春になったら莓を摘みに

著者 :
  • 新潮社
3.60
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本棚登録 : 734
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299027

作品紹介・あらすじ

「理解はできないが受け容れる」著者が学生時代を過ごした英国の下宿の女主人ウェスト夫人と住人たちとの騒動だらけで素敵な日々。

感想・レビュー・書評

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  • エッセイだと思うんだけど、物語を読んでいるみたいで面白かった。イギリスのウェスト夫人の家で下宿してる時の話が中心。このウェスト夫人がアガサ・クリスティのミス・マープルにどうしても重なってしまう。お茶目で話好き、世話好き、面白い、でも芯が強い人。私は読んでてすごく好感を持てた。

    途中で人種差別(黒人、アジア系の差別の話) 、女性の権利の話(これは女性が女性を侮辱して問題になったという話)が出てきて考えさせられた。とくに戦時中、アメリカなどで日本人が受けた扱いの話が印象に残った。テレビで観て知ってはいたけど、改めて酷い扱いをされた人の話を読むと、悲しくなりなんか落ち込んでしまう。でも、日本人も同じ事を外国の人にしてるし…、と思うと堂々巡りになってしまう。この本は20年ぐらい前に書かれてるけど、こういう問題はこれから先も続くんだろうと思う。

    Kとウェスト夫人の友情が羨ましい。年の差もあると思うんだけど気が合うんだろうな。遠い国にいるのにずっと友情が続いてる。素晴らしい。

    • hiromida2さん
      メイさん⸜(๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*はじめまして。

      いきなりのコメント失礼致します( ⸝⸝•。•⸝⸝ )
      梨木香歩さん、本当にいいです...
      メイさん⸜(๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*はじめまして。

      いきなりのコメント失礼致します( ⸝⸝•。•⸝⸝ )
      梨木香歩さん、本当にいいですよね〜
      梨木さんの描く世界観がとても好きです♡︎
      この本はまだ読んでないのですが、素敵なレビューを拝見して、ますます読みたくなりました♪
      積読本の中にたしか…あったはず(*゚・゚)
      また、メイさんの本棚に遊びに行かせてもらって(^.^)
      本探し…楽しみ⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾
      今後ともよろしくお願いします(⑉︎• •⑉︎)♡︎
      2022/11/19
    • メイさん
      hiromida2さん、こんばんは。

      コメントありがとうございます。とても嬉しいです。梨木香歩さんの作品は数冊読んでるだけなので、もっと色...
      hiromida2さん、こんばんは。

      コメントありがとうございます。とても嬉しいです。梨木香歩さんの作品は数冊読んでるだけなので、もっと色々読んでみたいと思います。

      松子さんの仰ってた通り、映画すごいですね。本棚を拝見してびっくりしました。hiromida2さんの本棚を参考に映画を観たいです。m(__)m
      2022/11/19
  • 本当に大好きで宝物みたいな本で、中学生くらいのときに初めて読んだのだけれど読み返しすぎて角がぼろぼろになっている。
    疲れて心がふらふらしてきたときに読むと、すっと霧が晴れて進むべき方向が見えてきて、ああこっちだった、この方向目指してまた飛んでくのだというような気分になる。

    繊細でしなやかな、どこまでもニュートラルであろうとする感性。知性。シンパシーへのアンテナ。
    多文化共生という概念も限界が理解されるようになったけれど、今でこそウエスト夫人の極めて個人的な「理解はできないが、受け容れる」戦い、梨木さんのどこまでも想いを馳せていく力が、静かな輝きを放っていると思う。それは誰にでもできることでもなく、限界もあって、大きな打ち寄せる波にあらがう一粒の砂みたいな小さなものかもしれないけど、もうこれしかできない、という気がする。
    「わたしたちは、本当は、みな」
    ずっと大好きな言葉だけど、今は子供の頃ほど無邪気に唱えることができない。でも、そうでしょう、そのはずでしょう、という思いはやはりある。それを信じなくては、何事も開かれないのだから。
    この状況から救ってくれるメシアは現れない。でも「どこまでも巻き込まれていこう、と意思する権利」はある。日常を内省的に深く生き抜くこと、相反するベクトルを豊かな調和のうちに保とうとすること。自分の意思と思考で歩いていきたいと思いつつ、どこまでできるのかしらと悩む。こんな風に、と思って15年以上もたって、まだ私はこんなに浅い。

  • 梨木さんのような本物の留学というわけにはいかないが、イギリスで2回、夏休みの一か月間を下宿して過ごした。だからいろんな国の人が来ては去りすること、彼らとコミュニケーションはできるけれど基本的に分かり合えないこと、ときどき通じ合えたような気がしてうれしかったことを思い出した。空港での緊張、窓の外に大きな木が見えたりとか、車で走るとすぐ羊に会ったりすることも。
    ただしその後の20年、自分はただ生きていただけなんだなあと、卑下するわけではなく思う。イギリスが好きだからわざわざアルバイトをしてお金を貯めて行ったのに、その後わたしのなかの「英国的なものを入れる箱」にものが増えることはなかった。むしろ拡散して散り散りになってしまった。生活で精いっぱいというわけでもなかったはずなのに、目先のことにとらわれて自分を育てることを怠けていたのだろう。自分の中がスカスカで心もとない。
    こんな風に人を自省的にする何かが梨木さんの文章にはある。温かいけれどウェットではない態度。とても大人だと感じる。

  • とても素敵なエッセイだった。文章の流れが、途中で違う話になったりするのがまるで著者の思考や記憶の流れのままを辿っているようで、そうだよなあ、人って思い出の中に自分の感じたこと考えたことを不定期に挟み込みながら思い出を形作るよなあと実感した。
    分かり合えないことを受け入れる。ちょうどブレイディみかこさんのエンパシーの本も読んでいる最中で、それに通じるものを感じた。
    そして大好きなイギリスの情景を読んで、とてもイギリスが恋しくなった。
    この著者さんは小説よりもエッセイの方が好みだ。

  • 書下ろしエッセイ。

    カバー撮影 / 星野 道夫
    写真提供 / 星野道夫事務所
    装幀 / 新潮社装幀室

  •  「春になったら苺を摘みに」(2002.2)、いいタイトルです。梨木香歩さん、イギリスのカレッジで学生時代を。そのとき下宿でお世話になったウェスト夫人。卒業後も何度か訪問されてるそうです。そこで交流した沢山の人たち。異なった文化背景を持つ人たちとの交流が、梨木さんの文学の幅と深さに関係しているように思えます。イギリスでの出来事を中心に綴ったエッセイ集です。

  • これがエッセイであるという事を知らずに読んでいたので、創作の世界なのか何なのかの部分を悶々としながら読んだ。自分のおちゃらけ夏季留学体験とはだいぶ空気管が違っていたので。

  • 列車の良い席を予約したのに車掌に最下等の席を案内され、2度抗議しても受け入れられなかったという理不尽な目にあった主人公が、波だった気持ちを引きずりながらも本当はどう感じたのか?憤慨?屈辱?そんな表面的なものに惑わされずにいよう。本当に感じたのは…と車掌に話しかける場面。
    「あなたが私の言う事を信じて下さらなかったあの時。私は本当に悲しかった。」トーンを落としゆっくり話しかけた。

    怒りの感情や攻撃的な気持ちの昂りに任せて相手に皮肉や辛辣な言葉をかける事が多い日常の中、自分の気持ちを抑えるのではなく、見つめて濾過して選別し、1番重要な場所を伝える技術が素晴らしいと思った。

  • 世界にたくさんいる人たちのそれぞれの人生を考えさせられたというか,感想が表現しにくい。けど,外国に出るんだったら,その前に読んでおきたい本だと思う。

  • 私の思想の根幹をなすバイブル

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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