決壊 下巻

著者 :
  • 新潮社
3.76
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本棚登録 : 514
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104260089

作品紹介・あらすじ

"悪魔"とは誰か?"離脱者"とは?止まらない殺人の連鎖。ついに容疑者は逮捕されるが、取り調べの最中、事件は予想外の展開を迎える。明かされる真相。東京を襲ったテロの嵐!"決して赦されない罪"を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。衝撃的結末は。

感想・レビュー・書評

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  • 死んでしまうと自分自身の存在はなくなる。当たり前のことではあるが、読み進めていくほど、「死」と自身の「存在」の関係性について、今まで自分は美化しているだけではないかという気持ちに陥ってしまった。

    主人公である沢野崇の弟・良介のバラバラ遺体が京都の三条大橋で発見された。良介の妻・佳枝の思い込みから崇が容疑者として警察に拘留、逮捕される。崇を犯人と断定し躍起になって犯人に仕立てようとするその取り調べには警察の卑劣さを感じ、実際にもこんなものなのかもしれないと考えてしまう。

    鳥取の中学生・北崎友哉が、同級生を殺害し、自首してきたことから、崇の疑いは晴れるものの、崇の取調べ中に父親は自殺し、母親は良介の骨壷を腹に抱いたまま精神的に病んでしまう。
    良介殺害の主犯で悪魔と名乗ってい篠原は、クリスマスイブにお台場のフジテレビで自爆自殺をする。そして、最後には主人公・崇までも投身自殺をしてしまう。
    本作でいったい何人が亡くなり、その存在が消えてしまったのか。

    事件の発端となった日記の公開。ネット上この日記が、篠原の目に留まり、良介との対面を実現する。デジタル化の進歩による犯罪だ。本作の中でも篠崎が良介を殺害する際に「かつて、アメリカのとある犯罪者は言った。『私は、システムが作り出したものだ。が、システムが決して予期しなかったものだ。』この状況はまさに、システム・エラーだ。お前は今、稚拙なプログラムによって引き起こされた、この社会のバグに絡め取られている。システムの解決されるべき重大問題の発生、というわけだ。」と殺害DVDで叫んでいる。そして、篠崎は自らを「悪魔」、「離脱者」と呼び、社会のセキュリティ・システムエラーを演出する。この演出により、ネット上では容易に同調する共感者を集めることができるため、全国での類似する犯罪を増加させることになる。
    そんな彼らの犯罪への行動はある種、宗教的信仰のもとでの結束を感じる。

    また、崇と良介の不安が上、下巻通じて描写されており、兄弟の歪みが、自己の存在と現世の歪みを感じる。
    最後まで、冷静で現実的であると思われた崇も、その歪みに耐えることが出来なくなり、自らの命と存在を、終わらせてしまう。家族の残虐な死によりこの家族の幸福が完全に「決壊」してしまう。

    本作は、異常者の行動や心情を読み解いていくため、心が折れそうになるが、そうならないための心の持ち方も学ぶことができる。

    上巻で壬生がきっと良介殺害の犯人だと思っていたが、全く外れ、単に非常識極まりない画家というだけであった。

  • 救いのないラストであることは間違いない。
    上巻、下巻ともにページの端が黒く塗りつぶされた本のデザインが表しているように列車の人身事故(これも飛び込み?)に始まり、兄の崇がホームで飛び込み自殺をする瞬間に物語は終わるという終始暗い色調に彩られている。

    とりわけ弟の良介を悪魔に惨殺され、鬱病の父に自殺され、言葉の無力感/全能感からやがて現実感を失い、白い浜辺で精神的に完全に失調をきたす崇の在り様は寂寞とした哀愁を読む者の胸に残す。
    その余韻が消えぬうちに、ホームに到着した電車に飛び込み、その瞬間の描写で幕を閉じる。
    どう目を凝らしても救いはない、真っ暗な終わり方である。
    白い砂浜で幻覚をみる崇の光景やこの刹那的なラスト、とても印象的で個人的に好きではあるが。

    「崇」という名前もまさに(「崇」は「言葉に祟られている」が由来じゃないかと推測)、その暗い運命を体現しているかのよう。

    でも、だから読者は作者のその後の「ドーン」という作品も読むべきだと思う。

    平野作品が追求している「多面的な自己」というテーマも、「ドーン」では”分人主義”という形でより深く明確に結実しているし、「ドーン」の主人公も懊悩し、崇と同じように電車に飛び込もうとした過去を持っている。
    が、そこでは終わらず、妻と手を取り合い、再生を果たす。

    そんな主人公の名前は明日の人と書いて明日人(職業のアストロノーツともかかってる?)。

    つまるところ、「決壊」単体で見れば、確かに救いはないけれど、平野の作品群の一部として、全体像を見渡せば希望が見出せるんじゃないか、と。
    両作品を二度づつ読み終えた今日、そんな風にも思える。

  • 平野さんの作品では「ある男」と「決壊」を読んだが、どちらも時事問題を材料に作っている点が特徴だと思う。
    このお話はミステリーというよりは、時事問題のレポートに似ている気がする。
    ネット社会、反社会性パーソナリティ障害、犯罪加害者被害者の関係者、マスコミ、社会、それらを平野さんが調べて一つの形にしました、そういうお話と受け取った。
    小説としては味気ないかもしれない。

  • 決壊。タイトルそのもの。救いようもなくどこまでも壊れて流れていく。猟奇的犯罪の根っこをリアルに描いた、ミステリー仕立ての美しい文芸書。

  • なんとも救いようがない気分になりました。当然、フィクションでありながら、同じような悪魔の仕業としか思えないような事件を目にする度に、このような犯罪が増え続けることに歯止めはかけられないのだろうかと思いました。

  • 現実社会でも最近起きているような、無差別で猟奇的な殺人を題材にした作品。タイトルの通り、犯罪を含めた極端なアクションを取るまでに少しずつネガティブな感情が積み重なっていく場面の描写が続き、読んでいる際の気分は重いが、結果として起こる出来事の説得力は増している。。ネガティブな感情につながる背景として現代社会の抱える様々な問題を描いているが、あまりにも多くのテーマを盛り込み過ぎて物語としてのまとまりを欠いている感はある。読後に残る混沌を伝えたかったとすれば成功かもしれないが。

  • 難しい言葉や、会話中多用されるカタカナが気にならなければ、物語自体はどんどん読み進められ、あっという間に読み終えることができた。しかし心の準備が出来ていても最後まで気持ちの晴れない、そして救われないエンディングだった。読了後、あぁあ…とため息ついてしまった。

    勝手ながら、かなしすぎる最後に☆2つ

  • 惨殺された人の生前から死後まで、本人と周りの人を書いた作品。

    自分がいかに薄氷の上を歩いていたのか、という気になる。

    生きるか死ぬかを自分で選ぶというのは、自分自身で育てた根っこによると思う。
    それをどう育てるのはきっとその人の主義主張によるんだろうけど、子供を持つ身としては生きる方を選んで欲しい。

  • 「恐ろしいまでにタイムリーな小説」っていう評がピッタリ。無差別殺人…秋葉原…。
    救いのないストーリーが現代そのまま。ラストの優秀な兄の崩れ方とか。人間ってほんとこんな感じよな。
    うちだってもっと度胸があれば、殺人くらい犯してやるのに。

  • まいったぁー。
    眉間に皺が刻まれてしまったぁー。

    って自覚するくらい恐かったぁー。
    あー、人って恐いー。
    あーあー、本音聞いちゃったぁー。

    遺伝と環境だっけ?
    恐いなぁー。
    ホントかなぁー。ホントに思えてくるとこが
    この本の凄いとこかなぁー。

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著者プロフィール

平野 啓一郎(ひらの けいいちろう)
1975年、愛知県蒲郡市生まれ。生後すぐ父を亡くし、母の実家のた福岡県北九州市八幡西区で育つ。福岡県立東筑高等学校、京都大学法学部卒業。在学中の1998年、『日蝕』を『新潮』に投稿し、新人としては異例の一挙掲載のうえ「三島由紀夫の再来」と呼ばれる華々しいデビューを飾った。翌1999年、『日蝕』で第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。
2009年『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』で第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2017年『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞、2019年『ある男』で第70回読売文学賞(小説部門)をそれぞれ受賞。2014年には芸術文化勲章シュヴァリエを受章した。『マチネの終わりに』は福山雅治と石田ゆり子主演で映画化が決まり、2019年秋に全国で公開予定となっている。

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