兵士に聞け 最終章

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 55
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104062072

作品紹介・あらすじ

沖縄の空へ、尖閣の海へ、そして御嶽の頂きへ――。「兵士シリーズ」、ついに完結!頻発する中国の領空侵犯にスクランブル発進を繰り返し、常態化する領海侵犯に24時間体制で哨戒活動を行なう。そして国内の災害派遣では最も過酷な現場に向かう。激しさを増す任務の中で隊員達は何を思うのか。取材開始から24年、最前線の声を拾い続けることで自衛隊の実像に迫り、その評価を一変させたルポルタージュの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ最終作。

    文中にもあるが、自衛隊内近隣諸国の事情が変わり、取材形態やコメント、自衛隊の内部も最初とはかなり変わった模様。

    気の毒だね

  • これでお終いは、もったいない。F15パイロットの話が、やっぱり凄まじい。選ばれたものだけが見る事の出来る景色が見えるのだろうなぁ。もっと待遇良くして欲しい。

  • 「兵士に聞け」から始まる杉山隆男の自衛隊ルポルタージュシリーズ最終章。

    初作発表時には、あまりに知られていなかった現代自衛隊の姿は、311以降徐々に身近な存在、頼れる存在として知られるようになってきた。
    いまでは、自衛隊と聞いて、無条件にアレルギー反応を示す人も少なくなってきていると思う。
    その現代自衛隊を、尖閣列島、御嶽山噴火という最近の状況に対応する姿を通し描く。
    著者にとっては、本作が自衛隊ルポシリーズの最終作となるらしい。
    時により現場に密着し自衛隊員とともに活動することにより取材することは、困難になってきているのかもしれない。
    最終作も、これまでの作品と同じく、読み応えのある作品だった。
    最後に作者は問いかける。
    自衛隊を市民から引き離し、特別な存在とし続けることは、誰の政策なのだろうか?と。

  •  現代ノンフィクション作家の中でも実力者の著者の代表作である「兵士に聞け」シリーズの最終章である。
     20年近く自衛隊を追い、兵士の実態を世に紹介してきたが、本書を最終章にしたのはインタビューがしにくくなってきたからであるという。
     本書は、沖縄の海空自衛隊の現場、御岳山噴火の際の陸自の活躍が描かれている。前者は対外防衛で後者は災害派遣と性格は異なるが、いずれも自衛隊の主要任務である。前者は、時代の変化で対象国が代わり、装備の近代化で秘密が増えてきたので、話をしても答えてもらえなくなったのである。後者だけで自衛隊を語るのは片手落ちである。
     政治とか憲法とかから自衛隊の在り方をマスコミは議論することが多いが、それでは見えてこない現場の生の声を伝えてきてくれた本シリーズが終わってしまうのは残念である。
     著者には新たなテーマに取り組んでもらい、また素晴らしい作品をぜひ読みたいものである。

  • 兵士シリーズは、いままで全て一読してきました。初版から20数年経過しましたが、著者もなかなか自衛隊内部の生の声の取材に、大変苦労されている様が、手に取るように理解できた書です。
    現在は、一昔前の様に日陰的な存在であった自衛隊が、世界情勢や大災害の発生により、かなり注目されている背景があります。昔の様に、自衛隊内部をルポして頂くことで一つのPRになっていたのが、現在は注目度が高い故に、逆に批判的な所見を組織に対するリスクと捉え、敏感になっている感があります。
    最後に、著者が本書を通した所感として、現在の自衛隊には、幹部と下士官以下の考え・行動に乖離がみえたと説いております。そして、自衛隊が、さらにアメリカに追従しており、その隷下にあるとすらも。
    確かに、現在の北朝鮮に対するアメリカ空母の展開においても、日本の護衛艦が護衛に入ることや、陸自の司令部の一部が、アメリカ駐屯地に隣接移転することなど、これらエビデンスからの自明だなと感じた次第です。
    そして、この道こそが、現在の日本の安全保障にとって、現実的且つ合理的な選択肢なのかなとも感じます。
    著者のこのシリーズを通して、日本の安全保障や自衛隊の方々の様子をうかがい知ることができ、たいへん勉強になりました。

  • シリーズ完結。段々と取材に制限がかかっていき、組織に遊び心がなくなっていく様がリアル。空自の戦闘機パイロット、海自の哨戒機パイロット、御嶽の噴火での災害派遣について。

  • 「兵士に聞け」シリーズの最新刊。残念なことに、タイトル通り最終刊でもあるらしい。
    一般の人から遠い自衛隊員の日頃の活動、最前線での過酷な勤務を時に自らも体験しながら綴った本シリーズ。隊員の職務だけでなく、無事であれと祈る妻子にまで目配りした、他の追随を許さないノンフィクションであった。
    本書も尖閣諸島や東シナ海での最先端の任務、災害救助など
    テーマが生々しい。一方、著者が記すように取材制限が厳しくなったこともあろうが、前作までに比べてリアル感が乏しくなり、思い出話が散見されたのがやや残念。

  • 著者がいう自衛隊の変質とは、これからどこに向かうのだろう。
    ま、そんなことより、サヨクや世間的良識派の皆さんが言及するイメージとしての自衛隊の、その先にある人としての自衛隊員の言葉には、多くのことを考えさせられた。そうした思いが組織というバケモノとの間でどう関係付けられて行くのか。

  • 丹念な取材をもとに描写されたリアルな記述は、読む者を夢中にさせる。

    兵士シリーズは私の人生に間違いなく影響を与えた名著で、その終焉には一抹の寂しさがあるものの、著者には最大の感謝の言を送りたいと思う。

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著者プロフィール

1952年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、

読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に

新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興

亡』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション

賞を受賞。1996年、『兵士に聞け』(小学館文

庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』

『兵士を追え』(共に小学館文庫)『兵士は起つ

 自衛隊史上最大の作戦』(扶桑社新書)と続く

「兵士シリーズ」を刊行。7作目『兵士に聞け 

最終章』(新潮文庫)で一旦完結。その後、2019

年より月刊『MAMOR』で、「兵士シリーズ令和

伝 女性自衛官たち」の連載を開始。ほかに小説

『汐留川』『言問橋』(共に文藝春秋)、『デルタ

 陸自「影」の兵士たち』(新潮社)、

『OKI囚われの国』(扶桑社)など著書多数。

「2022年 『私は自衛官 九つの彼女たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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