ほんとうの環境問題

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104231041

作品紹介・あらすじ

「地球温暖化を防止しよう」だって?そんな瑣末なことは、どうでもいい。大事な「問題」は、別にある。環境問題の本質を突く、緊急提言。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の池田清彦氏が終盤に「環境問題は科学的のようでいて科学的ではなくて、完全に政治的な話になってしまっている」と述べていたが、この言葉こそが、この本の主題と言える。

     何度も京都議定書(COP3)について述べられており、二酸化炭素排出による地球温暖化防止という大義名分に踊らされ、日本にとって一方的に不利な不平等条約を結んでしまったという立場をとっている。

     つまり、締結時の日本は既に省エネ化が進んでいるので、そこから−6%というのは厳しすぎて、排出削減が満たせていない。その結果、毎年1兆円の税金を批准国に、排出権取引として支払い、EUでは排出権取引が大きな市場となっているという。

     倫理観やイデオロギーといったものよりも、モノからの視点で環境問題を捉えると、また環境問題の違った側面が見えてくるということを対談形式で示している。しかしながら、バックデータが少ないので、ところどころ「本当か?」と思わせるところがあった。どちらかと言えば、対談の内容を裏付けるようなバックデータに興味があったので、そこは残念。

     日本は食料の多くを海外に依存しながら、3割は廃棄している。それは、全世界の食糧援助料の3倍にあたるという。食料もエネルギーを投じて作るものだから、いくらエコカーの技術を持っていても、こんなに食べ物を粗末にしているのは話にならないと感じる。ただでさえ、フードマイレージも長くて効率が悪いのに。

     最終的にはやはり日本は技術にさらに磨きをかけて、大国から必要とされる存在になることが不可欠としてくくっている。

     知識人の対談集はバックデータが少ないという欠点はあるが、物の見方が面白く、メディアが報じる側面としての環境問題しか知らない人にとっては目からウロコの内容が多いと思う。

     あとがきで養老氏が環境問題に対しては、もうヤケクソ状態にあるのが伺えて、問題の混沌さを象徴している。

  • 環境問題という問題。

  • 結局、環境問題は科学的のようでいて科学的ではなくて、完全に政治的な話になってしまっている。

    (京都議定書について)
    ほんとうに化石燃料由来のCO2を減らすつもりがあるなら、排出量の枠決めなんて瑣末なことではなく、化石燃料そのものの採掘量制限をする以外にない。それをやらないのは、それでは排出権トレードで金儲けできないからだ。

    物事の本質に基づいて物事が進んでいかない現状。
    全編に漂うのは、日本の政治のアホさ加減。

    この本の内容が必ずしもすべて正しいとは限りませんが。。。

  • 2008年頃の少し古い本。理系っぽい立場のお爺さん二人が、それっぽく地球温暖化を皮肉りながらも、あれやこれや対談。本文で触れられる通り、二酸化炭素問題派も地球温暖化否定派もデータを示せずに議論するために、それっぽさしかない。それっぽさ、というのは、局所的な一部の解法による正しさの主張であり、「温室効果ガスが増えれば温暖化になる」という主論同様に、彼らが用いる反論も「雲が増える事が寒冷化に効果あり」とか「カラスが都会のゴミを餌にするから、東京湾の富栄養化が避けられる」とか、立証なき発想のみである。

    それでも、その発想が面白い。残存資源を二酸化炭素換算するとどうなるのか、水を揚力で水力エネルギーとして備蓄しておけとか、食品ロス3割が問題でありフードマイレージを導入してはどうか、温暖化の被害を受けた国を各国で支援する方が安上がり、とか。

    隠居みたいな二人で、現役のデータを示さないが、そもそも現役のデータも不十分で恣意的。ならば、こうした多様な着眼点を示す書の方が、よほど視界を広げてくれるという意味で有益な書だと思う。虫好きの二人。自然の変化には敏感で、今の流れには黙っていられないと。最後に一言、養老先生。こんな本出して、新潮社はどういうつもりだよ、と。

  • ゴミゼロを目指し、脱プラを目指していこうと思った矢先にこの本を読んだ。目指すのはとても大事なことだけど、日本・世界の現状も共に捉えていかなければならないことがわかった。プラスチックを分別しているけれど、燃えるゴミは石油を投入して燃やしている。だったらプラスチックゴミは分別せずに燃えるゴミと一緒に燃やした方が燃えやすいという現実もある。
    日本人は「ゴミの分別やってます」とか「環境を大切にしています」とか意識や倫理観を大切にしていて現状はその次である。
    また、石油製品がダメだと言われているが、石油のおかげで日本の森林が守られたとも言われる。現に70年ほど前まで禿山だった山が木でいっぱいになっている。
    太平洋戦争は石油を獲得するための戦争だった。しかし、軍人が出世するために石油を獲得(真珠湾攻撃)してからも戦争をつづけたミッドウェーに。
    脱線したが、今は戦争時のような「欲しがりません、勝つまでは」のような精神論はいらない。合理的に数字を出し、対策を。
    日本は「お前がいなければ困る」といった執事のような存在にならなければならない。付加価値をつける!
    私個人にもつながる話だなと思った。

  • 新しい会社の仕事柄、ちょっと環境問題にも手を伸ばしています。池田さんと養老さんの著作だけに「論旨」はとても明快です。ここでの考え方をベースに、巷に流布している言説を気にしてみようと思います。

  • 文章から察すると書き下ろしならぬ語り下ろしか。池田清彦と養老孟司という組み合わせはその語り口の違いからすると泉谷しげると小田和正ほどの差がある。二人の共通項は虫採りだ。政治的な立場は池田が反権力で、養老はよくわからない。わからないのだが保守でないのは確かだろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/07/blog-post.html

  • 39523

  • 環境問題の本質について分かりやすく書いてあります。環境問題がこんなにも政治の問題に結びついていたとは知りませんでした。

  • いま環境問題といえば「地球温暖化」であるが、果たしてそれってほんとうに正しいの?京都議定書は地球のためになる?
    日本は貧乏くじ引いていない?そもそも本当に有効なお金の使い方は?ということが大きなテーマ。

    一番大切な環境問題として地球温暖化を取り上げる風潮が日本のメディアにあるが、しかし視点を変えてみてみたときに、それはほんとうに、本当の事なのか、という疑問がでてくる。

    そして、日本のお金の使い方は、日本の国益に適しているのか、日本は戦略的に動けているのか、ということを考えさせられる一冊。

  • 環境問題について一言。

    「環境問題、何が真実?何が虚実?マジわからねぇぜ!! どうにかしてくれ、この野郎!!! 」

    自分の環境に対する認識が揺らぐ。
    いままで正しいと思ってやってきたことは本当に正しかったのかどうか...、と。

    環境を守るためには、何ができて、何をしなければならないのか、考えさせられる一冊でした。

  • 仕事の都合で読んだ。これ、養老さんの名前は広告用みたいなもんだよな。それはさておき、ペットボトルを分別するの、やめよかな。

  • 視点の参考として。
    論旨粗悪、論拠不明確ではある。

  • 池田清彦という人はちょっと過激だから(なにしろエイズか何かで人口は半減くらいしたほうがいいと平気でいい飛ばすのだから)、この人が書いていることを何もかも信用して行動していいのかどうか、ちょっと心配な面はあります。けれど、この本を読んでいると、せっせとゴミの分別収集をしたり、温暖化対策にと電気を消して回ったり、なるべくどこにでも自転車で行ったりしている自分がちょっとバカバカしくなったりもします。京都議定書は一体どうすれば良いのか。日本という国は今後どうして行けばよいのか。養老先生もずっと言っていますが、環境問題は最大の政治問題なのです。政治家にこそ、この本を読んでいろいろ見直してほしいものです。我々としては、とりあえず「もったいない」という意識くらいは持って日々の行動に当たっていけばよいのかもしれません。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:519||I
    資料ID:50800227

  • 論理的。

  • この本に書かれていることが事実であれば、少なくともたとえばCO2排出権取引にEUの利権が絡んでいることなどはもっと報じられていい。古館某のように「先進国は世界同時謝罪しろ」などとくだらないことをアナウンスする閑があれば、「氷が解けて白熊かわいそう」以外の、まともな議論を冷静にしてほしいし、そのためにはいくらでも時間をかければいい。2050年にCO2の半減を目指すことが正しいのかどうか、計るための物差しをまだ我々は手にしていないのではないか?

  • すんごく勉強になりました(。-_-。)

  • 環境問題は政治的な思惑で左右される。
    火力は環境に悪いといっているのは実は原子力を推進したい思惑からきている。
    温暖化はそれほど悪くないらしい。それより、将来を見通すためには、コストをかけてデータ収集、分析を行い、そのうえで方向性を決める。一番気に入ったのは環境省、国土交通省、農水省がいっしょになればいい、という部分。

  • 普段疑問に思っていた環境問題の「知られざる真実」を明確にしてくれる本。これで環境問題の全てがわかるわけではないけれども、信じるか信じないかといった物言いで押しつけようとする環境思想には一石を投じている。最後の後書きで池田清彦さんが こんな本出して新潮社はどうすんだよ とぼやいています。少し笑い。

  • 現在の環境問題のメイントピックである温暖化問題は、欧米のビジネスチャンスをうむだけで、日本にはあんまり関係ないんじゃないか、と思わされる本。

  • (「BOOK」データベースより)
    「地球温暖化を防止しよう」だって?そんな瑣末なことは、どうでもいい。大事な「問題」は、別にある。環境問題の本質を突く、緊急提言。

  • 超虫好きの両名の対話による、環境問題への概説書。環境問題を知る上で有用な1冊

    • librarylovers2011さん
      地球温暖化、オゾン層破壊、ダイオキシン…
      私たちをとりまく環境問題には 国、メディアの陰謀が見え隠れ?!
      解剖学者・養老孟司と生物学者・池田...
      地球温暖化、オゾン層破壊、ダイオキシン…
      私たちをとりまく環境問題には 国、メディアの陰謀が見え隠れ?!
      解剖学者・養老孟司と生物学者・池田清彦2人の慧眼が環境問題の本質を見抜く目から鱗の一冊。

      【鹿児島大学】ペンネーム:K・Y
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      鹿大図書館に所蔵がある本です。
      〔所蔵情報〕⇒ http://kusv2.lib.kagoshima-u.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?fword=11108048246
      -----------------------------------------------------------
      2012/01/10
  • 最近の環境問題=温暖化という図式がもう完全に日本人の脳に刻み込まれているけれども、そのステレオタイプに待ったをかける人が徐々にでてきています。
    残念なことは、あまり専門家が露出してないことですかね。


    地球温暖化が正しいのかどうなのか、というのは、おそらく純粋な理学の問題であって、「環境問題」として考えたときにはもっと大事な社会的問題が山積みです。


    でも、私は思うのだけれども、何かをきっかけに一般の人が環境問題に興味をもち始めることはとてもいいことだと思うのです。その点では「アルゴア」なんかは非常に評価できると思う。しかし、問題はそこからで、マスコミなどの扇動に動かされないこと!

    環境問題に対して自分なりの意見をもつということ、偏った考えではなくきちんと俯瞰的にものごとを判断し、「自分の頭で考える」ということが大事なんだと思います。

  • “ほんとう”が本当なのかも考えさせられる一冊。

  • 丁度三年前の識者の意見、ほんとうの環境問題 読み進むうちに後ろ向きな嫌ーな感じになります?だからこうして改善してゆこうという前向きさがないのです?それ程までに良くないは十分承知、せめて博士たる識者ブツブツいうしかないのであらば酸いも甘いも呑み込んだ愚かなる夢に耳を傾けたい。こんな本出してどうゆうつもりなんだろう その言葉そのまま 今 問いたい。
    世も末 それも重々承知。

  • あ!!
    この池田先生って、ホンマでっか!?TVの池田先生だ!
    虫が大好きな先生だ!!

  • 「地球温暖化」という世間一般に浸透した偽善フレーズを皮切りに、社会の構図を鋭く突いている。

    石油というエネルギーを取り巻く世界情勢、CO2とGDPの関係、リサイクルというなの利権。

    地球に優しい、人に優しいという表看板は、情報化社会においてひとるの倫理的な地位を確保した。しかし、その裏側には、石油に変わる新たなエネルギーを取り巻く、世界の利権構造があった。

    2011.03.11 東日本をおそった大災害で、いろいろな意味で自分の世界観が変わりつつある今、本著の視点は非常に有意義なものだと確信している。

    大震災を餌に、日本が諸外国に食われないように、今こそ強くならねばならない、と痛感する。

  • P122 京都議定書を守っても日本が温度上昇抑制に貢献できるのは0.004℃

  • 08/06-08/14

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田清彦の作品

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