きみのためのバラ

著者 :
  • 新潮社
3.59
  • (30)
  • (45)
  • (65)
  • (11)
  • (2)
本棚登録 : 251
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103753063

作品紹介・あらすじ

ヘルシンキ、ミュンヘン、メキシコ、バリ、アマゾナス、沖縄…世界の片隅でひっそりと起こる贈り物のような出会いと避けがたい別れ-。遠く離れて暮らす幼い娘と年に一度旅をする父親。憑かれたように求めあった年上の女医と青年の奇妙な十夜。駅のホームでトランクに腰かけていた黒い瞳の美少女。そして二度と会うことのない彼女のための、一輪のバラ。人生の一瞬が永遠に変わる恩寵のようなひとときを刻みつけた、美しい八つの物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 池澤作品に漂う、あの雰囲気はなんなんだろう?村上作品の中の、どこか寂しい冷たさや、あるいは恩田陸作品のねっとりと絡む様な濃厚な暗さに飽きた時、わたしはある意味で癒しを求めて池澤作品に手を伸ばす。彼の書く文体にはアジアの南風が宿っているような気がする、あたたかく、やわらかく、それでいて体を解放してくれるような。

    どれも小品としてスケール・深度ともにきれいにまとまってはいるが、『20まマイル四方で唯一のコーヒー豆』『きみのためのバラ』がとても良かった。多分誰しも一度は経験した事がある、過去と今とのオーバーラップ。つらいものにせよ青春の青臭い1ページにせよ、筆者は過去を克明に描いて見せることで、現在に向かってひらく裂け目をも明確にしようとしている、そんなふうに思った。


    あと池澤さんは、「味が濃くてはっきりしていて、香辛料がたっぷり」な料理が好みとみた!

  • 初読み作家。タイトルに惹かれ購入。
    様々な場所で、ただ通り過ぎるだけだった人たちが一瞬の奇跡のように出逢う。“会話”を交わせなかった一日の終わりのディナーで目の合った男女。妻を殺して義父から逃げる男の出会った“逃げる人々”の教えてくれた奪い合う気持ちを攫ってしまう言葉。幸せになるはずだった花嫁の、絶望としなやかなというには苦しい強さ。父との関係に罅を持つ少年の切ない変化への憧れと小さいが確かな前進への気配。異国を舞台とした(沖縄も入っているけれど)その場所の空気とともに織られる他愛ないが故に後から意味を持つ一瞬を描いた短編集。洗練された文章というのかもしれない。やわらかさというよりしなやかさ、そして芯の真珠のような発光で物語を照らす。久々に好きになった男性作家。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「他愛ないが故に後から意味」
      翻訳や詩もする池澤夏樹だから、ちょっとしたコトに意味を持たせるのが上手いのかなぁ~
      「他愛ないが故に後から意味」
      翻訳や詩もする池澤夏樹だから、ちょっとしたコトに意味を持たせるのが上手いのかなぁ~
      2012/05/07
  • 沖縄、バリ島、フィンランドにミュンヘン・・・
    世界の色々な土地に旅をする人たちがいる。
    旅ではなくても、旅するように生きている人たちがいる。
    私の人生では今までもそしてこれからも
    きっとそんなたくさんの街に出かけることも
    出会った人たちと、おしゃれな会話を交わすこともないと思う。
    だけど、だからこそこの本の素晴らしさがわかる。
    物語の中で私は確かに、行ったことのないその場所の空気や匂いや寄る辺ない淋しさまでも
    しっかりと感じていたのだから。

  • 熱かったり、透き通っていたり、様々なバリエーションが楽しめる短編集です。表題作がお気に入りです。

  • 資料番号:010979532
    請求記号:F/イケザ

  • 面白かった。

  • 8この話。
     どれも面白かった。

     「ひどい一日」を送った男が、その話をしたくて、食堂で女性と話す。が、彼女はそれ以上の「ひどい一日」を抱えていて、結局彼は聞くだけになってしまう。(都市生活)
     バリで現地の男性と結婚することになった私の友人が、結婚前にいったん日本に帰っている間に男性は死んでしまう。これは、『花を運ぶ妹』の外伝。(レギャンの花嫁)
     沖縄の病院でアルバイトをしていたとき、年上の女性の医師にさそわれ、10日間のセックス生活をする。それは何だったのか。(連夜)
     街の有力者の娘と結婚したがうまくいかず、結局殺してしまう。逃げたところで、彼は争いを鎮める「マントラ」を知る。(レシタションのはじまり)
     ロシア人の女性と結婚し、娘も生まれたが離婚。半年に一回その娘と会う。が、彼女はだんだん日本語がわからなくなってくる。私はその二人と会って、日本人どうしだが、自分たちも同じだと思う。(ヘルシンキ)
     無職になった時、おばの遺産が入って、中年の男性が半年パリに住む。パリは彼に何かを与えた。(人生の広場)
     父親の暴力が原因で、中学校のときから、家族の前で英語しか話せなくなった彼が、カメラマンの助手としてカナダにやって来る。そこの宿の女主人が、コーヒー豆をこぼした。それを拾いながら、彼は忘れていたある出来事を思い出していた。(20マイル四方で唯一のコーヒー豆)
     ドイツの汽車の中で、身を守るために、客車の中を苦労して移動した彼は、若いころメキシコで会った少女のことを思い出していた。彼は一本のバラを渡すために同じように客車を移動していたのだ。(きみのためのバラ)

     どれも現実的で、しかも寓話的。長さもちょうど良い。

  • 良質な小説。
    旅行はなかなか難しいけど、心を遠くに連れて行ってくれた。
    幸せな時間をありがとう。

  • 初めての池澤夏樹。いい短編集に出会ったことが無かったから、中々いい。とても上手い。上質な翻訳物を読んでいる無国籍な雰囲気がある。

  • 旅する大人の小説。外国語を話すと違う自分になれるという行に共感☆

全67件中 1 - 10件を表示

きみのためのバラのその他の作品

池澤夏樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ツイートする