王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―

  • 新潮社
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本棚登録 : 1383
レビュー : 202
  • Amazon.co.jp ・本 (134ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103834038

感想・レビュー・書評

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  • 初めてこの本を読んだときは、2巻がでるのをすごく楽しみにしてたんだけど、1巻だけでもいい(笑)
    出てくる人たちがみんな好きです。いい話。

  • 『自分が何かしている気になったときがおしまいのときだ、』

    『病気の人の謙虚な気持ちに普段接している私たちからしたら、健康な人がカネカネとなんでも金に換算したがるあの雰囲気は本当に悪い冗談みたいに思えた。』

    「憎むことにエネルギーを無駄遣いしてはいけない。最高のものを探し続けなさい。流れに身をまかせて、謙虚でいなさい。そして、山に教わったことを大切にして、いつでも人々を助けなさい。憎しみは、無差別に雫石の細胞までも傷つけてしまう。」

    「この場合さほど悪い人はいないはずなのにめぐりめぐってこんなことが起きて、いちばん小さな命が犠牲になったりするんだ。」

    『私が弱ってるときは体ががんばってくれているし、体が弱ったら私が知恵で解決してあげられる。』

    『楽しみのために存在するものに、楽しまれてしまっては、それはもう何かの奴隷になっているということです。』

    『もうすっかり、体の具合が悪いのに、足をいためているのに、どうしても山を、自分の足でなくてはいやだと登って会いにくる人たちを。~でも、たいていの場合、それは何かもっと大きなことから、自分の大変さをたてにして逃げているだけなのです。』

    『お互いが並列の立場で、普通に、陽気に力を出し合っててそこに存在するとき、サボテンはもっとも喜んでよく育ちます。生き物はそういう意味でみんなエゴイストで、自分の心地良いことが好きなのですが、それが本当に助け合えるということなのかもしれないと思う時があります。あれこれ考えてやることはたいてい嘘なのです。まず、自分がその新しい環境をもてあまし、退屈して、淋しがっていることを認めることです。~とにかくひとつのことをやるときにはそのことだけをやること。入ってくる情報の量を制限して、脳を休ませること。TVは最高においしいチョコレートだと思って、大切に観ること。せっかく縁があってやってきてくれたTVを、嫌いにならないこと、敵だと思う力と、それに惹きつけられる力は、全く同じものなのです。そして何よりも、罪悪感を持たないでください。弱い自分に、ちょっとしたことで変化してしまった自分に。誰でも、そうなのです。あなただけきれいでいることはできません。反省して生活を変えるのは大いにきっこうですが、罪悪感は、その、退屈な淋しさにとっての、おいしい餌のようなものです。』

    『みんな急いでいる~それは、エネルギーはすぐに充電できるという幻想を持っているからだろう、と思えた。そのことによって、人生の主導権を時間や周囲に与えてしまっている…そんな奇妙な世界があるみたいだ。』

    『なるべく違うことをすること、それが大人になるということなのかもしれない……なんて思っていたのだから、私も少しおかしかったのだと思う。~ほんとうはさほどしたくないことに流されるときは、口数が多くなって、全身がそわそわして、おなかの底に小さく重い塊が生じる。』

    「ああいう人は、無報酬っていうけど、結局、こっちがお金もらいたいくらい手がかかるんだよね、それに、いつか必ずもっと大きなものをほしがるんだよね。たりないたりない、ほしいほしいって気持ちで来てるからね。」

    『でも、からかうことはしなかったし、ただ線をひいているだけだった。人手は足りています、自分の場所にいって、がんばってね、そういう態度だった。なによりも、そこには愛があった。』

    「生きてるってことは、そんなこと。いいことやきれいなことや真っ白いことばっかりじゃない。でも、それぞれ生きてる。自分は自分のよしとすることを、静かに、もくもくとするしかないし、自分のよしとしないことが起きたら、静かに離れればいい。」

    『体を動かして、血をめぐらせて、やれば結果のでる簡単なことをして、やりすごすしかないのだということを、私はよく知っていた。たとえ目の前が暗くても、あそこまで草をむしろう、みたいなことはできるのだ。』

    『命があるから、生きているのであって、なにかを成すために生きているのではない、私がそれを本気で気づいて言いきるには、キノのたたずまいが必要だったのだ。』

  • 心のお薬みたいな言葉たちだった。さらっと読めて、前向きというか暖かい、優しい気持ちになれる。

  • ふっと読みたくなって図書館から持って帰ってきました。
    多肉植物が大好きになった今、
    刊行当初よりもイメージが鮮明になったと思う。
    とくに雫石(オブツーサ)は大好きです。

    四巻まで読もう。

  • これも好きだなぁ

  • これは、守られている女の子の生き方の物語だ。
    身内の愛情に、そして目に見えない存在に、それから育った土地のエネルギーに、今まで与えた分の感謝の気持ちに……何重にも、虹の輪のように、私のまわりには愛情の輪がある。
    どこまでもいつまでも大きなものに守られて生きていく、たとえたまにそれを忘れて傲慢な気持ちになることがあっても、ひとりで生きているような気持ちで暴走しても、それさえも包んでいる何かがある。本人は孤独を感じたり悲しみや試練に大騒ぎしてじたばたといろいろな感情を味わっているが、大きな大きな目で見れば、実はいつでも守られている。





    「でも、旅立ちの前なのに大丈夫なの?そんな新しいことをはじめて。」
    「大丈夫だよ。やりたいと思ったときが、時間のある時なんだ。そういうのをしなくなったら、時間の奴隷になっちゃうよ。やりたいと思ったときに、ぱっと手を出さないと届かなくなることがあるんだ。……それに、どうしてかわからないけれど、今、サボテンが俺と交流してもいいと思っている気がする。うちのリビングにいるところがさっと浮かんできたんだ。そういうときは不思議なもので、どんなに手間がかかっても自然にことが運ぶんだ。



    *・*・*・

    主人公は、私なんかよりよっぽど孤独なのに、自分は守られている女の子だという。そして気づかせてくれる、私もそうだってことに。
    将来のこととか考えるとあまりの孤独感になにもかもいやになることもあるけど、この文章読んだら、今まで生きてきた、これだけで、もう一生孤独になることはないのかなって思えた。

    よしもとばななさんと三砂先生が交流あるのもわかる気がするなー、って感じの本だった。わたしもサボテン育てようかなー。万が一一人暮らしすることになったら、絶対育てる!
    昔枯らしちゃったサボテン、かわいそうだったな。入院中のおばあちゃん、花咲くサボテンを大切に育ててたな。うちの前の家の出窓に、カニサボテンがあったな。

  • よしもとばななさん、久し振り。
    スローな出だしって感じ。

  • 図書館

  • 雰囲気はとても好きなのだけど、個人的には慣れない言葉使いというか文章で、地に足がつかない読み心地。だけどドキッとする文章が必ずあるのが印象的。

  • 前から、いつか読もうと思っていた、よしもとばななの『王国』シリーズ第1巻。

    山奥で、薬草茶を作る祖母のアシスタントをしながら暮らす「雫石」(サボテンからとった名前)。
    あるとき山を下り、祖母と別々に生きていくことになり、目の不自由な占い師「楓」のもとで働きはじめる。
    慣れない都会暮らしや、汚れた心の持ち主に疲弊したりしながらも、
    「自分の体と心と魂、それを持ってさえいれば、欠けるものはいつでもなにひとつなくて、どこにいようと同じ分量の何かがちゃんと目の前にあるようなしくみになっている」(p14)ことに気づいていく。


    「そうだ、体が生きているのだから、私も生きていこうと思った。
    私が弱っているときは体ががんばってくれているし、体が弱ったら私が智恵で解決してあげられる。今は、私の心が細く弱くなっているから、体はうどん一杯でこんなにも一生懸命働いては励ましてくれているのだ。」(p72)

    山を愛し、植物と心を触れ合わせる雫石に、生まれついての都会っ子である私は(ちなみに植物はすぐ枯らす)ほとんど何も共感できないけれど、この一文はだけは彼女の気持ちがよく分かった。
    体は私のものではない、という考えが私にはあって、私の心で起こる苛立ちや不安を体を痛めつけることで解決しようとしてはいけない、と思っている。体の方は、無心で(そりゃそうだが)私という生き物を生かそうと毎秒働き続けてくれているのだから、その無償の行為を無駄にしてはいけないし、無碍にしてはいけない。

    燃えてしまったサボテンも、小さなかけらからまた命を吹き返す。
    心がどんなに疲れてしまっても、人はまた歩き出すことができる。
    そのきっかけは、人とのつながりだったり、思わず触れた優しさだったり、体に沁み入った一杯のうどんだったりする。

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著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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