王国 (その1)

  • 新潮社 (2002年8月22日発売)
3.69
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  • 本 ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103834038

感想・レビュー・書評

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  • 学校の先生にオススメされて読んだ本。
    「言葉では表せない何か」がそこにあって、それを大切にしているんだなと思った。それは全部五感で感じるもの。そしておばあちゃんの教えみたいなのが全部心にしみて、ばななさん本人からの助言みたいだったな。続きがあるみたいだからもっと読みたい。

  • 私こと、雫石と楓の物語。
    私と楓の間には、恋愛はない。Xファイルのモルダーとスカリーのような間柄が一番しっくりくる。
    父と母はおらず、ずっとおばあちゃんと山で暮らしてきた。私が十八になった時、私たちは山から離れて別々で暮らすこととなった。都会で一人暮らしを始めた私は、占い師の楓を紹介してもらい、盲目の楓のアシスタントとして働くこととなった。



    よしもとばななさんのお話は、あらすじを考えて書き出すと途端につまらなそうな話になってしまいます。
    よしもとばななさんの書く文章は、人の感情という曖昧で抽象的なものを叙情的に描いている部分が圧倒的に多く、その曖昧な部分を誰かに紹介するという形で文章にする力が私にはないからだと思います。
    ダイレクトに胸を打たれるような文章で、一人称で語られている内にだんだんと主人公の雫石に感情移入して寄り添うような気持ちで読み進めるようになりました。

    何作品か読んでいますが、とても好みの分かれる作家さんだと思います。そう難しくない文章と表現でサクサク読めますが、それ故に、繊細に揺れ動く感情表現が刺さらないまま読み終わると、結局何が言いたい話なんだ?と思ってしまいそうです。
    きっと、何かを言いたい話なのではなくて、ただ居なさそうで、でももしかしたら居るかもしれない人の、すごく限られた期間の心の揺れ動きを垣間見させてもらっている、ただそれだけなのだろうと私は思います。
    感情という、極めて抽象的で曖昧なものをこんなに言葉に顕すことができて、お話の主流がそれでここまで書いて読ませることができる、それがすごいなと思います。

  • ばななさんは、「目に見えないけれど大切なこと」について、様々に表現を変えながらこの本に記しているように感じた。

    この1巻目は、山の世界と、都会の人々が交わることで、都会の人々の考え方や暮らし方、時間の流れ方のおかしさなどを浮き彫りにしている。

    主人公「雫石」が語る分かりやすい言葉なので、誰かの心の声を聞いているような感じでこちらに届く。押し付けでも批判でもなく、都会に生きる私にも、ああその通りだなと思えることがたくさんあった。

    例えば、
    ”恋愛とか病気の治療と同じで、ものごとは正しい時間をかけて、順当な道をたどって変えていかなくてはぜったいに収まるところに落ち着くことはない。人だけが、それをはしょったり急いだりする。欲のために。”

    都会にいるとつい忘れてしまいそうな、シンプルだけど生命を輝かせる自然界の大切なルールが、しっかりと記されていた。

  • その2に続く小説なので、たくさん感想は書けないけれど…
    楓(弱視の霊脳力的占い師)を見てると、知り合いの占い師、ミナコさんを思い出す。重なるところが多すぎて。

    人々を癒すお茶を作る祖母と山で暮らしていた雫石という女の子が、山を降りて都会で暮らし始め、恋愛感情とは違うもので占い師の楓という男と惹かれ合い、彼の元でアシスタントとして働き始める。その日々のあれこれ。

    スピリチュアルの世界って、信じる・信じないで分かれるし、意見が違う者同士で解り合うのも難しい。
    私は自分にはそういう力はないし、幽霊が見えたこともないけれど、そういう力を持つ人はいると思う。
    というか、そういう人を目の前にすると、認めざるを得ない感覚が生まれる。
    それを信じすぎて傾倒することはなくても、そういう力自体はあると思う。そういう感じ。

    まさに、ばななワールド。
    とりあえず、サボテンが欲しくなっている私です。

  • 表現力がすごい!

  • 友人たちとの伊豆旅行の予定が決まったときに、「伊豆シャボテン公園に行きたい」と提案した理由はこの本のことを覚えていたからだった。10年近く前に読んだ本の内容なんて全然覚えていなかったけど、シャボテン公園の存在だけはやけに印象に残っていた。公園に足を踏み入れて、変な施設やオブジェが点在する敷地内を歩き回ってもサボテンの大きな温室に入っても、「『王国』に出てくるシャボテン公園って、こんな感じだったっけ?」と、全然ぴんとこなかった。もっとだだっ広くて緑がたくさんあって、爽やかな風が吹いていて、芝生が生えた小さな丘の上に温室があったんじゃなかったっけ。なんかちょっと違う気がしたけど、初めて『王国』を読んだときからいつか行きたいとずっと思っていた場所でサボテンを見ることができたので、それだけでじゅうぶん満足した。
    10年以上ぶりに読み返してみると、そこに書かれているシャボテン公園は私が旅行で行った伊豆シャボテン公園そのものだった。たいして爽やかでもないし芝生の丘なんてないし、変なオブジェのことだってしっかり描かれている。こんなに実物と一致しているのに、どうして違うような気がしたんだろう? と思ったけど、たぶんそれは時間が経つにつれて私の中で伊豆シャボテン公園がどんどん美化されていったからだろうという結論に至った。伊豆シャボテン公園に対する期待値が上がりすぎていたのだ。勝手に期待して勝手になんか違うとか言ってごめんな、伊豆シャボテン公園。

    【読んだ目的・理由】ずっとほしかったから
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆5.0

  • ひさしぶりによしもとばななを読んだ。目的はその3の台湾編。はじめてかと思ったけど、これ過去に読んだことあるわ。とデジャブをかんじさせるのがよしもとばななだと思っている。でもこれは本当に読んだことがある。敏感すぎる人々の日常。うらやましくもあり、おそろしくもある。私は敏感な人が苦手。心がみすかされるような気がするから。でもそう思っていることもみすかされそうで、実は仲良くなれそうな気がする。そんなことを想いながら読みました。私も分かり合えるサボテンのような存在がほしい。心を磨かなくちゃね。ととりとめのない感想を書きなぐってしまったわ。その2も読むわ。
    (201511)

  • ずっと読みたかった本。

    やわらかい。
    まぶしくて透明できれいで、眼を細めてしまう。

  • 予想以上にハマりにハマった…早く続き…続きを…

  • 図書館の本 九重君のおすすめ

    出版社/著者からの内容紹介
    王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―
    目に見えない「大きなもの」に包まれ、守られて生きる女の子の物語。
    それはあなたの物語。待望の書き下ろし。
    最高のもの探し続けなさい。
    そして謙虚でいなさい。
    憎しみはあなたの細胞まで傷つけてしまうから…
    小さな山小屋におばあちゃんと暮らしていた。おばあちゃんが日本を離れることになり、一人で都会へ移り住んだ。
    不思議な男性占い師、そして妻のいる男との恋。人生が静かに動きだす。
    彼女の、美しく、はなかい魂のゆくえ。

    そうか、自分の中を通り抜けていくものに身を任せればいいのか。
    なぜ九重君がこの本を薦めてくれたのかわからないけれど、今の私に必要なことがたくさんたくさん書かれていた。
    雫石の静かだけれど情熱的な生き方がとてもいとおしい。
    続きがとても読みたい本です。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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