- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103971122
作品紹介・あらすじ
ぞっとするほど美しく、息を呑むほど恐ろしい。恩田陸の“最新型”がここにある。とある立てこもり事件の証言をたどるうちに、驚愕の真相が明らかになって……(「ありふれた事件」)。幼なじみのバレエダンサーとの再会を通じて〈才能〉の美しさと残酷さを流麗な筆致で描く「春の祭典」、ある都市伝説を元に、世界の〝裂け目〞を描出させた表題作ほか、小説の粋を全て詰め込んだ珠玉の一冊。
感想・レビュー・書評
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恩田陸ワールドを凝縮した1冊!という感じでした。面白い短編がこんなに読めるのはお得感満載でした。
個人的には、「球根」「楽譜を売る男」「柊と太陽」が特に好きでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の作品は『蜜蜂と遠雷』『祝祭と予感』しか読んでいないので、本書を読み始めて全く異質な雰囲気に面食らった。
『麦の海に浮かぶ檻』は他の作品のスピンオフということで、初読みの私には意味がわからなかった。
中心の出来事は理解できたし、それを挟んだ冒頭と終わりの語り手が誰なのかも理解できたのだが、彼が待っている「娘」というのはわからずじまい。
かと言って『麦の海に沈む果実』を読んでみようという気は起こらない。 -
それぞれ独立した短編集。
理瀬シリーズが好きな私には「麦の海に浮かぶ檻」が面白かった。
こういうスピンオフ作品には、
以前仲良くしていてしばらく会っていない友人に出会うようなワクワク感がある。 -
全18話の恩田さんらしさが堪能出来る短編集。長編では冒頭の魅力的な怪しさが最終的にあれ?といった所に収まってしまう場合があるけど、短編だと闇に溶けたままで放っておかれるのがかえって心地良い。日常の風景からのちょっとしたずれから明らかなホラーまで。謎解き系では「逍遥」「楽譜を売る男」「降っても晴れても」ホラー系では「あまりりす」「風鈴」が好み。スピンオフの「麦の海に浮かぶ檻」も嬉しかった。「球根」の締め方も笑い顔だけが浮かぶチェシャ猫感覚が好きだな。
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「柊と太陽」、「ありふれた事件」が面白かった。
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「歩道橋シネマ」 恩田陸(著)
2019 11/20 初版 (株)新潮社
2020 6/2 読了
短編集とは知らずにジャケ買い。
制約された題材の中でいかに個性を出すか?
そうやって読むと面白いけど…
やはりなにか物足りないです。
筆者がネタバレと表現しているあとがきを読んだ後に読み返すと味わいも深まりそう。
恩田陸ファンなら買ってもいいかなぁ…
美しい装幀はちょっと見もの。
帯は褒めすぎ! -
恩田陸はビッグプロローグの天才で、本書でも、柊と太陽とか春の祭典とか、魅力的な冒頭が多数。あと、あまりりすとか怪談も充実している。恩田陸は長編の方が断然いいけど、本書は粒揃いでレベル高くおすすめ。
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短編集も面白い。歩道橋シネマの意味が分かった。
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こんなに多様な語り口で、ジャンルまでも越境して、様々なイメージを垣間見せてくれるなんて、ほんとに恩田陸さんは魔法使いみたいだと思う。
どの作品も、どこか祖父母の家の屋根裏の明かりでセピア色の写真をこっそり見るかのような、ノスタルジックな味わいをなぜか感じる。
エドワード・ホッパーの絵から思わぬ記憶に連想が広がる「線路脇の家」、ボイスレコーダーの録音を聞いている風の文体が、土俗的なサスペンスにぴったりな「あまりりす」、都市伝説のような、なんとも言えない不気味さの「ありふれた事件」が特に好きだった。 -
恩田陸!って感じの短編集。この人は伝えたいことがあってそれに合う設定を組み立てるタイプというより、自分が出くわした印象的なシーンから物語が発想されるタイプの作家だと思うんだけれど、その描きたかっただろうシーンが立ち上がってきてよかった。その中で時々そのものについての筆者の価値観が練り込まれてきてオッと思う。例えば学校について。「未成熟な若者たちが一箇所の共同体に放り込まれる。それはたぶんに儀式的、儀礼的な雰囲気を帯びている。暗黙の了解、暗黙の秩序、暗黙のスクールカースト、それらはある種の「教育」「いい暮らし」に対する信仰でもある。そして、それが信仰である以上、必ずや摩擦やタブーが存在し、そこからはみ出るものは「生贄」として捧げられるのだ。」