになれば、北見藩の存亡にも関わりかねぬ」とここで打ち切りを宣言する。若い政治家栗木も「獅子身中の虫を殺そうとして、獅子そのものを殺してしまう羽目」は避けるべきだと同意する。不満だが、下級武士に過ぎない半十郎も「堪忍します」と同意する。(387p)思うに、現代政治家に通じる「ずるい部分」である。宮部みゆきは、そのことにはあまり嫌悪を表さない。ただ、重興は出土村で新居を構えるだろう。その時、多紀を含めた新たな事件が、過去を蒸し返さないとは限らない。もちろん、それは新たな一編が必要になる。御霊繰の術は絶えてはいない。今回は医学的にはとても科学的に物語が進んだが、宮部みゆきの時代ものらしく、そこの謎も、総ては明らかにしていないのである。蓋し、エンタメの常道であろう。

    2019年2月読了

  • 上巻はわくわく感いっぱいだったが、下巻はなぞがとけていくのに、あまり引き込まれなかった。
    上下巻ではなくてもよかったんじゃないかな。

  • 久しぶりに読んだ時代物。
    面白かった♪
    心理学の基礎を勉強したことがあって、多重人格の症状とか治療法とかを知っていたからこそより深く楽しめたかなと思います。
    面白いけど登場人物の誰にも共感できないなぁという本もありますが、今回は久しぶりにかなり感情移入して読みました。
    重興と多紀の未来が幸せであることを思わず願ってしまいます。

  • 全体的にとてもやさしいおはなし。
    御霊繰とか面の呪術とかの怪異要素と、父に苛まれた結果の乱心や神隠しされた少年たちの末路など人為的な恐怖が主立って描かれていているのだけど。
    自我を失うほどの恥を恐怖を押し込めてきた重興と、嫁ぎ先で姑の仕打ちによる傷の癒えない多紀。
    このふたりが、痛みを知るからこそ他人を思い遣れるとてもやさしい心根をしている。
    そういう簡単なようで意外と難しいことが出来る人たちが、五香苑に集ってくる。

    狭間の父娘が死んで一件落着とはならない執念深い真相がありそうだけど、重興の心が救われて父成興の名誉も回復し、多紀の思いも報われて五香苑に春がきて、この先何度も四季が巡って春を迎えるんだろうなって思える最後でよかった。

    しいていえば登場人物が多くて散漫な印象はあるし、そういえばあの人どうしてるのかな?ってなるけど。
    医師の白田先生は仕方ないが、まるでアピールできてない半十郎がとてもかわいい。

  • 降霊術、多重人格、神隠し......と、サイコ&ミステリーな飛び道具が次々と繰り出され、不穏で先の見えない展開に翻弄されます。
    真相に近づくにつれてちょっと尻すぼみ感があったかな......虐待とは......。
    しかしこれだけの登場人物を描き分け、無理なく活躍させるのは離れ業としか思えません! ベテラン作家のスゴさが改めてわかります。

  • 「この世の春上下」のところにレビューしている

  • 前半のワクワク感から期待値が高すぎたのか
    だんだんと真実が見えてくると
    案外肩透かしというか
    うーん、あんまり盛り上がりに欠けたかな~
    もっと意外性が欲しかったかな。

    でも、お鈴や金一がとても
    いい子たちで癒された。

  • 宮部みゆきの書く悪意は、本当に恐ろしい。
    それは時にこの世のものではないと言われる妖よりも。

    死霊に取りつかれたと言われ、家臣たちにより押込にされ、強制的に隠居させられた北見重興。
    しかし実際は、想像を絶するほどおぞましい過去の出来事が、彼を蝕んでいたのだった。

    何の罪もない子どもたちがひどい目に遭い、命を奪われるのはやり切れない。
    自分の命を守るため、自分の心を守るため、大切な家族を守るため、彼は彼になり、彼女になり、奴になった。
    それを誰がとがめることができるだろう。

    本人だけが自分を責めさいなんで、苦しみから逃れることができない。
    謎が解き明かされるにつれて重苦しいものが残される。

    けれども、それを乗り越えた時、温かい気持ちでこの本を読み終えることができる。
    たった一人で恐怖にふるえていた子どもが、周りの人たちの温かい気持ちに触れて、少しずつ自分を解放し、過去と向き合い、前に進めるようになったから。

    ”秘事は心の奥にしまい込まれ、蓋をされていても、そこで息づいているのだ。”

    安倍政権のことかと思ってしまった。

  • 一気読み。
    事件がどんどん展開していく、キャラが動いていく。
    「自分のなかに封じ込められたものを解き放つ」というのはこのところの宮部さんのテーマなのかなぁ。
    「虐待」そして「心理的な圧迫」なんとも現代的なテーマの話であった。
    最後が時代劇よろしく大団円だったのがよかった。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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