音楽は自由にする

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 452
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104106028

作品紹介・あらすじ

幼稚園での初めての作曲。厳格な父の記憶。高校でのストライキ。YMOの狂騒。『ラストエンペラー』での苦闘と栄光。同時多発テロの衝撃。そして辿りついた、新しい音楽-。2年2カ月にわたるロング・インタヴューに基づく、初の語りおろし自伝。

感想・レビュー・書評

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  • NHK Eテレ2012年2月12日(日) 夜10時放送予定
    ETV特集 坂本龍一 フォレストシンフォニー 森の生命の交響曲

    楽しみにしています。。。

  • おそらくあの年代に沢山いた、「何者にもなりたくない」若者たちの中から、何かによって選ばれて音楽家になった一人の男の物語。

    天職のことを召命って言うのは、こういう人がいるからなのだと思います。

  • 音楽とは何かということを改めて考えてみたくなる一冊。

  • 再読。1年ぶりに読み返すと幼いときから自立してサカモト少年。

  •  月刊誌『ENGINE(エンジン)』に連載されていた、坂本龍一の語りによる自伝。同誌の編集長が、坂本の幼年期から現在までを時系列順にインタビューしてまとめている(それにしても、なぜクルマの雑誌に「教授」の自伝が連載されたのかね?)。

     坂本の語りによる自伝といえば、1989年に刊行された『SELDOM-ILLEGAL――時には、違法』がある。本書は、あの本と比べてはるかにきちんとした自伝になっている。

     『SELDOM-ILLEGAL』は、くだけた口調で語られた、まとまりのない雑然とした内容だった。
     それに対し、本書は生真面目な印象の本で、「自分のこれまでの人生をきちんと記録しておこう」という坂本の意気込みが伝わってくる。「インタビュー中にはこのへんで笑いが入ったのだろうな」と思わせる箇所にも、「(笑)」は一切入っていない。『SELDOM-ILLEGAL』が「(笑)」だらけだったのとは対照的だ。脚注も豊富でていねい。

     前半では、中・高・大学時代の青春模様が面白い。
     坂本とほぼ同世代の四方田犬彦が読書体験を中心に高校時代の思い出を綴った『ハイスクール・ブッキッシュライフ』という本があったが、あれのキョージュ版という趣。1960年代から70年代にかけての時代の空気――とくに、東京の知的な若者たちの世界の空気――をヴィヴィッドに伝える。

     ドビュッシーにのめりこんで「自分はドビュッシーの生まれ変わりのような気がした」とまで思う様子(中学時代)とか、自民党の塩崎恭久(安倍晋三内閣の官房長官)と新宿高校時代の親友だったという話(塩崎のことは『SELDOM-ILLEGAL』にも出てくるが、あちらではSというイニシャル扱いになっていた)とか、武満徹との出会い(大学時代)とか……。さすがに坂本は文化的に華やかな青春を送っているなあ、と思う。

     YMO時代の話は、いちばんメディアで取り上げられた時期なので、すでにどこかで読んだり聞いたりした話が多い。それでも、取り上げる角度が違うから面白く読める。

     KYLYNバンドやカクトウギ・セッションの話、りりィのバイ・バイ・セッション・バンドにいたときの話などは、ただの一行も出てこない。YMO前後の坂本の豊富なセッション・ワークの舞台裏は、それ自体が優に1冊の本になり得るものだと思うので、このへんはちょっと残念。

     YMO時代だったと思うが、坂本が雑誌のインタビューで、「ミュージシャンとしてレコーディングに参加したなかでいちばん印象に残っているのは、矢沢永吉の『ゴールド・ラッシュ』だね。彼のやっている音楽はぼくとはまったく違うけれど、人を惹きつける強い魅力の持ち主だと感心した」という発言をしていた(細部はうろ覚えだが主旨はこのとおり)。
     そのように、セッション・ワークを通じて坂本の意外な一面が浮き彫りにできたはずなのだが……。

     また、10年以上にわたって生活を共にし、戸籍上は20年にわたって妻であった矢野顕子についての話も、ほとんど出てこない。現在のパートナー(空里香)に対する配慮からだと思うが、矢野ファンの私としてはこの点も残念。

     後半はソロアルバムそれぞれの舞台裏と、『ラスト・エンペラー』を筆頭とする映画音楽作りの舞台裏が中心。YMO再結成(1993年)当時のメンバー3人の仲はじつは険悪だった、という話など、興味深い裏話も多い。

     私がいちばん好きな坂本のソロアルバム『音楽図鑑』は、坂本自身も非常に力を入れて作ったものであることが改めてわかり、「やっぱりなあ」と思う。
     いっぽう、160万枚売れた大ヒット曲「エナジー・フロー」は「さらさらっと5分くらいで作った」曲だとわかり、これも「やっぱりなあ」と思う(笑)。

     本書で最もスリリングなのは、坂本にアカデミー作曲賞をもたらした『ラスト・エンペラー』の舞台裏を明かしたくだり。
     監督のベルナルド・ベルトルッチは、俳優として撮影に参加していた坂本に、突如「音楽も作ってくれ」と依頼してきたのだという。しかも、期限は1週間(!)。坂本は、それはさすがに無理だと2週間にしてもらい、徹夜つづきで44曲を完成させ、そのあげくに過労で入院する。ところが……。

    《試写の日、完成した映画を観て、ぼくは椅子から転げ落ちるくらい驚きました。
     ぼくの音楽はすっかりズタズタにされて、入院するほどまでして作った44曲のうち、使われているのは半分くらいしかなかった。(中略)それぞれの曲が使われる場所もかなり変えられていたし、そもそも映画自体がずいぶん違うものになっていた。もう、怒りやら失望やら驚きやらで、心臓が止まるんじゃないかと思ったほどです。》

     黒澤明もそうだが、巨匠と呼ばれる監督と一緒に映画を作るのはたいへんなことなのである。坂本はその後もベルトルッチ作品の音楽を手がけているから、この“ズタズタ事件”で決裂したわけではないのだが……。

     坂本ファン以外の人が読んで面白いものではないだろうが、ファンにとっては必読の書だ。

  • ポップスやロックのみならず、クラシックや現代音楽まで幅広くその才能で活躍する音楽家=坂本龍一が赤裸々にその半生を語った自伝。

    興味深い発言として以下の和声と響き、クラシックとポップスに関する二つの記述。


    ロックは構造としては(自分が学んでいた)現代音楽に比べて稚拙かもしれないが、音響的にはそれ以上に興味深かった。
    ドビュッシー、特にその和声に自分は生まれ変わりだと思うほど心酔したが、ビートルズの音楽に同じ響きがあるのに驚き、細野晴臣らと出会い、彼らが理論ではなく耳だけでその和声にたどり着いた事に興奮したという。

    坂本自身が述べているように出来ることとやりたいことのズレがあり、そこが彼の音楽を面白くしているのではないだろうか。

    だから、制作や表現に制限の無いソロ・アルバムよりも、グループの一員としての活動や、映画音楽、コラボレーションなどの方がその才能がいっそう輝く(少なくとも評者にはそう聴こえる)のではなかろうか。



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    【要約】


    【ノート】
    ・文化的な背景がまったく違うところの音楽は、聴いてもほとんど分からない。ポップミュージックという共通の基盤(P130)

    ・バリ島にはプロのミュージシャンは一人もいない。〜すごく自覚的に、音楽を商品化しないようにしている。〜共同体が長い時間をかけて培ってきた音楽には、どんな大天才も敵わないと思うんです(P187)

  • 読後感が意外なほど「さわやか」
    幼少の頃から音楽に才能を発揮し、さらに高校の段階で進路も決まる。
    教授の計り知れないパワーの原点が分かる。

  • 地元の図書館で読む。著者のファンではありません。ファンには、待望の一冊でしょう。と同時に、失望の一冊でしょう。何故ならば、ファンでない僕も、薄々気づいていたことばかりだからです。多分、ファンには目新しいことはないでしょう。ただし、僕のようなファンでないものには面白い本です。非常に読みやすい文章です。これは意外でした。興味を持った点を整理すると、以下のようになります。第1に、YMOの方向性は分離していた。細野、高橋はポップスの人だった。坂本は現代音楽の人だった。互いに敬意を持っていたが、理解はできなかった。これは予想通りでした。第2に、YMOはかなり早い時期に行き詰った。互いの方向性が違うのだから、当たり前です。最後に、矢野さんとの結婚に関する部分は、僕には理解不能です。ファンの人しか読み解けないと思います。そんなところです。

  • MerryChristmas,Mr.Lawrenceと出逢って自分のピアノ人生が変わった。といってもピアノ嫌いが初めて旋律を味わい楽しんで弾けたという程度なんですが…。そういう意味で教授の音楽はレッスンに縛られていた私を自由にし、受動から能動へと変化させてくれました。
    あと中谷美紀さんに提供された曲も大好きです。

    俗な話で申し訳ないですが、教授はいい曲が閃いた時、××するらしいです。神がかっていて怖いくらいの境地。それは宇宙を自分の内へ内へと誘い、圧縮させ、極限状態からの解放の瞬間だと想像します。まさに自分の内側に溜まる無形のものを自分の指先で愛撫し鍵盤に放出する行為なのだなと。無から生命が生まれるような強いエネルギーを内包した音楽なのは、百文は一鍵にしかず。

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と「YMO」を結成、83年に散開。出演し音楽を手がけた映画『戦場のメリークリスマス』(83年)で英国アカデミー賞音楽賞を、『ラストエンペラー』(87年)でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞。2017年3月に8年ぶりのオリジナルアルバム『async』をリリース。11月にはドキュメンタリー映画が公開に。

「2017年 『龍一語彙 二〇一一年 ‐ 二〇一七年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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