犬とハモニカ

著者 :
  • 新潮社
3.11
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本棚登録 : 1527
感想 : 194
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103808091

作品紹介・あらすじ

絶賛された受賞作に、著者の最新最高の作品を合わせた花束のような短編集! 空港の国際線到着ロビーを舞台に、渦のように生まれるドラマを、軽やかにすくい取り、「人生の意味を感得させる」、「偶然のぬくもりがながく心に残る」などと絶賛された、川端賞受賞作。恋の始まりと終わり、その思いがけなさを鮮やかに描く「寝室」など、美しい文章で、なつかしく色濃い時間を切り取る魅惑の6篇。

感想・レビュー・書評

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  • 甘やかな夢のような日々。
    己の幸せを噛み締め、笑い合い、快楽を貪る。
    けれど夢から覚めると冷たい現実と孤独が待っている。
    あの情熱は何だったのだろうか、と途方に暮れ放心しながらも現実を受け止めるより仕方ない。

    6編の短編は国や時代は異なるけれど、甘美な夢と寂しい現実の落差に思い悩むのはいつの世も何処でも同じ。
    中でも『源氏物語』の『夕顔』の現代語訳が面白い。
    元々内容は知っているけれど、光源氏の女性に対する「お戯れ」を「チューインガムほどの気晴らしにもならない」とする辺り、少々手厳しい。
    江國版光源氏はちょっとあっさりしてるかな。
    嫉妬に狂った六条御息所の江國版も読んでみたい。

  • 六編の短編集。
    江國さんの作品が醸し出す静かでゆったりとした世界観が好き。さまざまな人間の営みのほんの一時期を切り取って、心地よく読ませてくれる文章がいい。
    特に好きだったのは、「犬とハモニカ」。
    国際空港の到着ロビーを行き交う人々の人生を描いた短編。

    ちょっとホラーな雰囲気のものや好みではないものもあったのですが、江國さんの文章だと自然に読めてしまうのが不思議。
    個人的に他作品と比べると合わなくて、物足りなく感じたのが残念だった。

  • 「犬とハモニカ」大小の色とりどりのスーツケース。この表紙絵は本が読み終わってからもう一度眺めてください。なるほど~と(わかった方は)ほくそ笑むことが出来ます。 小説には読者を惹きつける魅力が2タイプ存在すると思っています。ストーリー自体の面白さ、凝った構成などで、読み手をぐいっと引き込むタイプと、物語自体は淡々と流れるようなのだけれども、文章表現が美しかったり、多彩であったり、面白かったり・・言葉の表現力のセンスに魅了される場合です。江國さんは(私見ですが)後者かなと思っています。 テーマはなく、全く関連性のない6つの短編集なのですが、どれもこれも後味の良い味わいを楽しめます。
    表題作の「犬とハモニカ」は国際空港ですれ違う人たちの、ほんの一コマ一瞬の交錯を切り取った瑞々しい短編です。出てくるのはごくごく普通の人たち。大きな事件や突拍子もない展開にはならないけれど、そこにはたしかにドラマがあるのです。
    江國さん自身が「自分にとって短編集を書くということはどこかへ旅するのと似ている」というようなことを述べています。その一章を一文を読むだけで心に羽が生えたように、それぞれの異なる空気感の中へ舞い上がる楽しさ、あなたも味わってみませんか!

  • 全然違う人種や国の人たちの物語。ただ単に、あーそうか、世界にはいろんな人がいていろんな生き方があっていろんな考え方があるんだなと思った。
    先日、空港のセキュリティにならんでいた前のおばさんも彼女の世界があって二度と会うこともないんだなとなんだか切ない。

  • さまざまな国のさまざまな人の悲しみと喜びが交差する国際空港での人間模様を描いた『犬とハモニカ』など6つの短編。
    5年越しに付き合っていた不倫相手と別れた直後の男の心理的変化を書いた『寝室』
    恋に溺れた女性の不安や孤独をみずみずしい感性で書いた『おそ夏のゆうぐれ』
    結婚して5年。公園でピクニックをして妻の手料理を食べるのが習慣になっている一見幸福そうな夫婦の心理的な溝を書いた『ピクニック』
    源氏物語を現代風に訳した『夕顔』。
    同性愛カップルのひと夏のバカンスを繊細かつユーモラス書いた『アレンテージョ』

    どれもじっくりと読み返したくなる味わい深い素敵なお話でした。アレンテージョのなかに出てくるシュールな8人の老女は実在だそうだけど、正体が気になります。

  • 恋人といつも一緒にいたいという理由で指の皮膚を食べた女性
    咀嚼して望みは叶ったけれど
    1人で過ごしている時にいつも恋人の視線を意識してしまうことに疲れを抱くところもある

  • 私の好きな江國さんの世界は
    もうなくなったのか・・・?

    なんか違う。
    なんかちがーう!(泣)


    個人的にはハズレだった(¯―¯٥)

    若干、小川洋子入ってたし。(小川さんの独自な世界観は好きだけど、江國さんには求めていない)

  • 久しぶりの江國香織だった。が、
    全体的にややどんより、もやもやした描写の多い、重めな短編集。
    かといって辛い苦しいという話が多いわけでもなく。
    なんだろう、全編通し印象がぼやんといていて、
    じっと考えるような感じでもなく、さらさらーっと流すように読んでしまった。
    うん。きらいではないけど。
    あー、最近こういう気分じゃないんだなー私。
    …ということがよくわかった。
    もう歳かな…。私もしくは江國香織が…。

  • 普段の自分と違う時間が流れる。
    他とは違う読み進める時間。
    2013.11.24

  • 6つの短編。

    空港にて、それぞれの人達の思い。
    薬剤師の年の離れた恋人との思い出。
    男に依存することのなかった筈が恋をして風景までもが変わった瞬間。
    妻とのピクニック。
    紫式部の源氏物語の現代版。
    ゲイカップルがアレンテージョにて小旅行。

    アレンテージョはすぐにこれは読んだことがある!!
    なんだろうかどこでだろうと思いつつ
    チーズと塩と豆とですでに読んでいたやつだったよすっきり。

    日本にやってきたアリルドが日本人の年齢不詳な童顔っぷりに困惑して
    70歳くらいに見える老婦人も、実は百を超えているのかもとか
    思っているところが面白かった)^o^(

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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