- Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104018055
感想・レビュー・書評
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「ジャズのアドリブのような」という惹句がまさに言い得て妙の長編詩。「私は立ち止まらないよ」という主題を、ときに軽妙に、ときに皮肉に、北緯69度のノルウェーのちいさな町で闊達に「吹き」まくる。そしてすべてのフレーズは、マンガのような吹き出しに包まれて、北極圏の蒼い夜空をぷかぷか漂っては消えてゆく。
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数篇の詩が収められているのだけど、物語仕立てで、馴染みのある谷川詩とは少し違った印象。
死へと向かう船上での詩、入り込んでしまった絵の中での詩、ひたすらに詩人である詩人の詩。
どれも少しぞっとして、でもそれがとても面白い。 -
詩の楽しさを感じてくれる本。
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詩と物語の中間のような、でも詩なんだろうなあという感じの作品集。心の中にある部分を詩が描き出すようで、読んでいると自分と対話しているような錯覚に陥る。
時間というものを、詩の中で効果的に利用して、時が経つことによって何かが変わるのに、感性を使わず何も動こうとしない現代の人間への危機感のようなものを感じた。自分っていったいどんなものなんだろうか。そういう事を言葉で表す詩人のプライド。「私は負けないよ。社会になんか負けないよ。」自分だけを信じて、誰でもない自分オリジナルなものをつくること、孤独な戦いを行っていくのは、苦しい。「立ち止まってはいません」自分でパフォーマンスを出し続ける事へのプレッシャーなのだろうか。孤高の詩人の生き様が少しわかったような気がした。 -
谷川さんは、詩人という枠に捉われることなく、幅広い作品を発表していますが、あとがきでも書かれているように長編詩というのは少ないと思います。
過去に、散文詩に挑んだ作品もありますが、この詩集とは趣を異にしています。
もちろん、詩の良し悪しは長さではありませんし、その物語性でもありませんので、それだけで評価することはありません。
ただ、長年、詩を書き続けてきて、それでも新しいことに挑戦し続ける姿勢は、それだけで凄いと思います。
「私は立ち止まらないよ」
まさに、書き出しの1行は、決意表明なのかもしれません。
そして、フォーマットは変わったとしても、収録された作品は谷川さんらしさに満ち溢れた作品ばかりです。
「ことばあそびうた」のような部分も楽しいですし、写真も素敵です。
繰り返し読むと、さらに良さがわかってくるかもしれません。