明るい夜に出かけて

著者 :
  • 新潮社
3.53
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本棚登録 : 1407
レビュー : 188
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104190041

作品紹介・あらすじ

『一瞬の風になれ』(本屋大賞受賞作)の著者、書下ろし! 青春小説に名作がまた誕生した。今は学生でいたくなかった。コンビニでバイトし、青くない海の街でひとり暮らしを始めた。唯一のアイデンティティは深夜ラジオのリスナーってこと。期間限定のこのエセ自立で考え直すつもりが、ヘンな奴らに出会っちまった。つまずき、人づきあい、好きだって気持ち、夢……若さと生きることのすべてが詰まった長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • あるトラブルをきっかけに大学を休学し、ひとり暮らししながらコンビニで深夜バイトをする富山。偶然コンビニで出会った客は、大好きなラジオ番組のハガキ職人だった。
    コンビニの頼れる同僚で「歌い手」の鹿沢、お節介な同級生でヘビーなラジオリスナーの永川、ハガキ職人で個性的な女子高生の佐古田。富山を中心として出来上がった、ちょっと不思議なコミュニティ。煩わしいと思いながらも彼らと関わることで、過去の傷と向き合わざるを得なくなる富山。
    本書で大きく取り上げられるのは、伝説のラジオ番組と言われるアルコ&ピースの「オールナイトニッポン」。まだANN歴の浅い私はその番組を聴いたことはなかったけど、ラジオ好きな人ならあの独特のワクワクする空気感が伝わってくるのではないかと思う。読みながらANNオープニングの「ビタースウィート・サンバ」が脳内を駆け巡った。
    LINE、Twitter、ニコ動、アメーバピグ…多様なコミュニケーションツールが頻出し、巻き込まれていくうちに、富山の内に秘めていたものがだんだんと溢れていく過程がさすが。読む側もどんどん引き込まれていく。ANNといいSNSといい、作品に軽やかに絡ませてくるなんて、佐藤さん…感性が若いなぁと驚いた!(佐藤さんより若いはずの私が初めて知ることもあり。)でも、繊細な心理描写や包容力はベテランならでは。一歩間違えば薄っぺらくなりそうなところを丁寧に描いており、懐かしさと新しさがバランスよく感じられる。
    よくよく考えたら、佐藤さんの作品を読むのは実に27年振り。MOEでデビュー作を読んで以来…あっという間に人気作家の仲間入りで、敷居が高くなっちゃった気がしていたのだ。でも、今回久しぶりに読んで、醸し出す空気感が当時とあまり変わらない気がして…ほんのり嬉しかった。
    アルピーのANNを聴いてたら、細かいネタの意味がわかってもっと面白かったのかなぁ、と思うとちょっと悔しいが。それでも、ラジオ番組を愛する気持ちはすごく共感できる。リアタイは無理だがANNを聴くようになり、パーソナリティとリスナーの程よくも濃い距離感がたまらなく心地よいからこそ。ANNに関わらず、ラジオという媒体のよさを再認識しているからこそ。
    そして、友達って安易に呼びたくない…あえて名前を付けたくないような彼らの繋がりがすごくいい。終始泣きそうになりながらページを捲ってました。物語終盤の、意外な人物による意外な言葉がとても誠実で、ものすごくしみたなぁ。
    表紙はニッポン放送のスタジオの写真、カバーを外すと舞台の金沢八景の夜景と、内容にピッタリな装丁が素敵。年齢的に夜更かしすることも夜に出歩くこともなくなったけど、若い頃の「明るい夜」の思い出って、誰もがあるのではないだろうか。本書を読んだことで、痛くて甘くて懐かしい、そんな思い出が甦り…点々と今につながって、私の足もとを照らしてくれている気がした。

    • koharakazumaさん
      あのセリフ、僕らもちゃんとオトナしないといけないなという自覚を感じさせられました。
      あのセリフ、僕らもちゃんとオトナしないといけないなという自覚を感じさせられました。
      2017/01/23
    • メイプルマフィンさん
      koharakazumaさん:コメントありがとうございます!
      本当に、セリフの一つ一つが心に響きました。何度も読み返したくなる一冊ですね(...
      koharakazumaさん:コメントありがとうございます!
      本当に、セリフの一つ一つが心に響きました。何度も読み返したくなる一冊ですね(^^)
      2017/01/24
  • 長いこと深夜ラジオを聞いてきた者にとって、「現実の日常から切り離しておきたい聖域」を初めてエンタメを通じて共有出来た。そんな気がする。
    深夜1時、受験勉強そっちのけでラジオにかじりついていた青臭い時代をもつ人には全員刺さると思う。
    勝手に不可能だと思っていた「サンクチュアリ」の共有が出来るのだから。
    「明るい夜に出かけて」なんとも素敵なタイトルだな。

  • ぐわあ…そうね、ハガキ職人って憧れですよね…。
    オールナイトニッポンのすごさはあまりよく知らなかったけど、アニラジ…szbhが大好きだった身としては、あの謎の「つながっている感」を思い出さざるを得なかった…。
    うう、まさに紛うことなき青春…夜の片隅の青春である…。

  • 学生時代の友達とのダラダラした付き合いを思い出してなつかしくなった。
    若い時のダラダラって、社会人になるとすごく尊く感じるんだよね。

    富山がトラウマっぽく思っていたことが、どんどん彼の中で小さなことになっていく。
    人生のリハビリみたいな時期。

    リスナーや職人の人たちは、リアル世界の他に、もう一個の良い世界を持ってるな、とうらやましくなった。
    ラジオパーソナリティは、リスナーを信頼してるんだろうね。
    だからなのか、芸能人の爆弾失言って、ラジオ発のことが多い。
    ラジオって、独特な世界観なんだなぁと、普段全くラジオ聞かない私は、思いました。

  • 最初、大学を休学してコンビニでバイトしてる富山はなんだか誰も受け入れない感じで、くさくさしてた。

    それが突然客でやって来た佐古田の登場で、徐々に一転。お互いラジオのヘビーリスナーと知り、富山の友人永川や、バイト先の先輩鹿沢も加わって不思議な繋がりが出来上がり、段々と富山の内面も変化していく。
    一見富山は引きぎみだけど、4人の絡み具合が面白い。

    ラジオの職人。そういう世界もあるんだな~

  • タイトルがまず本当に良い。すべてが詰まってる。
    高校生の頃、深夜ラジオを聴いていたころを思い出した。
    田舎の片隅、山の奥の一軒家の子供部屋で。
    雑音だらけの電波を受信しようとアルミホイル巻いたアンテナ目一杯立てて方向もダイヤルも微調整しまくった赤いダブルデッキで。
    下ネタだらけのオールナイトニッポン。
    静かで真っ暗な夜の底でラジオから聞こえてくる人の声だけが明るい、あの感覚。
    時代が変わっても、見知らぬ誰か達とつながっている、心強さみたいなものは変わらないのだなあと。

    あと、ラスト近くでコンビニでの深夜バイト、2人で8時間も10時間も過ごすことはなくなるのだな、と主人公がふと思う、その猛烈なさびしさとかにも覚えがあって。
    未来へ進むためのステップの一つだからどうしようもないんだけど、それでもさびしいっていう感覚。モラトリアムの贅沢と言わば言え。あーわかる、ってなった。

    リアルな若者とか言うとかっこわるいのかな。
    でもこんなだよね。
    つながり方も。
    家族構成も最終学歴も知らない。
    でもどんな声で歌うのかとか、どんなネタが好きなのかは知ってる。
    良し悪しではなくてそういうものなんだっていうのを切り取って見せてくれてる。

    明るい夜に出かけて。

    とりあえずradikoでアルピーの番組は聞いてみたよ。

  • リアルな世の中で、少しだけ生きにくそうな4人。
    少し変だけど、優しい4人。
    この繋がりはいつか絶えてしまうのかもしれないけれど、
    今この時に会えてよかったねと素直に思った。

    フィクションの存在の中に、
    実在するラジオ番組が入り込んでいる。
    作者のラジオ熱みたいなものがぐわっと迫ってきて、
    聴いていないのに、まるで一緒にラジオを聴いている気分。
    勢いに押されて、一気に読んだ。

  • 大学を休学しトラウマを抱えながら深夜のコンビニで働く主人公、深夜ラジオの住人同士がリアルでも繋がり、それぞれの人生に関わっていく。

    私自身深夜ラジオリスナーなだけに、題材に興味があって読んだけど、内容が薄っぺらくて結局何が言いたいのかわからなかった。
    主人公の持つ恐怖症その設定は本文のどこに必要だったのかわからない。
    ヘビーラジオリスナー、ハガキ職人としての話しというより、それきっかけで知り合う恋話。
    中途半端で読後心に残る言葉もない。

  • 楽しめる青春小説でした♪ デビュー前に温ためていたと言うテーマが見事な今風な作品になっていますね。とあるネット炎上に晒されてメンヘラになり大学を休学してコンビニでバイト中の若者が 深夜ラジオだけが心の拠り所の暮らしをするうちに出逢った数人との関わりにより次第に治癒されていく過程がいい。作者自身も深夜ラジオ好きだったようで実在のパーソナリティ達が沢山登場するのも興味深い。そして何と言っても深夜ふらりと現れた高2女子がとても良いキモになっていて魅力的です。深夜ラジオリスナーと言うジャンルで且つ実はラジオ名では有名なリスナー繋がりとの設定がなかなかに面白かった。

  • 深夜ラジオの面白さは伝わってきたけれど、
    ちょっと入り込めなかったかな。

    できれば、実在しないタレントを出してほしかった。

    若者4人の繋がり方が
    とても今の時代を現してて興味深かった。

    佐古田さんが、
    パッと見で「ちょっと変わってる」と分かるのに
    彼女の洋服買ってあげて髪型変えて、
    実は可愛かったんだ!!となるのは、
    これは、男子の理想だな。

    タイトルがとてもよいと思った。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年に「サマータイム」で月刊MOE童話大賞を受賞してデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。『一瞬の風になれ』で吉川英治文学新人賞、『聖夜』で小学館児童出版文化賞、『明るい夜に出かけて』で山本周五郎賞を受賞。そのほかの作品に『しゃべれども しゃべれども』『神様のくれた指』『黄色い目の魚』『第二音楽室』などがある。

「2018年 『シロガラス5 青い目のふたご 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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