魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104049028

作品紹介・あらすじ

「いままで誰にも言えなかった――」喪った最愛の人との“再会”の告白。「亡き妻があらわれて語った〈待っている〉という言葉が唯一の生きる希望です」「兄の死亡届を書いているとき〈ありがとう〉と兄のメールが届いて」「夫が霊になっても抱いてほしかった」――未曾有の大震災で愛する者が逝き、絶望の淵にあった人びとの心を救ったのは、不思議でかけがえのない体験の数々だった。“奇跡”と“再生”をたどる、感涙必至のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 97頁『町が復興しても、彼らに復興は訪れない。いや、誰も彼らを復興させることなどできないだろう』

    読んでいてとてもつらかった。
    心に復興はおとずれないとしても、すこしでも気持ち穏やかに過ごせますように。

  • 震災の話、特に子供を亡くした話は辛い。

    この本には私がいつも思っていること、それが書かれていた。

    「大自然という大海の中に論理という網を投げて、引っ掛かってきたものが科学的成果で、大半の水は科学という網目からはこぼれ落ちるんだと物理学者の中谷宇吉郞は言ったが、そういう科学の限界点を知れば、お迎え(霊)が存在しないなんて恥ずかしくて言えないはずだ。」

    「近代科学とは、たかだか四百年の歴史にすぎないのである。生命の歴史四十億年の中の、たった四百年なのだ。その程度の歴史で、理解できなければ排除することの方がおこがましいと言わざるを得ないだろう。」

  • 私の祖父がなくなったとき、仕事の都合で葬式に間に合わなかった。実家で遺骨の祖父と対面した後、ふと携帯電話を見ると「着信あり」の表示。発信者は、昨日死んだはずの祖父の名前。ずっと誰にも言えなかった、この体験。何かの誤作動でそう表示されたと思い込むようにしていた。

    この本を読んだとき、そんな思い込みなんて必要なくて、祖父が挨拶に来てくれたんだと、思うようになれた。

    飛行機の中でこの本を泣きながら一気に読んでいたら、隣のバハレーン人が、心配したのかポテチやグミを私にくれた。

  • 2011.3.11東北地方を襲った大地震によって多くの方々が亡くなった。

    本作は著者自ら被災地を訪ね、大切な人を亡くした方が体験した不思議な霊体験を記録したもの。

    科学的には解明されていない霊という存在。

    けれども、語られた内容は辛い体験談だけでなく、震災で亡くなった人が愛する人へ寄り添う物語。

    あの日から約10年近くの時が流れようとしているが、復興へと続く道のりはこれからも続いていくのだろう。

    忘れてはいけない。

    記憶と記録に残し、語り継いでいくことは今を生きる人々の使命で、未来を生きる若者に繋いでいくバトンのようなもの。

    本作は単なる物語ではなく、そこに生きた人がいる証。

    間違いなくノンフィクション作品。



    説明
    内容紹介
    「今まで語れなかった――。でも、どうしても伝えたい」
    そして、
    〈誰にも書けなかった。でも、誰かが書かねばならなかった〉
    〝不思議でかけがえのない物語″が、いま明らかになる!

    あの未曾有の大震災から、今年で6年――。
    その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。
    最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、
    突然起きた不思議な体験の数々……。
    《愛する亡夫との〝再会″で、遺された妻に語られた思いは……。
    津波で逝った愛娘が、母や祖母のもとに帰ってきた日に……。
    死んだ兄から携帯電話にメールが届いて……。
    早逝した三歳の息子が現れ、ママに微笑んで……≫
    だが、〝霊体験″としか、表現できないこうした〝不思議でかけがえのない体験″によって、絶望にまみれた人びとの心は救われたのだった――。
    著者は3年半以上も、そのひとつひとつを丹念に何度も何度も聞き続け、検証し、選び出し、記録してきた。
    「今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい」という遺族たちの思いが噴き出した、初めての〝告白″を、大宅賞作家が優しい視線と柔らかな筆致で描き出す!
    唯一無二の〝奇跡″と〝再生″の物語を紡ぎ出す、感動と感涙のノンフィクション。

    【目次】
    旅立ちの準備
    春の旅
    1『待っている』『どこにも行かないよ』
    2 青い玉になった父母からの言葉
    3 兄から届いたメール≪ありがとう≫
    4『ママ、笑って』――おもちゃを動かす三歳児
    5 神社が好きだったわが子の跫音(あしおと)
    夏の旅
    6 霊になっても『抱いてほしかった』
    7 枕元に立った夫からの言葉
    8 携帯電話に出た伯父の霊
    9 『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』
    10 三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』
    秋の旅
    11 『ずっと逢いたかった』――ハグする夫
    12 『ただいま』――津波で逝った夫から
    13 深夜にノックした父と死の「お知らせ」
    14 ≪一番列車が参ります≫と響くアナウンス
    15 あらわれた母と霊になった愛猫
    16 避難所に浮かび上がった「母の顔」
    旅のあとで
    出版社からのコメント
    「今まで誰にも話せませんでした。死んだ家族と〝再会″したなんて――」 大震災で愛する者を失った人びとの奇跡の体験と再生の物語。
    内容(「BOOK」データベースより)
    今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい。未曾有の大震災で最愛の人を喪った絶望の淵で…大宅賞作家が紡いだ、“奇跡と再会”の記録。
    著者について
    奥野修司
    1948(昭和23)年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。78年から南米で日系移民を調査する。帰国後、フリージャーナリストとして活動。98年、「28年前の『酒鬼薔薇』は今」で、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフィクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『「副作用のない抗がん剤」の誕生 がん治療革命』など著作多数。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    奥野/修司
    1948年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。78年から南米で日系移民を調査する。帰国後、フリージャーナリストとして活動。『ナツコ沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフィクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 人がとても受け止めきれないような
    過酷な経験をしたときに、
    目の前に愛する人の手が差し伸べられたら
    きっと私だってその手にすがるだろう。
    たとえそれがもうこの世の人ではないはずの
    手であったとしても。。。

    3.11後の東北では
    不思議な体験をした人たちがたくさんいたという。
    もう繋がらないはずの携帯電話に相手が出たり
    ふと気づくと津波で亡くなったはずの家族の気配を感じたり。
    亡くなった人からのメッセージを受け止めて、
    生き残った人たちは、やっと生きる希望を見出すことができたのだろう。
    死者と生者の間に生まれたこの物語を
    私は丸ごと受け止めたいと思う。
    そしてこの本の中で語られた津波の体験談は
    今まで読んだどの3.11関連の本よりも
    その悲しみと悲惨さを深く感じた本でした。

  • 東日本大震災から10年。
    震災に遭われた方はどんな気持ちでこの10年を過ごされたのかと思いこの本を手にしました。
    朝までいつもと変わらぬ生活を過ごし突然過ぎるくらい様変わりする町や景色。そして何よりも会えなくなるなど思ってもみなかった家族に突然会えなくなる気持ちは私が想像もできるはずもありません。でも少しでも知りたかった。そして本当に辛く苦しい体験をされたんだなと思うと自然に涙が出ていました。大切な家族の変わり果てた姿を突然目にするなんて堪らないでしょう。でも最後に会うことができたのは良かったように思います。一番辛いのは未だ行方不明で年数だけが経過し大切な家族の死を受け入れないといけないけど何も見つからない状態では受け入れられない。何も見つからなければ、いつかいつか帰って来てくれるのではないか、そしてどこかで生きているのではないかと思い続けてしまうだろう。改めて最後のお別れの大切さをこの本を読み感じました。

    私は直接霊体験などはありませんが、目には見えないけれど私の周りに何か?誰か?がいて守ってくれている気が以前よりしていました。しかしその事を周りに話しても不思議がられてしまう状態だったんです。でもこの本を読んで亡くなったけれど魂はそこにあり見守ってくれていることはあるのだと胸が熱くなりました。私も数年前に父を亡くし葬儀後3日間全くたいてないないのに線香の香りが同じ場所からして、もしかして父親が側にいてくれているのかもと思ったんです。それはそうかもしれないし、そうではないかもしれません。でも父が私を見守ってくれていると信じたいです。肉体は無くなるが魂は生き続けていて亡くなった人が大切な人を見守ってくれている。私はこの本を読み強く感じました。

  • 信じる信じないの次元ではなく、被災された方々のお話をきいて、うんうん、と頷く感覚で読んでいった。皆さんが生きていて、語ってくれて、よかったと思う。辛いとか悲しいとか感動したとかいう感じではなく、自然と涙が出た。

  • 霊界はある。肉体はなくなっても霊人として生きているというしか説明できない。
    科学で説明しきれるわけでもない。
    ただ落ち込んでいる時ではなく、前向きになった時に亡くなった家族が現れるのは霊界の決まりがありそうだ。

  • 喪失に対する答えの出し方、ジェントルゴーストストーリーは生者の為に語られるもの。

    津波の影響やらで遺体の未発見も多かった時期に語られる話は、かつての戦死者が会いにくる話と同じで多分日本人の深層なのかなぁ。

    話すことで救われる事はありますよね。

  • 東日本大震災で大切な人を亡くした人たちが遭遇した不思議な霊体験を聞き取り調査した記録。著者は、一人の人に最低3回は会うことにして体験に耳を傾けた。悲しい思いが幻覚・幻聴を招いたと言う人もいるかもしれないし、確かにそうかもしれないけれど、たとえそうだったとしても、「私がそう思うからそう」なんだと思う。
    震災後、避難所で川の中州に幽霊が出たと聞いて避難所の人たちが懐中電灯を持って中州に詰めかけたという話を聞いたことがある。
    幽霊だったとしても会いたい。切ない。

    p236
    それまで、中野いい人たちがみんな空の上に逝っちゃったから、死ぬのは怖くないと思っていたのに、あの光の柱のおかげで、自分が守られているなら、もっと生きてみようと思いました。

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著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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