ほんとうの環境問題

  • 新潮社
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本棚登録 : 625
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104231041

作品紹介・あらすじ

「地球温暖化を防止しよう」だって?そんな瑣末なことは、どうでもいい。大事な「問題」は、別にある。環境問題の本質を突く、緊急提言。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の池田清彦氏が終盤に「環境問題は科学的のようでいて科学的ではなくて、完全に政治的な話になってしまっている」と述べていたが、この言葉こそが、この本の主題と言える。

     何度も京都議定書(COP3)について述べられており、二酸化炭素排出による地球温暖化防止という大義名分に踊らされ、日本にとって一方的に不利な不平等条約を結んでしまったという立場をとっている。

     つまり、締結時の日本は既に省エネ化が進んでいるので、そこから−6%というのは厳しすぎて、排出削減が満たせていない。その結果、毎年1兆円の税金を批准国に、排出権取引として支払い、EUでは排出権取引が大きな市場となっているという。

     倫理観やイデオロギーといったものよりも、モノからの視点で環境問題を捉えると、また環境問題の違った側面が見えてくるということを対談形式で示している。しかしながら、バックデータが少ないので、ところどころ「本当か?」と思わせるところがあった。どちらかと言えば、対談の内容を裏付けるようなバックデータに興味があったので、そこは残念。

     日本は食料の多くを海外に依存しながら、3割は廃棄している。それは、全世界の食糧援助料の3倍にあたるという。食料もエネルギーを投じて作るものだから、いくらエコカーの技術を持っていても、こんなに食べ物を粗末にしているのは話にならないと感じる。ただでさえ、フードマイレージも長くて効率が悪いのに。

     最終的にはやはり日本は技術にさらに磨きをかけて、大国から必要とされる存在になることが不可欠としてくくっている。

     知識人の対談集はバックデータが少ないという欠点はあるが、物の見方が面白く、メディアが報じる側面としての環境問題しか知らない人にとっては目からウロコの内容が多いと思う。

     あとがきで養老氏が環境問題に対しては、もうヤケクソ状態にあるのが伺えて、問題の混沌さを象徴している。

  • 環境問題という問題。

  • 結局、環境問題は科学的のようでいて科学的ではなくて、完全に政治的な話になってしまっている。

    (京都議定書について)
    ほんとうに化石燃料由来のCO2を減らすつもりがあるなら、排出量の枠決めなんて瑣末なことではなく、化石燃料そのものの採掘量制限をする以外にない。それをやらないのは、それでは排出権トレードで金儲けできないからだ。

    物事の本質に基づいて物事が進んでいかない現状。
    全編に漂うのは、日本の政治のアホさ加減。

    この本の内容が必ずしもすべて正しいとは限りませんが。。。

  • 2008年頃の少し古い本。理系っぽい立場のお爺さん二人が、それっぽく地球温暖化を皮肉りながらも、あれやこれや対談。本文で触れられる通り、二酸化炭素問題派も地球温暖化否定派もデータを示せずに議論するために、それっぽさしかない。それっぽさ、というのは、局所的な一部の解法による正しさの主張であり、「温室効果ガスが増えれば温暖化になる」という主論同様に、彼らが用いる反論も「雲が増える事が寒冷化に効果あり」とか「カラスが都会のゴミを餌にするから、東京湾の富栄養化が避けられる」とか、立証なき発想のみである。

    それでも、その発想が面白い。残存資源を二酸化炭素換算するとどうなるのか、水を揚力で水力エネルギーとして備蓄しておけとか、食品ロス3割が問題でありフードマイレージを導入してはどうか、温暖化の被害を受けた国を各国で支援する方が安上がり、とか。

    隠居みたいな二人で、現役のデータを示さないが、そもそも現役のデータも不十分で恣意的。ならば、こうした多様な着眼点を示す書の方が、よほど視界を広げてくれるという意味で有益な書だと思う。虫好きの二人。自然の変化には敏感で、今の流れには黙っていられないと。最後に一言、養老先生。こんな本出して、新潮社はどういうつもりだよ、と。

  • ゴミゼロを目指し、脱プラを目指していこうと思った矢先にこの本を読んだ。目指すのはとても大事なことだけど、日本・世界の現状も共に捉えていかなければならないことがわかった。プラスチックを分別しているけれど、燃えるゴミは石油を投入して燃やしている。だったらプラスチックゴミは分別せずに燃えるゴミと一緒に燃やした方が燃えやすいという現実もある。
    日本人は「ゴミの分別やってます」とか「環境を大切にしています」とか意識や倫理観を大切にしていて現状はその次である。
    また、石油製品がダメだと言われているが、石油のおかげで日本の森林が守られたとも言われる。現に70年ほど前まで禿山だった山が木でいっぱいになっている。
    太平洋戦争は石油を獲得するための戦争だった。しかし、軍人が出世するために石油を獲得(真珠湾攻撃)してからも戦争をつづけたミッドウェーに。
    脱線したが、今は戦争時のような「欲しがりません、勝つまでは」のような精神論はいらない。合理的に数字を出し、対策を。
    日本は「お前がいなければ困る」といった執事のような存在にならなければならない。付加価値をつける!
    私個人にもつながる話だなと思った。

  • 新しい会社の仕事柄、ちょっと環境問題にも手を伸ばしています。池田さんと養老さんの著作だけに「論旨」はとても明快です。ここでの考え方をベースに、巷に流布している言説を気にしてみようと思います。

  • 文章から察すると書き下ろしならぬ語り下ろしか。池田清彦と養老孟司という組み合わせはその語り口の違いからすると泉谷しげると小田和正ほどの差がある。二人の共通項は虫採りだ。政治的な立場は池田が反権力で、養老はよくわからない。わからないのだが保守でないのは確かだろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/07/blog-post.html

  • 39523

  • 環境問題の本質について分かりやすく書いてあります。環境問題がこんなにも政治の問題に結びついていたとは知りませんでした。

  • いま環境問題といえば「地球温暖化」であるが、果たしてそれってほんとうに正しいの?京都議定書は地球のためになる?
    日本は貧乏くじ引いていない?そもそも本当に有効なお金の使い方は?ということが大きなテーマ。

    一番大切な環境問題として地球温暖化を取り上げる風潮が日本のメディアにあるが、しかし視点を変えてみてみたときに、それはほんとうに、本当の事なのか、という疑問がでてくる。

    そして、日本のお金の使い方は、日本の国益に適しているのか、日本は戦略的に動けているのか、ということを考えさせられる一冊。

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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