後宮小説

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 363
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103751014

作品紹介・あらすじ

シンデレラ+三国志+金瓶梅+ラスト・エンペラーの面白さ、奇想小説の神技、天才作家の出現、と全選考委員が激賞した第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 第1回目のファンタジーノベル大賞受賞作ということで、以前から気になっていた作品です。

    歴史書を引きながら、後世の筆者(小説家なのか、はたまた学者なのか…?)が素乾国最後の後宮について綴っています。
    後に正妃となる銀河という少女を追いながらストーリーが進んでいくのですが、痛快なのはそのすべてがフィクションであること。
    歴史書やその著者についての説明がとても本物らしいため、だんだんとこの本の中にあったようなことがどこかの国の歴史の教科書に載っているような気持ちにさせられます。

    また、宮女になるための哲学と技を教える後宮教育についての描写もあるのですが、なんだか全然いやらしくないのは、筆者の淡々として、少々堅苦しいくらいの語り口のせいでしょう。
    その堅苦しさゆえに醸し出される独特のおかしみが癖になってしまいました。
    自由奔放な性格の銀河や、無口だけれど独自の哲学を持った少女・紅葉など、登場人物たちの魅力もあいまって、すっかり酒見さんの世界に引き込まれました。

    酒見作品のうち、全くのファンタジーというのは本作だけのようですが、他の作品も読んでみたいです。

  • でっちあげなのに、ありそうだなぁ、と思う話し。したり顔ですごい上手な嘘つかれてるみたい。

  • 【図書館本】評価が良かったので閉架から引っ張り出してもらった。面白……いのか? 作中に引用があったり作者が顔を出す形式が苦手なので、この小説も苦手意識を持ってしまった。漢字は結構読み飛ばしてたし、内容があまり頭に入ってこなくて楽しめた気はしない。これが引用も作者も(い)ない文体なら(つまりストーリーだけだったら)もうちょっと楽しめたのかもしれない。ファンタジーノベル大賞受賞作。確かにファンタジーなんだけど、思ってたのと違う……。

  • 僕は本というのは中身の情報だけあればいいという質なので、電子書籍より本の方がいいんだという情緒的な意見には基本的に与しない。

    ただ、そこにはいくつか例外が存在する。

    この本はその代表格といっていいもので、文庫版を既に持っていたにもかかわらず、神保町の古本屋で単行本を見つけ思わず買ってしまった、それくらい好きな作品だ。

    最初読み終えた当初は、中国に実在した王朝の話だろうと思っていたので、あとがきで作者の創作だと知ったときはぶったまげた。

    中国に対する無知のおかげで随分爽快な思いをさせていただいたわけだ。

    考えてみたら購入前から日本ファンタジーノベル大賞受賞作なのは知っていたのだから、歴史小説であるわけはないのだ。

    その上で自分の無知を棚に上げたいうなら、事実なのかフィクションなのかわからない綱渡りを読者にさせるような、こういう印象こそ、小説というものの面白さのかなり本質的な部分のような気がする。

    以前、五木寛之が報道ステーションにおけるインタビューで、自分の風呂嫌いについての話の中で遠藤周作にこんなことを言われたと話していた。

    遠藤周作「五木くん、うなぎは非常に生命力が強いだろ。でもね、あのヌルヌルを石鹸で洗い落とすとうなぎは死んじゃうんだよ。だから風呂には入らないほうがいい」

    この話を聞いて以来僕は、嘘か本当かわからない、でも面白いという感覚、これこそが文学なんじゃないかと思っている。

    そういう意味でこれは最高の文学だ。

  • 読書感想文、先生の推薦図書ということで読みました。最初の方は「え!こんな話!?」と色々と思春期の女子(自分で言いますが(笑))にとっては刺激的な部分もありましたが、全体通して主人公のありえないくらいのまっすぐさにみんなが動かされていく・・・っていうストーリーが好きです。

  • ファンタジーと謳ってはいるが、実在した話が元になっているのではと思うくらいの素晴らしく細かい設定の作り込みが、とてもよかった。
    社会の作りが中国大陸っぽさを感じさせる一方で、名前の読みなどが西洋っぽさを感じさせ、そこが私的に大好きなところ。
    地方と中央の、また身分による思考の違いなどがまたいい。
    それぞれで価値観が違い、行動原理が違う。
    アニメ版で端折られていた部分の重厚さが本当によかった。

  • アニメ化作品を久しぶりに見たので、原作も久しぶりに読んでみた。

    ファンタジーとは。

    こんな話だったのね。

  •  後藤末雄先生のいふ「中国思想のフランス西漸」説のパロディみたいなやつが出る。うむうむ。
     仏国の公用語が英語っぽいけどべつにいいでせう。
     あと宦官の人が真野(まの)とかだけどエキゾティックでいい。
     ちゃんと作品へガチでやってますしぐさとして、最後に作者が「素乾」(共産圏かは不明)へ取材に行き、土人の女性から衝撃の言葉を貰ふ。
     儒教の塾で、一斉教授が行はれてゐた説を見た。なのでここに出てくる、街を歩けば「市井の女衆が恥じて家へ入る」程のフェミナンな美形の先生が、並みいる美少女の前で、宦官をこます、と言ふのは、いい感じで考証に基づいてる(若干違ふ)

  • アニメ「雲のように風のように」の原作。放送当時中学生の私、見た後おこづかいをはたいて本屋に行ったのは良い思い出。(痛い出費だった)そして中身のエロさに引いたのも良い思い出(爆)今読みなおすと「後宮」が舞台なんだからエロくて当たり前で、そして意外に「性」を哲学的に描いてるのでそんなにエロく感じなかった。あぁ、歳をとりましたね、自分。主人公・銀河が14歳、コリューンが17歳。国を背負うには若すぎた。そして国内が腐敗し切っていて立て直しが効かない状態まで追い込まれていたのが不運。紅葉・セシャーミン達のキャラがとても良かった。(タミューンのブラコンはドン引きだけど…。あれはいかんでしょ。)あと時代背景をよく作り込んでるな。と思う。普通に中国の実在した王朝だと勘違いしてしまうほど。(参考した書物として登場する名前も全部架空だもの。)

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