脇役スタンド・バイ・ミー

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 141
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103841050

作品紹介・あらすじ

鳥になりたいと祈る老女。彼女に何をしてあげられるだろうか…穏やかに暮らす"主役"の生活に忍びこむ、ミステリアスな"脇役"たち。騒音とともに消えた女、真夜中に廃屋でひとり眠る少女、前世を占えると告げる美女-すべての謎が解決したとき、あなたの胸に浮かび上がる"脇役"の本当の姿とは?いつもは主人公のあなたも、他人の人生では、脇役。傍らに立ち、手を差し伸べるか、あるいは-。再読必至の連作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • もっとほのぼのした話かと思っていたのに
    思っていた以上に、ミステリーやサスペンス要素の強いお話でした。

    初っ端の「鳥類憧憬」がどうにも後味が悪くて、なんだかなーと思ったけど
    お次のポリアンナの「幸せ探し」とジンメルの処世術、麻雀の師の「迷ったらツモ切り」の三つに支えられている花梨の「迷ったときは」
    音でしか知らない二階の住人を助ける「聴覚の逆襲」
    お節介で身を滅ぼしそうになっても、無視できないパズル作楢本の「裏土間」
    「定年退職者再雇用制度」の対象者が殺害され、人事部的視点で調査をしてしまう飯田の「人事マン」
    この4つはなかなかにおもしろかった。
    それぞれの主人公が、直接被害者や加害者や事件そのものとは関わりのない脇役なんだけど、思いもよらぬ形で加担してたり謎に迫ってしまったり。
    刑事脇田も徐々に存在感を増してきて、タイトルになるほどねーと感心しました。

    最後の前世占いをする女性の手伝いをするうちに巻き込まれてしまう「前世の因縁」はちょっと雰囲気違うのですが、それにつづく最終話の「脇役の不在」になんだか拍子抜け。
    いきなりファンタジーなオチいらなくない?
    なんか急に変な話になってしまったなぁ。
    話自体は面白かったので、エピローグが蛇足だったということで。

  • とある刑事を中心に、市民の姿が描かれる。

    ラストを読んでもあまり爽快感が無いのは何故だろうか。

  • 1話1話は勧善懲悪ですっきりします。
    心情描写のしっかりした日常の謎(いや殺人事件ありますけど描写はソフトなので)
    ファンタジー読みたいけど、こういうミステリーもおもしろいです。

  • なんだか変だ。
    これって犯罪なのでは?
    でもこんなこと言って警察で信じてくれるだろうか?

    そんな時にふっと現れて助けてくれる警察の脇田さん。この短編集では、みんな脇田さんに助けられます。

    しかし、最後の作品で急展開。
    脇田さんは2年前に死んでいた。

    読後に不思議な感じが残ります。

  • 6話の短編集が最後につながるというか。同じ「脇田さん」という警官が登場するので、同じ町の出来事か、と分かるんだけど、その脇田さんの存在が最後に鍵となるという。前読んだアンソロジーに入ってたので、借りてみたけど面白かった。最後の脇田さんの締め方があんまり好きじゃないけど。1編1編は面白かった。ほんとにこういう警察官がいてほしいと思う。

  • 第一印象は、ふりがなが多い。
    第一話のタイトル「鳥類憧憬」からして、これに「しょうけい」とふりがなをつけた意図は何か。
    ページをめくると最初のページから、「林檎」(りんご)、「頬」(ほお)、「喉」(のど)、「襞」(ひだ)、「布団」(ふとん)、「些細」(ささい)と、軒並みだ。
    もつとすごいのもある。
    「女房の田舎から送ってきた」の「女房」には(うちの)、「申告」(はくじょう)、「事情説明」(いいわけ)などなど、読みにくくてしやうがない。
    作者は…あらら、儂より4つ年下で、鳥大農学部卒か。
    設定といふかアイデアは面白いと思ふが、とにかくふりがながうるさい。読者をバカにしとんのか(笑)。

  •  普段平和な町を中心とした、事件とは一歩離れた目線からのストーリー展開。各章、脇役(?)が主役で面白かった。
     どの章でも最終的には事件(問題)解決に関わっている人物が同じで、「あぁここにも登場したな」と思いながら読みました。そして迎えた最終話には、驚かされました。なるほど映画「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とします。

     少~し取ってつけた感は否めないのですが、その締めくくり方は爽やかでした。

  • 連作ミステリ短編集。
    小都市に住む小市民たちの事件。
    最後にタイトルの意味がわかる。そういう意味では予想外の結末だった。
    (図書館)

  • オムニバス形式で進む話。世界は同じなので、とある「一人の刑事」がキーワードになっています。最終的に「それでいいんじゃないかな」って気軽に終わるのですが、私もそれでいいんじゃないかなって思います。読了したときのモヤモヤ感が生まれないっていうのはいいですよね。

  • 以前住んでいたアパートの近くで、夜遅くに揉め事があった。複数の男の恫喝する声と暴力を振るっているかのような物音、そして「誰か110番してください!」という叫び声が響いた。
    私はものすごく怖くて、心臓がドキドキした。様子を伺おうにも建物が邪魔で何も見えない。声だけが聞こえてくるのだ。かなり迷ったけれども、手遅れになっても困ると思い、意を決して110番通報した。
    こんな曖昧なことで電話して、警察の人に怒られないだろうかと心配したが、幸いそのとき電話に出た人は丁寧に応対してくれたし、数分後にはパトカーのサイレンが聞こえてきた。揉め事がどうなったのかはわからない。

    こんな些細な体験を思い出したのは、本作で図らずも犯罪についてのなんらかの情報を持ってしまった人々の様子を読んだからである。
    私が聞いたのは叫び声だけだったが、それでも実際に警察に連絡するには相当の心理的抵抗があった。
    本作では、殺人に関わるなんらかの情報が取り扱われているのだ。その葛藤たるや、比べ物にならないだろうと思う。
    それでも、心を決めて警察へ出向いて行く。そこで、「脇田」と名乗る警官が、実に親身になって話を聞いてくれるのだ。自分が持っていった情報がどれくらい捜査の役に立つかはわからないし、警察はいちいち民間人に事後報告などしないから、自分の行為の結末を知ることはできない。せいぜい、犯人逮捕の報道を目にするくらいだろう。でも、警察の人間がきちんと話を受け止めてくれた、という思いは残る。
    まさに市民が警察に期待することとはそういうたぐいのことだろう。

    ほのぼのした思いで読み進めていったのだが、第六話はちょっと奇妙な感じがした。
    「ケン兄ちゃん」という人物の登場があまりに唐突だったからだ。さらには、やけに熱く秋本水音に語りかけるのである。言ってることは正論だし、全編を貫く思いでもあるから、間違っているわけではないけれども、あまりにも突然の熱弁である。そこだけトーンが違うというか、主人公とのつながりが今ひとつよくわからない。
    ここから最終話へとつながっていくから、重要な役割を担っていることは確かだが、どうして主人公の純平じゃないんだろう。なんだか腑に落ちない展開だった。
    最終話は、すべてのエピソードをきれいに片付けた感じ。もしかするとこの物語は、連作ミステリーを装った、警察への切ない要望だったのかもしれない、とふと思った。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常のひだを的確に切り取るミステリーなど、様々な世界を展開している。その他の著作に『瞳の中の大河』『黄金の王 白銀の王』『あやまち』『タソガレ』『ディーセント・ワーク・ガーディアン』『猫が足りない』「ソナンと空人」シリーズなど多数。

「2023年 『旅する通り雨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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