私の暮らしかた

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 162
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104123025

作品紹介・あらすじ

背筋のぴんとのびた、すがすがしい生きかた。デビュー40周年、待望のエッセイ集! シュガーベイブのメンバーとしてデビューしてから40年、透きとおった歌声と繊細でゆたかな音楽性で多くのファンに愛されてきた。葉山での両親との日常、庭にくる猫、秋田での田植え、買わない暮らし、歌をつくり、歌うこと、そして母を、父を見送り、札幌に新しい家を借りるまで――。8年間の暮らしを綴ったエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 大貫さんの歌は大好きだけど、文章も好き。歌詞もそうだけど、シンプルな言葉づかいで淡々としているんだけど、すごく伝わってくるものがある。

    8年間のごく日常の暮らしが書かれていたけれども、ご両親のことがいちばんなんというか身につまされた。葉山に家を建てて両親との生活をはじめ、やがて年をとった両親のために自分で家事もして。そして昨年、お母様お父様とあいついで亡くなられたという。「お母さん、さようなら」の章は泣かずに読めなかった。大貫さん、すごくしっかりしていて強く潔く、なんというかウェットなところがないという感じで、けっして冷たいとかそういうんじゃないけれど、自立してるし、親の死とかも自然の摂理みたいな感じでわりに淡々と受け止めそうな印象だったんだけれど、「母を亡くして、どうしようもなく寂しい」という。「母を亡くして初めて大人になったのだという思いがする」という……。

    あと、「楽しいこと嬉しいこと」という章で、そうそう楽しいことってないかもしれない、みたいなことを書かれていて、なんだかほっとしたというかなんというか。で、「べつに楽しくなくてもいいじゃないの、ということに考えが落ち着いた」っていうところでますますほっとした(笑)。なんか、淡々と生きていくしかない、というか、生きていけばいいというか。

  • この人の透明感あふれる歌声が好き。
    で、エッセイも読んでみた。すごく丁寧に生きている人(生活している)なんだな。
    真摯に自然と向き合って(田植えまでしているし)高齢の両親と同居して料理も作って。父親は特攻隊の隊員で本まで出していたとは。
    その両親も相次いで亡くなり、その欠乏感は想像に難くない。
    得るものがあったという、”ダイアログ・イン・ザ・ダーク”行って暗闇の対話くを体験してみたい。

  • 歌手としての大貫さんについては、
    ほとんど無知な私ですが、

    あちこちで、この本のはなしを目にして
    読みたいなあ、と。

    心の片隅でおぼえておいて
    いつも本屋さんに入ったらなんとなく探していて、
    やっと、いつものBBの本屋さんで何回目かにみつけた。
    (この間みたときは無かったのにね)

    音楽をやっている人って、
    割と物静かで敏感だけど、結構饒舌と言うこと、
    多い気がしますなあ。

    農業をする話、地震の時の話や、
    特攻隊だったお父さんの話、

    後半、いきなりやってきたご両親のエピソードに
    ぐっさり。

    順番とはわかっていてもなかなかね。

    大貫さんはご両親のことがあって
    大人になったとおっしゃっている。

    私も父親のことで、いつも浮かんでくる
    イメージは
    水に浮いていたけれど、
    やっと片足がついた、と言う、なぜかそんな感覚。

    自分の気持ちを
    ちゃんと自分がわかってると言うのが、大事ね。

    大貫さんの表現でいうと「いまいましいこと」があっても
    それは
    「自分が何が好きか、何を大事に思っているか」を
    はっきり理解するためにやってきたことなのかも?
    と私は思った。

  • 「私の暮らしかた」というタイトルから
    ゆったりのほほんと暮らしている方のエッセイなのかなと思って借りましたが、
    前半部分は、古き良き時代を讃えて、現代の日本や社会を憂いている内容が多く、思っていたのと違うなと感じました。
    後半は心穏やかに読むことができました。

  • 著者に対して前知識があまり無かったので「ふわっ」とした人が書いた、ほっこりしたエッセイなのかと思ったが、とんでもない、しっかりとした真っ直ぐな人柄が滲み出る文章でした。

    足りないものがあっても、今の暮らしは自分が選んで来たものであると納得して生きる。

  • 文学

  • 葉山の家、札幌の家、父と母のこと、庭の猫、四季のめぐり、歌をつくり歌うこと、友人たち…。大貫妙子が背筋のぴんと伸びた生きかたを綴る。『考える人』連載を単行本化。

    シンプルで凛とした佇まいを感じる。

  • 彼女の歌が好きです。
    繊細で透きとおった歌声も、外に向かって開いていくよようで、それでいてぶれない軸を持っているサウンドも好き。
    「ピーターラビットと私」のようなかわいらしい曲も好きですが、「黒のクレール」がとにかく大好き。

    なんて思いながら読んでいたら、彼女は歌のイメージのとおりの人でした。
    しなやかで軽やかで軸がぶれない。
    エコロジーについて、平和について、音楽について、決してきつい物言いではない、押しつけがましくない妥協のなさが心地よいのです。

    “ステージで最も大事なのが、全部の音のバランスを決めるモニターだ。(中略)歌い手にとってはモニターから聞こえてくる自分の声が、いかに自分の声に聞こえるように調整するかで悪戦苦闘する。コンサート会場は音楽のために作られていない多目的ホールがほとんどなので、ステージ上にはホールのいたるところから、会場のスピーカーから出る音が跳ね返ってくる。(中略)とくに冬、たくさん着込んでくる方たちで埋まる会場は、その着ているものが音を吸収してしまうため、ステージ上は超ドライな音になってしまう。”

    “アナログによる録音は、実際には聴覚として耳で聴こえない中にもなお多くの音が存在する世界だが、デジタルは言うなればパルスみたいなものだから、物理的には音は繋がっていない。聴感としての音が繋がっているように聞こえているだけ、のものだ。(中略)LPからCDになったものは当然チェックしているけれど、LPの音を比較的忠実に再現しているものもあれば、すっかり痩せた音になっているものもあった。それは、CD化する人のセンスであり、さらにそれをプレスする機械の種類にもよる。”

    音楽を生業としているから当たり前、なのかもしれない。
    けれども、この音へのこだわりに圧倒されました。

    “父は昭和二十年四月三日、鹿児島の知覧から沖縄特攻の第一弾として出撃した。まもなく敵八機のグラマン戦闘機の待ち伏せに遭い、オイルタンクを撃ち抜かれた。父の隼は機関砲二門に対してグラマン戦闘機は六門。そこから撃ち出される射弾は、真っ赤なアイスキャンディーの束のようだったという。”

    彼女のお父さんは、いわゆる特攻隊の生き残りとして、多くの取材も受けたようです。
    この時の凄絶な体験がその後のお父さんの死生観に一生消えない刻印を押し、それは彼女へも引き継がれていくことになる。

    “近年もたびたび特攻隊を描く映画があるが、そのどれも、本当の特攻がどういうものであったかを描いてはいない。”

    自分をせっかちだと言う大貫さんが、気に入った無水鍋を注文して

    “鍋を一年待つなんてしたことがないけれど、待つっていうのもいいなあと思う。そんなことあまりなくなったから。待てば待つほど届いたとき、その分嬉しいだろうと思うし、何でもすぐ手に入るって、あまり嬉しいことではないんだなという気持ちを久しぶりに味わっている。”

    彼女が、ロンドンのエアー・スタジオで録音するはずだったアルバムを、急遽日本で録音することになった時に使用したのが、札幌の「芸森スタジオ」。
    スケジュールの都合だけで決められた「芸森スタジオ」は、エアー・スタジオを設立したジョージ・マーティンがアドバイザーであり、レコーディング卓も元々はエアー・スタジオにあったものだとあとで知ったという。
    きっと強い縁があったのだろうと。

    そしてその後、別な縁で彼女は札幌にも居を構えることになった。
    我が家と私の実家の間に家を借りているらしい彼女は、そこでまたネットワークを広げ絆を深めていく。

    縁は運命的なものなのかもしれないけれど、絆って人の力なんだよなあって思いました。
    その音楽のように、しなやかで軽やかで軸がぶれない生き方。
    歌手としてだけではなく、人として好きな人になりました。

  • 読んだ
    大貫妙子さん。
    達観したニンゲンにしか描けない世界観。
    (独身中年女性にありがちな偏見も若干あるが。)

  • 2013年で60歳を迎えたそうです。
    ツアーの裏話や、札幌の暮らし、友人のことなど、飾りのない言葉は、大貫さんらしい。
    彼女の音楽の聴き方が、ちょっと変わるかも。

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著者プロフィール

1973年、山下達郎らとシュガーベイブを結成。76年にソロ・デビュー。 女性シンガーソングライターの草分けのひとりで、その独自の美意識に基づく繊細な音楽世界と透明な歌声で、多くの人を魅了している。

「2014年 『大貫妙子 デビュー40周年 アニバーサリーブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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