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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784103784111
作品紹介・あらすじ
時空を超え、鮮烈に蘇る古の声、声、声。髙村文学の極限と愉楽がここに。老いて死に瀕した一人の男が、意識の塊と化して長い仮死の夢を見る。そこに沸き立つのは高らかな万葉びとの声、野辺送りの声、笑い転げる兎や蛙の声、源氏の男君女君の声、都を駆けるつわものたちの声、定家ら歌詠みたちの声、そして名もなき女たちの声――。古文と現代文の自在な往還を試みた独創的文体、渾身の長篇小説。
感想・レビュー・書評
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本を手にして、あれ?薄いかなと思ったけど…
読み始めると死に瀕した男の回想といきなり何の前触れもなく、古文が始まる
古文は学生時代、あまり得意な科目でなかったけど
必死に読んでいくとすごく読み終わるまで時間がかかった小説だった
男は名前が表記されてない様子
祖父や父が能に携わる家庭で育ち、変わった家庭環境に影響を受けた男。
結婚を2回経験し、ひなという女の子を設けるが、
早逝した様子。
ラストは能の蘊蓄をたっぷりと味わえた
高村薫の変化球的な小説で、読み手を選ぶストーリーだと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「混濁した意識の独り語り」で全編を書ききるという試みは、著者の「土の記」で味をしめた…手応えを感じてのことなのだろう。著者のインタビューによれば昨今のストーリー至上主義的な小説へのアンチテーゼということもあったかも知れない。全編独白、しかもなぜか本人の人格に藤原定家の人格が混入したりとかで、現代文が急に古語になったりとかの仕掛けもあるらしい。そんなのが面白く読めるだろうか、と思いながら読み進めたが、思った以上には面白かった。その理由は著者の書きたかったという、日本語の持つ音やリズムそのものが心地よかったことにあったと思う。先のインタビューにあったが、著者は言葉の「音」を書きたかったらしい。たいていの日本人は日本語で物を考える。よって日本の文化や習俗は日本語の音韻からこそ生まれてきたものだということが書いていて実感できたそうだ。仮死状態の主人公のモノローグは、万葉言葉や和歌や読経など言葉(日本語)の「音」の記憶が基調となっており、極端なことを言ってしまえばストーリーのない小説を日本語の言葉の響きをただ浴びればいいというスタンスで読ませることに成功したのだと思う。もちろん最小限の主人公のストーリー(記憶の断片)、なかでも能役者であった主人公の父や祖父の姿などの描写が巧いからこそだと思うが。考えて見れば合田刑事シリーズなどでもそうだが、著者のストーリーで読ませるいわゆるふつうの小説でも、ストーリーの構成(あらすじ)だけが面白かったのではなく、執拗ともいえる風景(心象も含む)描写の活字の洪水にあったのだから、そこは一貫しているのだと思う。
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読者の教養が問われる「怪作」
著者にとってはフツーの知識なんだろうね。
私は崖に指先引っかけてついていきました。
10分の1ぐらいしか知らなかったかも私。
それでも文語は声に出して読みたくなる。
スタイルとしては、髙村流「意識の流れ」かな。
全部わかろうとせず、作中の「男」の意識とともにゆり動かされるようにゆったり読むのが正解な気がする。 -
これは、死に瀕した男の、駆け巡る走馬灯なのか?それとも、躰を抜け出し彷徨する魂の風景なのか?
読書する愉悦を感じます -
万葉から現代まで時空を超えるだけでなく、洋の東西も。何とか読み終えたが、理解できない部分も。一代記と言われても…。もう合田時代には戻らないんだろうな、高村さん。
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今年のマイ読書の山場。髙村薫さんの新作。能楽師の家に生まれた法廷速記者が死の間際の「夢の回廊」で、歌詠み人藤原定家の魂とクロスする。現代文と古文を自在に組み合わせてたたみかけるぶっ飛んだ内容。この人の文章からしか摂取できない栄養がぎゅっと詰まっています。
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老いて死に瀕した男の見る夢。男は能に関わる家に生まれた。長い人生の最後で黄泉路に向かう夢の中で昔の歌人の姿や貴族や武人の姿を見る。そして自分の幼いころの父や祖父の姿と自分の姿を。その夢の舞台は崩れ落ちそうな墳墓であった。古今、新古今の歌を縦横無尽に使い、ゆっくりと古語を読んでいくと幽玄の世界が表れてくるようだ。
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非常に難解な著書だった。物語りの前半は種々の擬音が次々出て来て楽しく然し内容は難解で半分も理解できなかったかな?途中から三十一文字つまり和歌其れも古い古今和歌集等の歌があったり更には平家物語やら吾妻鏡など古い古い時代の詠が続出、小生も少々やる毎年年賀状には一首詠んでいる。終わりに近づくと能の世界等その舞を見せてくれ味わい深かった。著者の御苦労とこの作品を完成するには多分古文の書籍を百冊以上を読破しているのではないかな!兎に角読み応えのある作品だった!脱帽‼️
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瀕死の状況に陥ったある男の夢なのか回想なのか、いわゆる走馬灯なのか。男の半生と古事記や吾妻鏡、能の世界との往還がめぐる不思議な小説。やはり高村薫さんは難解。
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「土の記」がとても良かったので。
腰を据えて臨んだつもりだったけど、皆さんおっしゃるとおり、古文が…
す、刷り部数が少なそうかな!?
著者インタビューでは、日本語の幅を広げるということで。
知識不足で、理解度は半分くらいかなぁ。
音の響きを聴きたいから、Audibleのほうが良かったのかも。
うだるような暑さの中、ビアガーデンにでも行きたいような気候で読むものではなかった…
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純文学です。語り手が主人公の頭の中に浮かんだあれこれを描写するだけで何も起こらない。この手は苦手ですが文章が美しいのと広範囲かつ深い知識に感服しました。そこまで知識のない私にはイメージできるところが少なく、イメージできたところは素敵だったので自分の知識不足が残念でした。あと、もう少しルビをふってほしかったです。
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これ読み手を選ぶ作品だよね。
ある男の今際の際の走馬灯が物語になっている。そもこの仕掛けに何の情報もなく気付ける読者って多くないと思う。
走馬灯の内容も、定家の意識が混ざり合い古文で表現されたり和歌で表現されたりする。古文や和歌は、読めるけど意味が分からなかったりするので、途中からiPadを横に検索しながら読むことに。まるで『ユリシーズ』みたいだ。
そういえば男が電車の車内でみかける女子高生がジョイスを読んでいる、という件があった。髙村先生のまわりにはジョイスを読む女子高生がいるのだろうか。見たことも聞いたこともないんだけど。 -
声に出して読みたい日本語という感じだった。とても美しい日本語。現代文から古文、古文から現代文と行ったり来たりするのだが、最初ついていけない感じだったが、だんだん慣れてくると、とても自然な感じで、やっぱり同じ日本語の変遷の中にあるんだと実感できる。出典とかがもっとわかって読めたら良かったし、自分なりに調べながら読むとかしたらいいのかもしれないが、とりあえず流れるままに読んでいった。
仮死状態で、自分の人生を振り返る中で、歴史上の人物や古典文学の登場人物が出てくるって、なんかいいなと思う。日本人という大きな流れの中で、日本語を使う人の流れの中で、自分も生きて死んでいくと感じられて、豊かな気持ちになるのではないか。
大変そうな人生だけど、父とのわだかまりが、少しほどけたようで、そこに至るまでの過程が古典の世界をめぐる脳内の旅だったのか。
能は2回しか見たことがないのだが、見てみたくなった。
どこまで理解できたのか怪しいが、私の理解度なりにではあるが、楽しい読書の時間だった。 -
著者の新境地。
元々は硬派な犯罪小説を書いていたのが、近年は仏教への関心が強まり、今作では中世以前の日本古典文学。
死の間際にみる走馬灯の中で、主人公と過去と能と古典文学が混ざり合う。初めて体験する読書体験となった。 -
私にはついていけない世界だった…
著者プロフィール
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