気をつけ、礼。

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104075096

作品紹介・あらすじ

僕は、あの頃の先生より歳をとった-それでも、先生はずっと、僕の先生だった。受験の役には立たなかったし、何かを教わったんだということにさえ、若いうちは気づかなかった。オトナになってからわかった…画家になる夢に破れた美術教師、ニール・ヤングを教えてくれた物理の先生、怖いけど本当は優しい保健室のおばちゃん。教師と教え子との、懐かしく、ちょっと寂しく、決して失われない物語。時が流れること、生きていくことの切なさを、やさしく包みこむ全六篇。

感想・レビュー・書評

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  • 泣くな赤鬼
    泣きながら読み終えた
    「歳をとるっていうのは、そういうことなんだろうな。後悔が増えるんだ。……」

  • やっぱり重松清作品、私は好きだ。特に教師やティーンエイジャーを題材とする小説は、心理描写において抜群だと思う。
    今回の作品は2008年に出版された、教師との関係を題材にした短編集。
    どの短編も一つ一つが心に灯をともしてくれる温かさを感じる。
    教師だって人間だけど、子どもたちから見れば一生師という存在。
    その師の思い出から、あの頃を懐しむ人達と教師との温かな話が楽しめる作品。

  • 2019_08_01-087

  • 短編は多くの物語を楽しめるが、人物の背景や感情を細かく書き、深い教官が生まれることが難しい。

  • ニール・ヤングは歳をとることを歌った。死なないことを歌った。生き続けることを、へなちょこな声と、あまりうまくないギターとハーモニカで、歌った
    入学式の時に校長が言った「君たちには無限の可能性があります」は嘘だった。可能性が無限であるはずがない
    30年以上も高校野球と付き合っていると、結局最後は才能の勝負になんのだと思い知らされる。野球のプレイの才能ではない。努力をする才能だ

  • 「先生」をテーマにした短編6編。じわ〜とノスタルジーに浸れる。泣くな赤鬼は先月から公開の映画。

  • 白髪のニール

    「ロックは始める事、ロールは続ける事。
    ロックは文句をたれる事、ロールは自分のたれた文句に責任を取る事。
    ロックは目の前の壁を壊す事、ロールは向かい風に立ち向かう事。」

    「そして僕は歳を取って行く、歳を取る事がロック。
    ニール・ヤングは歳を取る事、死なない事、生き続ける事を歌った。」-作中 富田先生の言葉-

    市長選には落ちてしまったけれど、自分の生き方で昔の教え子に生きる事を教えられる富田先生は、ちょっとカッコいい。

    歳を取っだけで大人になったつもりでいても、もうこの辺りでいいかななどという事はない。生き続ける限り課題は増えるけれど、下手くそでも一生懸命。


     ドロップスは神様の涙

    ヒデおば(ヒデ子先生)は言葉も態度もぶっきらぼうだけれど、うわべではない深い優しさを持った人。甘やかす事は厳しくするより簡単だけれど、本人のためにはならないもの。ドロップスはヒデおばの涙で本当の心は甘く優しい人。

     
     マティスのビンタ

    白井先生が一生を賭けて描き続けたものとは…。


     にんじん

    六年二組の担任、工藤先生はサイコーな五年二組を作った前任の風間先生への気負いみたいなものを、たまたまいやな笑い方だと感じてしまったにんじん(伊藤和博)に向けてしまったのかも。それにしてもにんじんに対する態度や、三十人三十一脚でにんじん一人を補欠にするのは大人げなくて酷くてあり得ない。

    先生だって人間だから好き嫌いや相性はあるだろう。必ずしも人格者じゃない事も。先生になって5年目の工藤先生は“先生五年生”で、それから後悔したり経験を積みながら十年生、二十年生になるごとに人格も育てて行ければ。


     泣くな赤鬼

    大学病院のロビーから始まる重松さんの作品に感じたいやな予感は的中した。

    ゴルゴ(斎藤)が野球や学校までやめてしまう事をとめられなかった赤鬼先生の後悔も、26歳で亡くなるゴルゴ自身の悔しさも、やりきれない。

    人が生まれて来る事が奇跡だとしたら、死ぬ事は何なのだろう。人だけじゃない、生き物全て。
    嬉しい事も、悲しい事も、いやな事も、楽しい事も、寂しい事も、怒る事も、どうしようもない事も、報われない事も、元気な時は良いけれど、空元気さえ出なくて立ち上がれそうにない事もある。私にはまだ人が生きて死ぬ事の意味がわかっていないのだろう。せっかく生まれて来たのに最期に自分自身は怖がりながら、周りの人を泣かせながら死んで逝く事の意味は何なのか。そもそも授かった命を出来る限りの力で全うすれば良いだけで、意味などないのか。自分が死ぬ時にわかるのだろうか。それまでの時間を精一杯生きるしかないという事なのか。

    “教えたり育てたりすることと、選ぶこととは違う”の間で赤鬼先生が悩み、結局ゴルゴを切り捨てたと後悔した切ない思いは、人の心は決して一つではなくいくつもの面で出来ているという事を教えてくれる。人前では泣かない赤鬼先生は一人でどんなふうに泣いたのだろう。


     気をつけ、礼

    この物語は重松さん自身が少年だった頃の出来事ですね。少し切ない経験だけれど、ヤスジ先生の事を嫌いではない感じが伝わります。



    表面的な人となりや感情を描いた薄い作品が溢れている昨今、重松さんの作品は、人の心の裡をきれいごとだけで隠す事がなくて、共感しまたドキッとする。でも登場人物たちの芯が決して悪人ではないところが逆に純粋。

  • 学校を舞台とした青春短編集です。

    6つの物語から構成されているのですが、どれも青春時代の友情や、過ち、苦悩を甘酸っぱく、切ない気持ちが描かれています。

    なかでも「泣くな赤鬼」というスト-リーが気に入りました。

  • 卒論の研究題材が教師なので教師が出る作品ということで。重松清はくたびれた初老の哀愁を描くのが上手い。同時に他作品の「定年ゴジラ」では哀愁と僅かな希望が見えて、後味悪い終わり方にならないのがいい。燻んだリアリティに感情移入しちゃう。

  • 学校の教師を題材にした短編集。
    教師だって人間で
    弱いとこもあれば、ズルイところもある。

    そういうところも含めて、題材は先生だけど
    “人”を描いている作品なんだと思う。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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