- Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103918042
感想・レビュー・書評
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地域医療の拠点となる自治体総合病院の経営の厳しさに着目、存続と改革を巡る自治体側、政治家と医療スタッフの激しいせめぎあいに焦点を当てた作品。
主人公の消化器外科医・城戸健太朗は、妻との生活の破綻、医療ミスへの自責の念、所属していた大学との軋轢から逃れようと北海道の富産別市立バトラー病院にやってくる。
だが、病院は慢性的な財政赤字に加え、新たな医師臨床研修制度で、大学病院から派遣されていた医師が引き揚げられ、診療科目が激減、瀕死の状態にあった。
病院の赤字問題は政争の具にもなり、市長派、反市長派の対立で議会も紛糾するなか、院長も辞任する。
市長は、官僚時代のつてを頼って、東京の警察病院で副院長を務めていた大迫医師を招聘する。彼はPKOでカンボジアに派遣され、その後、現地で医療ボランティアに従事した経験を持つ硬骨漢。応援部隊として、後輩医師が次々とやってくるが、その中に女優のような美女でありながら修羅場も物としない救急科の吉川まゆみ医師がいた。
大改革を打ち出す大迫に城戸も巻き込まれ、部下に配属された吉川との距離も急速に近づいていく。
全体を通して、市長と対等の立場を貫き、ある時は協力、ある時は対峙する大迫と、妖しい魅力で城戸に迫る吉川の存在感を強く感じた。
病院改革を争点にした市長選挙に向けた病院側の画策、選挙後の波乱の展開、市に忠誠心を持ち改革に面従腹背の伊藤事務長や、若手で内視鏡診療に秀でる杉谷医師など個性が際立つ登場人物の多さなど、ストーリー性は豊か。加えて、自治体病院が内包する課題の分析も十分盛り込まれていた。
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158もっと展開があるのか?と思って最後まで読んだけど、盛り上がらないまま終わった。長い作品の割に強弱がなく疲れたわ
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2021.1.2-358
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ここまで、勤務医が市政に関わるのかな?
病院経営を楽にするため、点数の高い治療、薬をすすめる、というのは、患者側からとても良くわかることだった。
持病でかかっている開業医、とんでもなく高額の薬を処方する… -
同じ時期に放映されたTVドラマも同じテーマを扱ってた。今や地域医療は課題大。只中にいる自分。どこに頼ればいいのかな。
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医療過疎地の現状を知りたくて、読んでみた。
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医者は大変な勤務医から気楽で儲かる開業医を志向しているし、高齢化に伴い医療費は増え地方自治体の予算は逼迫して、このような病院は地方では増えていくだろうな。
抜本的な医療体制の見直しをしないといけないのかもしれない。
金が儲かるから医者を目指す人が多いし、既存の医師の権益を守るために医学部人員を抑制している。
大学の医局の人事権をもっと抑制して、自治医大のように何年かは過疎地域で従事するとか、医学部定員の問題を含めて国がそういう仕組みを作らないといけないところまで来ている。
また産婦人科医も訴えられる可能性が高いので成り手がなく、近くで産めない妊婦の方が多くいるとも聞く。
少子化対策としても国の果たすべき事が求められている。 -
離婚と医療ミスから精神的に追い込まれ、安寧を求めて北海道のある過疎地の市立病院に逃れてきた城戸だが…。人口減少と高齢化が進む地方の医療崩壊を描いた物語。一気に読ませてもらったが美貌の女医との色恋は賛否が分かれるかも。警察小説のイメージが強い作者さんだが、新境地?
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筆者は医師かと思いきや、早稲田の仏文卒。これはかなり取材しましたね?あまりにリアルすぎ。
公立病院内の事務方、役場とのやりとり、医療コンサルタントの存在。
それのみならず、医療要素(内視鏡主義や脳梗塞堂々)もかなりリアル。
この筆者の作品をもっと読みたくなりました。