われはフランソワ

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104270026

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  • 後の大詩人、フランソワ・ヴィヨンを主人公に据えたピカレスク。
    パリ大学を出、詩作でバリ中にその名を知られながら、学生を煽動して大騒ぎした挙げ句、人を殺してしまいパリを出奔せざるをえなくなる。流れていたところを盗賊団に尻尾を捕まれ、泥棒稼業に身を落とすはめになる。
    盗人でありながら、詩人として詩作を趣味とするオルレアン公シャルルの館に食客として居候することになったヴィヨンは、やがてその妻であるマリー・ド・クレーヴと心を交わす。
    城内で行われた詩作会でも大喝采を浴びるが、盗人の身では留まることは出来ず、仲間に呼ばれ再び盗人稼業に。

    そんな、流されるだけのフランソワに見えるが、芯の部分には自分の強い意思が見える。意思で世間に反抗し、意思で自分の欲望を解き放つ。それは、オルレアン公シャルルの厭世的な生き様との対比によりいっそう鮮鮮やかに記憶に残る。
    自分探しになど目もくれず、才能と感情の赴くままに生きていく。困難も成功も、ともに自分の意思だと歩む姿には羨望さえ覚えるほどだ。
    ユーモアとカタルシスにあふれた一級のエンターテイメント。
    この作中でも有名な詩のいくつかが読まれているが、この作品で彼の詩を味わえた人は実に幸せだ。かつて場の文学であった詩を、確かにその場にいたように感じることが出来るからである。
              
    とりとめのないレビューに困惑された方も、是非一読されたい。

  • 15世紀フランス。
    放蕩詩人フランソワ・ヴィヨンの生涯を描いた物。
    ジャンヌ・ダルクが処刑された年に生まれたフランソワ。
    イギリスはフランスの統治権も主張し、フランス内でもアルマニャック派とブルゴーニュ派が長年争っていた。
    養父ギヨーム・ヴィヨンは教会の司祭。
    ある未婚の母が子連れでは働けないからと預けて行ったのだ。

    パリ大学に通うが、酒に博奕と放蕩の限りを尽くす。
    パリ大学の教職員と学生にはいくつも特権があったそうです。
    陽気な詩を作って酔客を笑わせて人気を取り、酒代をただにして貰う毎日。
    娼婦に入れあげて居続ける生活も何度も繰り返す。
    逆恨みで襲われたはずみに刺し殺してしまったのが運の尽き。
    追っ手を恐れて逃げるうちに本格的な盗賊団コキャール党の仲間にされ、抜けられなくなる。事件は正当防衛として許されていたとも知らず…

    小物売りの行商で流れていったブロアの街で、詩を愛するオルレアン公シャルルの宮廷に招かれて、呆れられつつも詩才を認められ、楽しい半年を過ごす。
    シャルルの年の離れた美しい妻マリー・ド・クレーヴ。
    シャルルはかってアルマニャック派の首領だったが、十数年もイギリスに囚われの身だったために、生きる意欲を失っていた。
    シャルルを笑わせてくれという公妃の願いを受けて立つフランソワ。このあたり、楽しいです。マリーの子が後に巡り巡ってフランス王ルイ12世になったという。

    呆れるほどの破滅型ですが、憎めないところがある男。どこまでが史実なんでしょうねえ。いきのいい詩が挟まれて、うまくまとまっています。
    著者は1960年生まれ。98年「オルガニスト」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。

  •  読了。これはすごく面白い!

  •  フランスの詩人ヴィヨン=フランソワが振り返って語る我が人生の物語。 百年戦争終結直後、中世から近代へと移行する途中で絶対王政が確立する以前の混沌とした、だからこそ民衆が強く逞しかった、そんな時代の空気を生き生きと力強く描いていて、読むのがとても楽しかった。 最後まで読んで初めて、タイトルの真の意味が判るという趣向も素晴らしい。 実際の「詩人ヴィヨン」とはどういう人物だったのか、とても気になった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、家電メーカー研究者となる。98年『オルガニスト』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。01年『われはフランソワ』で直木賞候補。現在は専業作家として、良質な作品を上梓し続ける。

「2014年 『暴走ボーソー大学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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