太宰治の辞書

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 966
レビュー : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104066100

作品紹介・あらすじ

時を重ねて変わらぬ本への想い……《私》は作家の創作の謎を探り行く――。芥川の「舞踏会」の花火、太宰の「女生徒」の〝ロココ料理〞、朔太郎の詩のおだまきの花……その世界に胸震わす喜び。自分を賭けて読み解いていく醍醐味。作家は何を伝えているのか――。編集者として時を重ねた《私》は、太宰の創作の謎に出会う。《円紫さん》の言葉に導かれ、本を巡る旅は、作家の秘密の探索に――。《私》シリーズ、最新作!

感想・レビュー・書評

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  • 久々の「円紫さんと私」シリーズ。女子大生だった私が編集者、そして夫・息子と暮らす家庭人に。そうだよね、前作から15年以上も!!経っているんだもの、と思いつつ、あらまぁ~~と驚きましたぁ!(#^.^#)

    デビュー当時は“覆面作家”だった北村さん。
    私、北村さんとの出会いがこのシリーズだったもので、主人公の女子大生・「私」がそのまま北村さんに思えて(だって、ご本人に色濃く反映しているに違いない、と思えるような、とてもしっくりくる語り口だったんだもの)、だから、北村薫=女性とばかり思っていたんでした。。。。

    で、久々の新作はこれまでのシリーズの中で一番好き!!
    ((#^.^#)(#^.^#) 偶然なんだろうけど、ここのところ、この作家さんの中で一番好き、シリーズの中で一番!ということが続いていて、なんと嬉しい春でしょうか。)

    取り上げられているのは、

    芥川龍之介「舞踏会」と、
    太宰治「女生徒」。

    小説の形は取っているけど、国文学を愛する北村さんの丁寧で優しい文学談義&論証ですね。

    それぞれ、数多くの文献に当たり、“元”となる話や日記を芥川や太宰がどうわが物としたか。


    「舞踏会」も、楽しく読んだけど、往年の太宰信者(大汗)ーもう過去のことですよ、とここで言い訳するのも太宰ファン共通??-としては、二章「女生徒」と三章「太宰治の辞書」は、なんだろ、熱いお風呂に入って、う゛~~~っと唸らずにはいられないような痛気持ちよさ。
    (「女生徒」は、私、断トツ一位の「人間失格」に次いで愛好していた本だったんです。あはは・・ここでも過去形。)

    「女生徒」は、太宰に送られてきた太宰読者の日記が元だということは知ってはいたけれど、それをどうアレンジして太宰味を出したのか、また、どこをそのまま使ったのか、をゆっくりと語るページがとても愛おしくて・・・。
    また、その他、「津軽」のタケとの再会シーンの裏話(というか真相?)や、あの「生れて、すみません」が実はある詩人の一行詩だった、また、太宰が当時使っていた辞書はなんだったのか、それを知ることがなぜ大事なのか、などなど、ホントに興味深い話ばかり。

    北村さんは元々高校の国語の先生だったから、こんなお話も授業の合間にされていのでしょうか。
    もしそうなら、なんて幸せな生徒たちだったんだろう、と思います。

  • 文中、「小説は書かれることによっては完成しない。読まれることによって完成するのだ」という文言があるけれど、まさに「書かれた小説を読むことで完成させる」のを小説で実践、小説を小説という「はこ」にいれて、読者に完成させるべく、バトンを渡している一冊。

    読むうちに紹介されている本を読んでみたくなるし、「私」と同じように、本を辿って旅をしたくなる。花巻周辺を歩く宮沢賢治の旅しかり、文中名前の出てくる鶴舞図書館や、岩瀬文庫、西尾文庫等、かつて本を訪ねて各地を訪れたことがあるなとなつかしく思い出しました。

    そして大学生のころの記憶も。「私」と同じ大学に通っていた私は、北村先生の描くこの世界にあこがれ、文中で描かれるキャンパスを目で追いながら、「私」の読んでいく本を真似するように読んでいたのでした。「フローベールの鸚鵡」等、円紫さんと私シリーズを読んでいなければ読んでいなかった。読めて幸せでした。

    現実が、本の世界に引っ張られる。そんな力をもったシリーズだったなと、あらためて好きだと思いました。

    『波』2015年4月号でジュンク堂書店の方が言っていた「本が次の本を誘う」も然りで、鞄のなかに久々に太宰をいれている私がいます。

    「大切な友人に十七年ぶりに会えました」という、やはり『波』掲載コメントの、芳林堂書店の方と同じ気持ちです。

  • 魅力的な物語に出会うと、本を閉じたあとも、その世界が続いていて、どこかで登場人物に出会えるような気がすることがあります。
    このシリーズは、まさにそんな幸せな体験ができた作品のひとつです。
    前作「朝霧」が、1998年刊行、私が読んだのは、2002年くらい。それから十数年、同窓会で卒業以来の再会をはたした気分になります。
    登場人物の年齢の重ね方が自然で、本当に懐かしい気分に浸れました。
    主人公「私」や円紫師匠、正ちゃん以外の登場人物とも再会したい。ぜひ、今度はもっと近いうちに。

  • 久々にこのシリーズを読んだ。切れのある謎解きは無いが、話が転がっていく様がいい。早速『女生徒』読んでみた。皆にすすめたくなる気持ちよくわかった。今まで敬遠してた太宰を読もう。

  • 小さな出版社に勤める主人公が太宰治の作品の謎を解く。
    交遊のある落語家、円紫の言葉に導かれ太宰が使った辞書を探し実物を確認しに行く。

    なんとも素晴らしい読書ミステリーだ(そんな言葉あるのか?)

  • はじめは文学好きのマニアックな話と思ったが読み進むにつれ謎解きの要素が加わり面白くなる.僕も高校の一時期太宰治に傾倒したからロココ料理はもちろん覚えている.大学入試の面接で「太宰治を読んでます」と言ったら「早くやめたほうがいいですよ」と言われた.落ちたと思ったら受かってた.

  • 懐かしいヒロインに再会。40代になっても、初々しい文学少女ぶりはそのままに。嘗ては配偶者を旦那様と呼ぶことに抵抗ないと言っていた人が、夫を連れ合いと呼んでいる。ここにも時の流れ。学生時代の女子仲良し三人組が皆結婚生活が順調とは真相を現代の風潮からすれば奇跡。女性作家なら、誰か一人は未婚か離婚経験者に設定するだろう。あの輝かしいお姉様は今どうしているのか。主人公の夫は『朝霧』に出ていたあの人?太宰は新潮文庫版のを殆ど読破したな。最近明治大正昭和の日本文学を手に取る機会がめっきり減った。久し振りに読んでみようかな。大宰では『晩年』所収の「道化の華」や「女の決闘」とかが好き。

  • 私と円紫師匠の最新刊。
    といいつつ、初めの2編はほとんど文芸評論とも思える。
    3編目でようやく円紫師匠が登場し、前半の伏線を膨らましていく。
    ベテラン編集者となった私の成熟ぶりや円紫師匠の大真打ちぶりが見てとれ、シリーズの読者を楽しませてくれる。

    それにしても、太宰治は食わず嫌いでほとんど読まないのだが、文中に出てくる女生徒のみずみずしさ、自由奔放さは、まるで北村薫のようではないか。

  • 年齢を重ねた「私」は編集者となり、また一児の母ともなっていた。変わらぬ本への愛をはぐくむ日々のなかで、新たな本の謎を追ってゆく物語。
    …まさかのシリーズ新刊というのが本当のところで、読んでいくうちにああこういうトーンだった、という懐かしさが湧き上がってきてじんわりしました。
    本のなかの他愛ない描写をいとおしみ、思索してゆく、おだやかなけれど芯の通った考え方の流れるさまに、読むほうも心地よくたゆたうような気分にさせられます。
    大きな驚きではなく、小さな納得を得られる、腑に落ちる、という感覚の展開なのですが、この雰囲気にまた寄り添うことができた嬉しさでいっぱいになれたという意味で、とても素敵な時間を過ごせたと思えたのでした。

  • 標題の太宰治のみならず、芥川龍之介、三島由紀夫、江戸川乱歩、萩原朔太郎、江藤淳などの作品に言及されていて、近代日本文学、特に昭和日本文学好きにはたまらない1冊。中心は、太宰の『女生徒』に出てくる言葉から、太宰が使っていた辞書を探る、という内容。文学研究書を読むような気にさせられる一瞬があるけど、通しで読めばちゃんとエンターテイメントしています。そして、読み終われば『女生徒』を読み返したくなります。

    ちなみに太宰の作品で僕の押しは『女生徒』『津軽』『桜桃』。『走れメロス』から読み始めてはいけません。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『ヴェネツィア便り』『小萩のかんざし いとま申して3』『中野のお父さんは謎を解くか』など。

「2019年 『遠い唇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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