介護現場は、なぜ辛いのか―特養老人ホームの終わらない日常

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104083046

作品紹介・あらすじ

時間に追われ苛立つスタッフ、荒っぽい介護、低下するモラル。職員も入居者も、心をすり減らす24時間…。ヘルパー2級を取得し、時給850円で働いた作家が実感した「老いの現場」の苦闘、高齢者の本音、垣間見える人生の断面、そして希望の可能性。人は介護を受けるために生きているのではなく、生きるために介護を受けるのだ-。介護のいまを考え直すノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 一日で読み終えてしまったが、早く読み終えたかったんだと思う。2つの意味で何やら読後感も読中感も悪い本だった。
    一つ目は、この本の言わんとするところであろう介護現場の悲惨さ。高齢者が尊厳なく扱われている様子、人の末路として悲しくなる認知症者の様子、安い給料で身を粉にして働く介護職のこと、モラルも意欲も低い介護職の仕事ぶり……。
    日本の社会保障は世界一だという。それでもこの体たらく。“名誉ある”平均寿命世界一の裏側はこんなもんなわけで、その現実がわかってきている今、長生きしたいと思う人なんてそういないだろう。でも、生きてしまうわけだし……。
    それから、書中に出ていた介護職の「介護とは、死んでいくまでのお手伝いをする仕事」みたいな言葉も衝撃的だった。でも確かにそうで、医師や看護師の仕事は治す、つまり今よりよくする面があるけれど老化は不可逆。だから、介護っておおかたは治る見込みのない人の最後を支えることになるんだ。
    2つ目に思ったことは、この本に対する「なんだかなー感」。現場に入って問題点を巷間に晒すことはそれなりに意味があるのかもしれないけど、著者は5か月、特養で夜勤なしのパートで働いて、しかも最後はオムツ交換がやっぱりできないという理由でやめたようなもの。いろいろ提言したりもするけれど、それだって正義漢ぶって理想論をかざしているようでもある。介護現場は、物が整理されず、わかる人にしかわからない「女の台所」とも言ってたなあ(一人暮らしの男の部屋だって同じだろうに)。
    挙句の果てが、状況を解決するには介護職の賃上げしかないって。賃金が上がるだけで、介護職の専門性が担保され、素晴らしい介護が実践されて、お年寄りたちも幸せな老後を送れるだろうか。介護職の賃上げもその他の課題も、建設的に漸進させようとしている人々がいるからこそ、こういうふうにちょっと飛び込んで言い古された問題提起してかき回したみたいな本が、高評されるのはおかしい(……というか、一般社会で高評されるのは、まあわかる気もするが)。

  • 腰痛持ちが多い。若くないとできない重労働だが景気が良いと若者は来ない。リーマン不況で人材供給が増した。10年前でも¥850は最低賃金に近い。「立位のまま布オシメを替える」技能は和裁着付け以上の難易度と思うが布信仰/マニュアルも名札もない、週2日勤務の者に入居者を顔で覚えろ、&個別注意事項多い/正社員の夜勤は更に過酷。大規模チェーンが構築されマニュアルと労働規準がなくてはと思うが、コムスンが倒産した以上、手を出す大資本はないだろう。死ぬのを待つ設備/「私は…(特にセクハラ関連)」で1万字以上の長文の反響多し

  • 実情がよく描かれているにゃ

  • 結局、作者は興味本位で介護施設の現場を覗いてみたかっただけであり、ネタが集まったらさっさと辞めるつもりだったのだろう。鶴巻さんの「最初から辞めるつもりだったんでしょ」という最後の言葉が全てを表している。

  • デイサービスにお世話になってる身として。

    ・送迎時は少しでも、1分1秒でも、ロスタイムを減らすように心掛ける。(本人の気性で、家で職員さんを待たせてしまう)
    ・早く行って、遅く帰ってきてもらいたい…正にそう!

  • ヘルパー2級の資格を取得後50代後半の筆者が2008年に5か月間、特別養護老人ホームで週に2日間だけ非常勤として働いた経験に基づいた介護現場の問題点を指摘する本。
    短い期間ですが、こんな問題点があったということを実体験として報告しています。
    考えさせられますが、答えは書いてはいません。
    皆で考える問題でしょう。

    介護政策を立てている役人や議員に読んでもらいたい。介護を職業として志している人に読んでもらいたい。親を老人ホームに入れようとしている人に読んでもらいたい。老人ホームのお世話になる可能性のある人に読んでもらいたい。
    そんな本です。

  •  小説家である著者が実際に特別養護老人ホームで働き、そこでの経験をもとに介護現場の様々な問題をあぶり出した本。現場を体験したからこそ発見出来た問題点が数多く書かれている。人の入れ替わりが激しいのにマニュアルが存在しない、変化を嫌うベテランの介護職員、まかり通る精神論等々、介護現場には問題がいっぱいだ。でも、最大の問題は介護職員の待遇の悪さ。これが解決されない限り、介護現場の抱える根本の問題は解決されないと著者は主張する。待遇の悪いところに人は集まらない。これはごく当たり前の論理だ。

  • <特に印象に残ったこと>
    *介護職員が犯す交通事故
    *無資格労働の禁止を打ち出せば、ただでされ人手不足の事業所は、とたんに運動不能の危機に陥る。
    *介護職員に技術や意識の高さを求めがらも、技術や意識の低い職員が存在することを許してしまうという、この矛盾
    *「他に勤め先がないから、介護の仕事についた」人たちと、「辞めたいかど、転職先がないから辞められない」という人たちが、~ 不満を抱きながら働く人々が、介護現場で増加することを意味する。
    *当たり前のことを、当たり前にやてちない。
    *びっくりするようなハードワークを低賃金でやらせて、働く人が集まるわけはない。
    *将来が見えない場所に、若い人が定着するわけがない。
    *高齢者の介護を若者のみにまかせて、上手くいくはずがない。
    *覚悟を決め、こうした不自然なことを一つひとつ解決していけば、介護現場にも必ずや光がさすはず。

  • 現場を知らない者が、軽々しく語れないベールのようなもので、介護の世界は覆われているようだ。長く生きてくれば誰もに訪れる老い、しかしその姿は人によってまるで違う。他人の手に日常をゆだねることの覚悟は、準備をすればできることなのだろうか。著者が「女の台所」と表現する職場のありようも、ちょっとしたことで変えられそうなのに、そこに越えがたい壁がある。わかっていて、できないことのもどかしさ。

  • 老いの先に待っている「介護」の問題は、ひと言では片付かない多種多様な問題が山済みだ。
    5ヶ月間の潜入レポート。想像を絶するエピソードが満載だ。
    人間は「ただの糞袋」、排泄こそ介護の大きな位置を占める。
    介護されるために生きるのか、生きるための介護なのか・・。老いの哀しさが迫る。

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