しゃべれどもしゃべれども

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 426
感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104190010

作品紹介・あらすじ

しゃべりのプロだろ、教えてよ-あがり症が災いして仕事も覚束なくなった従弟の良や、気まぐれで口下手なために失恋ばかりしている美女の五月から頼られて、話し方教室を開くハメになった若い落語家の三つ葉。教室には苛めにあってる小学生や赤面症の野球解説者まで通ってきて…。嘘がつけない人たちの胸キュン恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 落語家の「三つ葉」が、話すことが苦手な人たちに落語を教える部活動のようなサークル活動のようなそんなお話だと思って読み始めました。
    実際は落語を教える部分はほんの僅かで、どうして話すのが苦手になってしまったのか、そして単純でお節介な三つ葉が、どうにかしてやりたい、と奔走して空回りする人情物語でした。
    三つ葉は生まれて以来「自分に不当な自信を抱いてきた。手足や目鼻がついているのと同じに、自信はすべての人に当たり前にそなわっていると思っていた。」しかし「二十六にして、初めて、仕事と恋につまづいて、根拠のない鉄壁の自信がぐらついた」のです。
    始めは、生徒(弟子?)たちに『どうしてできないんだ?もっと頑張れ』しか言えなかった三つ葉が、自分の言葉よりも、事情を抱えた人同士の言葉の方が影響し合っている姿を見て変わっていく。そして、すっかり失くしてしまった落語への自信を取り戻そうと必死にもがく。
    生徒(弟子?)たちと三つ葉が一生懸命もがいている姿にホロッとくる人情味のある温かいお話でした。

  • これからどう進むべきか。

    26歳の落語家・二ツ目の“三つ葉“こと外山達也は、先が見えない毎日を悶々と過ごす。

    同じだ。定年後、どうするんだ、オレは・・・。

    でも、根本的に違う。

    “三つ葉“のように古典を追求する落語家は、江戸や明治に生まれた笑いを、身一つで今の人たちに伝えなければならない。

    それがどんなにむずかしいことか、僕自身を振り返ればすぐに分かる。

    物心ついてから、ほんの5年前まで落語で笑ったことはなかったではないか。

    落語を最初から好きな人もいるが、若い頃は、その楽しさが分からなかった人も多いのではないか。

    “三つ葉“の前にどういうわけか、うまく「話す」ことができない人たちが、集まってきた。

    従弟の良、小学5年の村林、黒猫を連想させる女性・十河、元プロ野球選手の湯河原。

    まったく仲が良くならない4人は落語を教わるため、“三つ葉“の家に不定期に集まるようになる。

    こんな集まり、早く終わってしまえばいい・・・と思っていた“三つ葉“は、

    いつのまにか、悩みを抱えた彼らに憎まれ口を叩くようになっていた。

    なんとかしてやりたいと、勝手に身体が動くようになっていたのだ・・・。

    小説全体が人情話のようだった。

    読んでいる場面場面で、作品と自分との距離感が少しずつ変わっていく気がした。

    マネでもなんでもいい。

    本気で惚れたもの、“小三文師匠“、『茶の湯』に突き進めば、光は射してくると感じた。

  • 落語が大好き、高評価のレビューに魅かれ、手にとってみた
    が、初めは、なかなか話に入り込めなかった
    落語のように、ポンポンと小気味よく、笑いがあってと、勝手に期待していたためかもしれない

    テニススクールで生徒を前に吃る良、カルチャー教室で言葉が出ない十河、教室でいじめを受けている10歳の村林、解説で自分の言葉が喋れない元プロ野球選手の湯河原を相手に落語教室をすることになった今昔亭三つ葉
    教材に選んだ演目は、『まんじゅうこわい』

    しかし、三つ葉自身が、師匠今昔亭小三文のマネから抜けきれず大のスランプの真っ只中

    落語教室の生徒たちがなぜ喋れないのか、各自が抱えている問題に向き合っていく
    次第に、6畳の古びた茶の間での落語教室は、自然な人の和と良い笑いが生まれ、4人にとって幸福の空間となっていく

    そんな中、三つ葉自身も自信がないなどと泣いていられない。ないものは作るしかない。作るには、とりあえず努力するしかないと、原点に立ち返り、落語の歴史や古典を紐解き始める
    落語の起源や江戸や明治の名だたる落語家の名前が続々と出てきて、興味深かった

    そして、一番の山場は、
    落語発表会『まんじゅうこわい、東西対決』
    十河五月が江戸落語で、村林優が桂枝雀ばりの上方落語の『まんじゅうこわい』

    子供の世界とも思えない、いや子供の世界だからこその情け容赦のない力関係
    ぶつかってはやられながらも、屈せず宮田の前で落語を披露する
    演じる村林と聞く宮田の顔を見守る三つ葉

    発表会が終わった後、対峙する村林と宮田
    明日からいじめはなくなるのか?
    何かが少し動いたようだった

    スロースターターの話だったが、後半は、なかなかの加速で盛り上がりをみせた
    三つ葉さんと十河さんのロマンスも・・・





  • こういう話は好きです♪ 咄家二つ目になったマイペースな俺がひょんな事から、喋ることに何らかの悩みを抱える者達 テニス上手な従弟と黒猫みたいなOLと関西弁の小4男子 見かけ強盗みたいな元プロ野球代打男 の四人に落語を教えて行く羽目になる。語り口がとんと〜んと歯切れ良くて興味をそそられながら読み進む。オチがどうなるかって〜とハートウォームなちょっとホロリともさせてくれる温かいエンディングでした♪

  • メンバーが揃った辺りから面白くなってきた!

    宮田が笑った!!!

    この瞬間私も心の中でガッツポーズ!


    落語に興味を持ちました

    早速、まんじゅうこわい 聞いてみよっと


    最初入り込めんくて、断念しそうだったけど途中で読むのを断念しなくてよかった

  • 導入のテンポはいまひとつ悪かったが、大阪弁の少年、村林が出てくるあたりからぐっと楽しくなった。
    「明るい夜」もギャランドゥが出てくるまでは、若干入りにくいところはあったから、こんなものか。

    読み終わって思うのは、従兄弟のキャラが少し弱かったかもしれない。
    他の三人のインパクト(村林くん、代打のおっちゃん、十河さん)とくらべてどうにも影が薄い。
    片想いをよせていた郁子さんをわりと早々にあきらめてしまうあたりは、リアルで、小説としては目新しく感じた。十河さんとの恋模様も、派手なことがない分、かえってリアルだった。このあたりはとても上手だなと思う。

    一番大きな盛り上がりは、村林くんとそのいじめっこ宮田くんの対決だが、このあたりの人間関係の描き方も
    とても良かった。ただ「宮田は何にもない16歳になるだろう」というのはちょっと言い過ぎかなあと。
    いじめっこではあるけれど、その内面をこんなふうに否定しちゃうのもちょっと後味悪かった。

    とはいえ全体的には、とても楽しく読めた。

  • とある噺家の元にそれぞれの悩みを抱えた人々が集まり、落語を練習する事になりー。
    みんなそれぞれの立場や人生、想いがあって、それらにほんのちょっとずつでも向き合っていく姿が丁寧に描かれていました。何もかも全てまる!という訳じゃないのが、逆に真実味があってよかったです。最後の最後、ラストを読み終わった後、本を閉じたら温かいお茶の絵の背表紙が目に入り、気持ちが穏やかになりました。旨味のあるお話でした。

  • 102:どーん、というカタルシスのない、けれどじわじわ温かい小説。黒猫かわいいなあ。

  • と、言う訳で。
    NHKプロフェッショナル一万円選書】OAよりの二冊目読了。
    ちょっと感じが違った、と言うか、思ってたのとは違った。
    『あぁ女性の作家さんなのだな。』と読み終わって納得した(悪しき意味では無い)。

    国分君と香里奈さんで映画化されてるらしい。
    なるほど、その二人ならピッタリかも?

    落語が大好きなので、どう転がるかな?と読み進めました。
    ほっこりしました(=´∀`)人(´∀`=)

    ブクログ本棚登録させて頂きます!!!

  • 少し反則な感じがする。
    落語に阪神に小学生。
    面白いのは面白いですけどね,
    続編は無理かな。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤多佳子の作品

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