還れぬ家

著者 :
  • 新潮社
3.23
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本棚登録 : 160
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103814054

作品紹介・あらすじ

高校生のとき親に対する反発から家出同然で上京したこともある光二だが、認知症で介護が必要となった父、そして家と、向き合わざるをえなくなる。さらに父の死後、東日本大震災が発生し、家を失った多くの人々を光二は眼のあたりにする…。喪われた家をテーマに著者が新境地を拓いた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 小さい頃の母との関係から、家へ還れぬ主人公。認知症から肺炎をこじらせ病院から生あるうちに還れなかった父。認知症の父と親子、兄弟、嫁の関係、そして父の死後発生した東日本大震災を描いた私小説。題材が題材だけに、気が重く、なかなか読み進められなかったけど、いつかは訪れる親の介護など、いろいろと考えさせられました。

  • ご本人が父を介護し、見送るまでの記録。
    また、生い立ちから家族関係まで。
    記録的意味合いが強いのか、やや尺が長く、小説としては疲れた。
    けれど、これが現実だと思えば、そういうものかも。
    家族でもささいなきっかけで疎遠になるし、誰がどう見送るかは分からない。
    母、柚子さんと父の関わり方、再婚である作者の奥様の寄り添い、女性は強く、たくましい。

  • 東日本大震災の事も細かく知れた。
    親の介護と看取りの部分では、柚子さんの存在が大きいなぁ どれだけ心強いことか、羨ましい。

    回想の部分が多いためなのか説明を受けている感じで私には読み辛かった。

  • 私小説家、佐伯一麦氏が語る実父の介護から死に至るまでの出来事と、その後の東日本大震災のこと。

    連載小説形式で家族の恥部とも言えるような事実や葛藤を描く。自身の離婚と今も続くゴタゴタ、両親に近づこうとしない兄と姉、記憶も体も衰えていく父のことなど。私小説家として、ここまで書かなくちゃならないのか。そんな覚悟、プライドを感じさせる作品だ。

    そして、父の死の2年後、連載の途中に起こった大震災。著者の記憶や出来事の順番が混乱しているが、それも含めて「私」の一部として作者は記し続ける。

    それにしても父親の認知症が進んでいく過程は読んでいてつらい。

  • 文学

  • 幼い時の母の一言。「お前なんか、本当は生まれるはずじゃなかったんだ」それが付きまとい、母と一緒にいるとストレスがあり、鬱状態になってしまう。夢の中で母が父が兄が追いかけてくる。そんな光二は高校を終えると逃げ出すように故郷を出てきた。電気工をやったり色々な職業につきながら文章を書いてきた。新人賞をもらって作家の道を歩みだしたころに故郷に家を建てた。しかしそのころから妻とはうまく行かず、とうとう離婚し今は再婚して柚子と二人暮らしだ。そんな頃、父が認知症のようだと言われ、その介護に追われだした。その頃を始めとして同時並行的に光二の半生を連載小説に書き出した。
    認知症の父の様子。人事ではない。そうだそうだと自分の母の様子を思い出した。

  • 一言で言えば、すごく現実的な小説。
    凝った設定や登場人物などは一切登場せず、現実感を伴った状態で話は進行していく。
    認知症や介護という問題に実際に直面した時に、どのような行動をとればいいのかなど、考えさせられる小説。
    でも、読んでいて面白いかと聞かれれば、面白くない。

  • 作者の日常を書いてるが表現力が凄い。常に作者の立ち位置原点に、一ミリの狂いやブレがないのがこの表現をうむのかと思う。

  • <閲覧スタッフより>
    「家へ還れない個人的な思いをずっと綴ってきた私にとって、外からの力によって家へ戻ることが有無を言わさず不可能になった者たちの姿を前にすると、我が身のことだけにかまけてきたようで自省させられるものがありました」。2009年4月より連載されてきた私小説が震災を挟んで変化してゆく。

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    所在記号:913.6||サエ
    資料番号:10225378
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  • ますます円熟。震災の経験を真正面から受け止めて作品に反映させる姿勢に好感。

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著者プロフィール

1959年、宮城県生まれ。84年、「木を接ぐ」により海燕新人文学賞、91年、「ア・ルース・ボーイ」で三島由紀夫賞、「遠き山に日は落ちて」で木山捷平文学賞、『鉄塔家族』で大佛次郎賞、『山海記』で芸術選奨・文部科学大臣賞文学部門を受賞。ノンフィクションに『アスベストス』、エッセイに『Nさんの机で ものをめぐる文学的自叙伝』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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