脇役: 慶次郎覚書

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 41
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103892106

作品紹介・あらすじ

「慶次郎縁側日記」で、主役を支える渋い脇役たち。今回は彼らが主役の八幕物、はじまりはじまり。

感想・レビュー・書評

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  • 〈慶次郎縁側日記〉シリーズ番外編。タイトル通りシリーズの脇役たちが主人公となった7編と慶次郎視点の話1編が収録。

    「一枚看板」
    若き日の慶次郎の思い出。
    寮番仲間の佐七は慶次郎を『一枚看板』と皮肉って言うが、慶次郎もかつては立役者ではなかった。そしてその若き慶次郎に『一枚看板』になれない女義太夫が相談をする。
    このころからやはり慶次郎は慶次郎だったのだなと分かる。

    「辰吉」
    辰吉が付き合っているおぶんは訳あり。慶次郎の娘・三千代の死の原因を作った男の娘だからだ。そのせいか、おぶんは夫婦になることに消極的、というより子供を作ることを恐れているようだ。
    辰吉は相変わらずモテている。親子ほど年の違うおぶんに惚れられ、長年思いを寄せられている女もいる。
    この女・おすまがなんともいじらしく恰好良い。心中穏やかでなくてもおぶん同様なかなか先に進めない辰吉の背中をドンと押すのが粋。

    「吉次」
    いつもと違ってずいぶん感傷的になっている吉次。妹のおきわがついに懐妊したことで、自分でも思っていなかったほどに動揺している。
    家を飛び出した先で出会った女は夢か幻か。だが結局吉次が帰る場所は決まっている。
    『情けないことに近頃の吉次は欲がなくなった』という驚きの変化。これで蝮の異名は返上となるのか、だがそれはちょっと面白くないような。

    「佐七」
    佐七の話はいつも苦しくて切ない。不器用で不愛想で、でも淋しがり屋。慶次郎という相棒が出来て良かったと思う反面、慶次郎という眩し過ぎる存在は時に辛くなる時もあるのだろうとも思う。
    佐七が少年だったころに出会った半次という少年はやはり佐七には眩しいような陽気な子で、だが何故か佐七を慕っている。佐七は自身では気付いていないのかも知れないが、そういう人を惹きつける特性があるのかも。

    「皐月」
    第三者から見れば仲睦まじい夫婦である晃之助と皐月。だが二人の間には三千代という動かしがたい存在がある。そのことを皐月自身はどう捉えているのかということがよく分かって興味深い話だった。
    元々皐月は晃之助に片思いをしていたのだが、それは実らぬ恋のはずだった。だが三千代の不幸な事件があって皐月は晃之助の妻となった。皐月は晃之助にも慶次郎にも遠慮があり、それは二人も同様だった。それが今回の話を機に少し変わったようで嬉しい。

    「太兵衛」
    息子の行く先を心配して慶次郎に相談するほど子煩悩で穏やかな岡っ引という印象だった太兵衛だが、その過去はやはり岡っ引らしく暗かった。自棄を起こしても仕方ないくらいの大変な半生、だがそれをギリギリ踏みとどめてくれたのが妻のおさとと島中賢吾だった。
    だが今や立派な親分であり息子たちも立派に育って頼もしい。

    「弥五」
    辰吉の下で働く弥五が元はおぼっちゃまだったとは。人が好すぎてのんびり屋だった彼がなぜ下っ引きにと思えばここにも意外な人生があった。
    そんな彼のおぼっちゃま時代を知る女が現れて相談事を持ち掛ける。最後の弥五はやはり意地っ張りで格好良い。

    「賢吾」
    太兵衛同様、家族思いというイメージの島中賢吾。実は先祖が北条氏康の側近だったという家柄。勇猛だったというご先祖様にあやかり、今年こそは『「人のいい島中さん」で終りたくない』という思いを持って正月を過ごしている賢吾だが、やっぱりそう簡単には変わらない。捌き方は慶次郎に似ているような。

    ※シリーズ作品一覧
    全てレビュー登録あり
    ①「傷」
    ②「再会」
    ③「おひで」
    ④「峠」
    ⑤「蜩」
    ⑥「隅田川」
    ⑦「脇役 慶次郎覚書」番外編 

  • 2008.07.09 主脇なく、「随所に主となれば 立所皆真なり」

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著者プロフィール

作家

「2017年 『化土記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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