朦朧戦記

著者 :
  • 新潮社
3.25
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本棚登録 : 39
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103915041

作品紹介・あらすじ

長生きするだけが能じゃない! 超高齢化社会に活を入れる「老楽」小説。 思い残さず、生きようじゃないか。ホームで無為な余生をおくる老人たちがある日突然、覚醒した。退屈しのぎに始めたクイズ大会が次第にエスカレート。あの頃の恋愛、戦争、革命を夢見て、性も闘争本能も解放して突っ走る彼らを、もはや誰も止められない。どうなる日本……ユーモア小説の雄、破茶滅茶な展開で加齢なる復活!?

感想・レビュー・書評

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  • いやー、さすがの清水節だなぁ。楽しめたw

    清水さんご自身がガチで団塊世代だからこそ書ける生々しさと、ぶっとんだ虚構のバランスがちょうどいい作品だと、、、団塊Jr.世代の末端に居る私は感じるわけだ:p

  • 意欲は買う。「年をとる」ということに対する、ネガもポジも描こうという、その試みは斬新だ。

    でも、グループホームに入る老人たちと、団塊の世代をごっちゃにしたのはいかにももったいない。
    これではストーリーも場面展開も分散してしまう。片方に絞り、それぞれの闘争を描いてほしかった。感情移入もしにくい。

    また、タイトルにもなっている南の島での「戦争ごっこ」も、死人まで出ているのに、死者の人生に対する尊厳も重みも感じられない。ゲームのキャラが一人倒されただけのような「軽さ」だ。
    終盤の全共闘世代の闘争にしても、唐突、かつ都合よく物事が進んでいき、現実味がまったくない。ここでも死人が出るが、かなりな葛藤があったはずの彼の心境も、うわべだけ流されておしまいだ。

    もしかしたら、それが作者の狙いなのかもしれない。
    舞台の大道具のようなペラペラの背景の前で、演技力のない俳優たちがぎこちなく演技する。
    「生き生きとした老人」も「あの頃の充実感を持って生きる全共闘世代」も、すべては絵に描いた餅にすぎないんだよ、と言いたいのだとしたら、清水義範おそるべし、である。

  • グループホームあさがおの7名の老人達がクイズ大会、同窓会、合コンなどで溌剌と活動する第1部も面白かったが、第2部で島崎彦六が主催する秘密倶楽部が楽しい.団塊全共闘、団塊アゲイン党と日本防衛義勇軍の戦いも楽しめた.

  • 52歳から92歳までの物語~菊地源吾が自宅を改装したグループホーム・あさがおには,書道が得意な84歳の江崎米子,若手で若い女ような75歳の斉藤島子,好色な81歳三浦丞太郎,元土建屋の78歳の吉岡静夫,新撰組研究の田所聡一80歳,鉤針編みが得意な80歳の桜井みよし,82歳で腰巻きを盗られたと騒ぐ沢村潔子の7人が生活している。近くのホーム木耳と榎町の敬老会館でクイズ合戦をやることなったが,笑いモノにされるのはまっぴらだと考えた年寄りは滅茶苦茶な答を連発して,主催者を慌てさせたが,年寄りは生き生きし始めた。源吾の一廻り上の兄・正一は,4年振りの同窓会を開いて,夜の町に俄カップルが消えていくのを見ていた。老人ホームでは木耳と合コンを企画し,敬老会館では大乱交が演じられた。田所が甥から誘われた秘密クラブは,グアムから船で二日進んだ孤島で,38式を担いで米軍と本当の戦闘を行うことだった。米軍の弾丸が田所の大学時代の友人の命を奪ったが,楽しそうな死に顔に安心した。正一の友人・諸橋は都庁の後輩から都議補選に出馬し,団塊世代の生活を守ろうとどぶ板で闘い,当選すると,参議院議員が寄ってきて,団塊アゲイン党の党首に収まった。同じく小学校の友人で,学生時代は全共闘に打ち込んでいた小西博史は胃ガン・肺ガンで余命幾ばくもない人生,テロで闘うべきだと,攻撃目標はアゲイン党本部,小西の務めていたIT企業,胃ガンの手術をした大学病院とした。しかし,大学病院には,製薬会社の創業者で秘密倶楽部を主催した島崎彦六が組織した日本防衛義勇軍が待ちかまえており,返り討ちにあった。全共闘の小さなアジトは手榴弾で攻撃されたが,小西は身体を投げ出して,仲間の命を救ったのだった~まあ,面白いんだけど,中身がすかすかで,薄いよなぁ。もう一度,再構成したら良いんじゃないだろうか。老人だって生きていて枯れてはいないんだというのは伝わるけど,書き下ろしだから,推敲が十分じゃないかも知れない。雑誌に掲載されて,単行本にするときに,再構成して,加筆すれば,もうちょっと現実的な話になるだろうに

  • 面白かったです。最初はただの色ボケ老人の小説かと思いきや、最後はこうなるのか〜と感心しました。老後は色々やることがあって楽しそうです。老人ホーム同士の交流、海外旅行、恋の予感の同窓会、合コン、戦争ごっこ、選挙戦に出馬、テロ行為。年をとることが楽しみになる老人小説でした。

  • クイズ「5000円札に描かれている明治の女流作家は」との問いに「松葉崩し」「帆かけ茶臼」「仏壇返し」・・・・・・答えているのは80前後の爺さん婆さん。皆、少し認知症が入っている。第一章からいきなり腹を抱えて笑わせてもらった。80歳前後の高齢者であっても異性と知り合い感情がゆらめけば、それがいい刺激になって元気も湧いてくる。恋の喜びの先にあるのがセックス。それがあるから女とつきあう。これが動物としての人間のまっとうな欲望。合コンを強姦と聞き違うのには笑いを通り越して驚きさえも。合コンは爺にも婆にも艶めいた風を送り込む。皺だらけの爺と婆との妖しくも生々しい夜がゆっくりとふけていく。年をとるというのは歯止めがなくなるということ。日常生活にはない刺激を求める欲望が、ついには戦死者さえ出す遊戯へと老人たちを駆り立てる。老人だって戦うべき時にはやる。気づけば日本防衛義勇軍。何のこっちゃ。荒唐無稽と一蹴できないところに、この物語の底知れない怖さがある。

  • 面白いと思いながら読み進めていくと…
    途中からメチャクチャになっていきました。

  • 団塊世代への応援小説⁉️

  • +++
    長生きするだけが能じゃない! 超高齢化社会に活を入れる「老楽」小説。 思い残さず、生きようじゃないか。 ホームで無為な余生をおくる老人たちがある日突然、覚醒した。退屈しのぎに始めたクイズ大会が次第にエスカレート。あの頃の恋愛、戦争、革命を夢見て、性も闘争本能も解放して突っ走る彼らを、もはや誰も止められない。どうなる日本……ユーモア小説の雄、破茶滅茶な展開で加齢なる復活!?
    +++

    復活お待ちしていました。しかもこんな加齢なる復活、笑っちゃいます。だがしかし、ただ無条件に笑ってばかりいられない超高齢化社会の現実の一端を見せられたようにも思え、お年寄り、意気軒昂で結構、と思う反面、やるせなく切ない思いに苛まれるのも事実なのである。可笑しい中にも、いささかひりっとする一冊でもある。

  • ☆☆☆3つ
    清水義範せんせー、しばらく小説的創作活動を停止していたとおもいきや、このようなあっ!と驚く作品を新潮社から、しかも書き下ろしで出しちゃうのですね。
    やはり凄いです。
    最近わ日本史偉人伝のシリーズ本を何冊かサイバラ姉御さまとの共著で書いておられましたが、こうやって小説作品も虎視眈々と復活の機会を待っていたのですね。
    そしてお題がなんとも清水義範せんせーらしくてとても良いです。
    さあ次はどこかの雑誌への連載オファーを待ってるぞ!ってっところですか。
    ガンバレ団塊の世代(^_^;)

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著者プロフィール

1947年愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部国語学科卒業。1981年『昭和御前試合』でデビュー。1986年『蕎麦ときしめん』が話題となり、独自のパスティーシュ文学を確立する。1988年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。2009年、名古屋文化の神髄紹介とユーモアあふれる作風により第62回中日文化賞受賞。『永遠のジャック&ベティ』『金鯱の夢』『虚構市立不条理中学校』『朦朧戦記』等著書多数。また西原理恵子との共著として『おもしろくても理科』『どうころんでも社会科』『いやでも楽しめる算数』『はじめてわかる国語』などがある。

「2021年 『MONEY 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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