兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104062058

作品紹介・あらすじ

津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた。東日本大震災での救助活動、遺体捜索、そして原発対処。緊迫と感動のノンフィクション大作。

感想・レビュー・書評

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  • 多くは語るまい。
    東日本大震災において災害救助にあたった自衛隊員の記録である。
    当時はテレビ画面や雑誌などのメディアを通してその活動を遠く安全な場所から心配しつつ見ていた訳だが、その時は「自衛隊員」というマスの枠で見ているだけでそこの個々の隊員が見えていた訳ではない。
    本著では個別の隊員がどの時点で、何処で、どのように活動していたかが克明に描かれている。
    「軍隊である前に【自衛隊員】である」
    「家族より部下が大切だし、部下よりも国民が大切だ」
    自らも被災者でありながら、必死で自己の使命を果たした自衛隊員の記録。

  • 東日本大震災での自衛隊の活躍を実名、実部隊名を挙げて、地震と津波の遭難から救援、福島原発対応まで記録したものである。この災難には人の数だけエピソードがあり、全貌を記すのはとても困難だ。杉山隆男という屈指のノンフィクションの書き手は、これまでの経歴もあり自衛隊に焦点を絞って記録を試みたものだと思う。確かに自衛隊の活躍には目を見張るものがあったが、訓練で鍛えられた彼らでさえも未経験の驚き、苦しみ、悲しみ、に覆われていたのだ。涙をこらえて読書するのはつらいので、それを最低限にさせるために本書をこの災害の記録の代表とさせてもらっても、書物の選択ミスには決してなるまい。

  • 【兵士は起つ】 杉山隆男さん

    1000年に一度といわれる大地震が起きた。
    東日本大震災である。地震は津波を誘発し
    津波は全てのモノをなぎ倒し陸地を駆け上がった。

    「別命なくば駐屯地に急行せよ」
    震度六以上の地震に見舞われた時の自衛隊の行動基準に従い
    多賀城駐屯地に勤務する自衛隊員は各々、駐屯地へと向かった。

    駐屯地へたどり着く前に津波に見舞われた隊員もいる。
    自らが被災者となり、家族も被災者となった隊員も数多く居る。
    駐屯地自体も津波の被害を受けた。

    しかし、彼らが優先すべきは自衛隊員としての行動規範である。
    「私」を捨て、隊員として命を賭して責務を全うした隊員たち。

    自衛隊員としての自覚と矜持、そして「事に望んでは危険を顧みず、
    身をもって責務の完遂に努める。」という入隊時の宣誓の言葉を
    身をもって実証した隊員たちのルポルタージュ。



    この本もマイミクさんのレビューを読んで借りてきました。
    ただただ、頭の下がる思いばかりです。
    自衛隊という組織を知ってはいても、組織の構成も活動も
    テレビのニュースで海外派遣などを聞くだけで、
    全然関心がありませんでした。まさか、これほどの覚悟を持った人たちの
    集団だったとは驚きです。
    有川浩さんの「空の中」だったかな、自衛隊三部作の一つで
    作家が、兵士が戦場に行くコトを怖がっている行を書いて
    夏木だったか大和だったかに、そんなコトはありえない。
    領空侵犯などがあれば、どの隊員も自国を守るために勇んで飛んでいく
    と反論されていた行があったコトを思い出しました。

     

  • あの震災のことを、書くべき人が書いてくれた。

    最前線に携わった隊員たちの珠玉のインタビュー、これだけ集められるのはさすがです。

    杉山さんの「兵士」シリーズの集大成ともいえる作品。

  • 2011年3月11日14:46三陸沖の太平洋を震源として未曾有の大地震が発生した。 
    「東日本大震災」である。 
    本書は、陸上自衛隊多賀城駐屯地にスポットを当て、宮城県沿岸の救助活動、遺体探索、原発対処を追いかけたノンフィクション。 
     私の妻の実家が仙台にあることあり、震災後の荒浜や野蒜地区の惨状を目の当たりする機会があった。 
    1年ほど経過した後ではあったが、周辺にはまだ埋もれた乗用車がいたるところにあり、かろうじて残った家屋にも、津波の傷跡が多数残っていた。 
     地震発生直後からの数ヶ月間の自衛隊の皆さんのご尽力感謝いたします。 
    「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」これこそ自衛官の矜持なくしては、できないことでなのでしょう。
     遺体捜索のエピソード、涙無しには読めませんでした。 

  • 自衛隊員から見るあの'11.3/11のノンフィクション、私達が知らないで有事の時だけ頼っている自衛隊を垣間見せてくれるドキュメント。
    違った切り口からの3/11が参考になります。

  • 東日本大震災による津波被害、福島原発での放水など、自衛隊の活躍を記すものである。
    津波に襲われて、自衛隊による救出が開始された。生き残り者や遺体の捜索。
    さらには、福島原発での特殊部隊の出動、海水放水などである。
    実は5月頃、石巻市内を通ったが、瓦礫の片付けは自衛隊により行われていた。
    自衛隊の活躍を記す、この手の本は類書がないのだろうか。
    なお、中隊は150人で構成されている。(ダンバー数)
    震度6以上の地震時の行動基準:別命なくば駐屯地に急行せよ。
    旧軍から自衛隊に引き継がれている用語に、上番、下番

  • ううむ。やはり大手出版社の本はこんなものかな。悪くはなかったけどちょっともの足りず。

  • 東日本大震災当日、どうにか帰りつた自宅で延々とテレビを観ていた。
    大地震と巨大津波の被害は、時を経るごとにとてつもないものだと
    感じさせた。

    そして、自衛隊の幕僚長による記者会見。制服ではなかった。迷彩
    の戦闘服での会見は、本当に日本が非常事態なのだと感じさせた。

    東北に展開する多賀城駐屯地では、地震発生直後から災害派遣への
    準備がなされ、車両には「災害派遣」の横断幕が掲げられ、担当地域
    へ出発する寸前だった。

    そこへ津波が襲いかかった。車両は水没し、集散の為に駐屯地を
    目指していた隊員の何人かは津波に飲み込まれた。

    同じく東北に位置する松島基地では、戦闘機が、輸送機が、津波に
    押し流される。被災者を救助し、物資を運ぶはずの航空機が使い
    ものにならなくなる。

    隊員たちの多くは、被災地に居を構えている者が多くいる。自衛隊員
    とは言え、彼らも被災者だ。しかし、家族の安否確認さえ出来ぬまま
    彼らは与えられた任務につく。

    父である隊員は駐屯地近くの造船所で高所クレーンを操作する息子
    から電話を受ける。津波に襲われクレーンの運転席から動けない。
    「お父さん、助けて」。しかし、彼にはどうすることも出来ない。

    夫である隊員は妻の安否を気にしながらも「きっと逃げていてくれて
    いる」と信じて、被災地での行方不明者の捜索に追われる。

    本書は自らも被災した多賀城駐屯地と松島基地の自衛隊員を
    中心に据えて、東日本大震災での自衛隊の活動を追っている。

    著者は自衛隊員目線での作品を書いて来た人なので、客観性
    はまったくない。大江健三郎と思われる作家の過去の発言を引き
    合いに出してまで、自衛隊礼賛をするのかどうかと思う。

    ただ、あの未曾有の災害のなかで自衛隊、消防、警察、海上保安庁
    が果たした役割はかなり大きい。

    「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって
    国民の負託にこたえる」

    批判以外で自衛隊がこれほど注目を浴びたことがあっただろうか。
    東日本大震災後、本書以外にも自衛隊の活動を取り上げた本や
    ムックが多く出版された。私も数冊、所持している。

    本書の中である自衛隊員が「自衛隊の活動が注目されるような
    ことがあってはいけない。自分たちは影の存在でいい」と言って
    いた。

    そうなんだよな。自衛隊が注目を浴びるのは、日本に大変なことが
    起っているってことなんだから。

    尚、本書には一切の地図が掲載されていない。位置関係が上手く
    つかめなかったのが残念。

  • 自衛隊員が体験した3.11である。未曾有の災害に立ち向かう彼らの姿には、敬意以外の何も持ちようがない。読んでいて何度溜息をついたか、何度目が熱くなったか。
    内容、特に登場する自衛官はじめ、震災救助復旧作業に従事された関係各位に関しては、文句苦情一切なし。想像を絶する前代未聞の激務を慰労する気持ちしかない。

    ただ「自衛隊史上最大の作戦」というサブタイトルがちょっと合わないなぁと。それ書くならもっと戦略的なマクロ目線いると思う。でもそれをしたら、この本の味わいが損なわれると思うし…。

    そんな瑣末な個人的感想はおいといて、この本は職務に殉ずるという恐ろしいまでのストイックさをしっかり考えさせてくれる良い本であった。縁の下の力持ち、言葉で書くと稚拙だが、守ってくれている人たちがいるからこその平和があることを謙虚に受け止める感性は持ち続けたい。

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著者プロフィール

1952(昭和27)年、東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を 受賞。1996(平成8)年、『兵士に聞け』(小学館文庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』『兵士を追え』(ともに小学館文庫) と続く「兵士シリーズ」を刊行。七作目『兵士に聞け 最終章』(新潮文庫)で一度完結したが、現在雑誌『マモル』にて、「兵士シリーズ 令和伝『女性自衛官たち』」を連載中。ほかに小説『汐留川』『言問橋』(ともに文藝春秋)、『私と、妻と、妻の犬』『デルタ 陸自「影」の兵士たち』 (ともに新潮社)など著書多数。

「2020年 『OKI――囚われの国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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