冬虫夏草

著者 :
  • 新潮社
4.08
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本棚登録 : 1880
レビュー : 249
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299096

作品紹介・あらすじ

ここは天に近い場所なのだ――。『家守綺譚』以後を描く、心の冒険の物語。亡き友の生家の守を託されている駆け出し文士、綿貫征四郎。行方知れずになって半年余りが経つ愛犬ゴローの目撃情報に基づき、家も原稿もほっぽり出して鈴鹿山中に分け入った綿貫を瞠目させたもの。それは、自然の猛威には抗わぬが背筋を伸ばし、冬には冬を、夏には夏を生きる姿だった。人びとも、人にあらざる者たちも……。

感想・レビュー・書評

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  • 「家守綺譚」の続編。
    大事に取っておいた本です。
    美しい文章、旅するような心地。本当に大切にしたくなります。

    綿貫征四郎は亡き友・高堂の実家を託され、駆け出しの文筆業にはげみつつ、愛犬のゴローと暮らしていた。
    河童が時折、池にはまっていたり。
    不思議なことも自然に受け入れる綿貫。
    亡き友もまた姿を見せることがある‥

    人望のある犬ゴローが、半年も戻ってこない。
    鈴鹿山中で姿を見かけたと噂を聞き、綿貫はついに探しに出る決意をします。
    花の名前がついた短い章が続き、掌編小説のような趣。
    今よりはだいぶ昔ふうの、明治の文豪が書いたかのような文章で、でもそれよりはわかりやすい。日本語の美しさにうたれます。
    一つずつ、ぱらっと読み返してもよさそうです。

    山中に住む人々の素朴さ、温かさ。
    重なるように茂る草花の何と風情のあること。
    そして、しっくりと溶け込み、存在を疑わせないあやかし達。
    天狗を空に見上げ、親を待つ河童の少年に話しかけ、イワナの夫婦がやっているという宿を探し当てる綿貫。
    このイワナの夫婦の奇妙さは、なんとも面白みがあります。
    主の赤竜が留守にしているとちらほら耳にしつつ、お戻りになったと喜ぶ様子も見ることに。

    犬のゴローはあちこちで助けになっていて、「ゴローさん」と尊敬されているらしい。
    犬離れしているというか既に人間離れしているレベル?
    山中で必要とされているから、もう再会しても戻ってこない別れの場面になるのでは‥とハラハラ。
    それがまっすぐ走ってくる可愛さに、やられましたよ☆

    • nico314さん
      sanaさん、こんにちは!

      梨木さんいいですよね~。特に、このシリーズ、何とも言えない豊かな味わいがあって、読み返したいやりとりが随所...
      sanaさん、こんにちは!

      梨木さんいいですよね~。特に、このシリーズ、何とも言えない豊かな味わいがあって、読み返したいやりとりが随所にありますね。

      私も温めて温めて、いずれこの本を大事に読みたいと思います。
      2014/11/12
    • sanaさん
      nico314さん、
      コメントありがとうございました~!
      ずうっと気づかなくて、ごめんなさい!(大汗)
      しかも、今見たら高堂を間違えて...
      nico314さん、
      コメントありがとうございました~!
      ずうっと気づかなくて、ごめんなさい!(大汗)
      しかも、今見たら高堂を間違えて書いてあるし‥これから直します(涙)
      最近、梨木さん、読み進めてらっしゃるようですね。
      梨木さん、いいですよね~~~。
      ほんとに、このシリーズ、お気に入りなんです。
      私は梨木作品、そういえばちょっと間が開いてます~じわーっと味わいたいんですよね。
      本当に、楽しみにしていて、間に何かをためている感じです。
      期待にたがわぬ内容ですから、安心してお読みください!(笑)
      2015/02/23
  • 近年、日本には四季が失われていると感じる。特に春と秋。春の穏やかな空気と、秋の優しい日差し…一番感じたい季節が短く、極端に暑いか極端に寒いかの繰り返し。自分が子供の頃はこうではなかった気がするなぁ。そんな四季を思い出させてくれる一冊だ。
    それは食べ物であったり、草木であったり、直接的な気候の表現であったりで、読みながら季節の質感をひしひしと感じさせてくれる。
    相変わらず不思議な生き物なども加わり、変わった体験をしながら飼い犬ゴローを探すという物語になっている。主人公と共にゴローを探しに山々村々を歩く気持ちになり、最後のシーンは妙な達成感を得た。

  • 前作、家守綺譚の世界にまた会えた。
    それだけで幸せを感じてしまうくらい好き。

    ゴローの目撃情報を頼りに旅に出る綿貫さん。
    その旅路で出会う人、人ではないもの、景色、全てに惹きつけられる。
    どんな場所で読み始めても(それが満員電車の中だったとしても)、一瞬で物語の中に引きずり込まれる。
    綿貫さんの見たものが私の目にも見えるような気がした。
    すごく力のあるテキスト。

    これが何の加工も施されてない素の世界なんだ。
    物語の終盤、そんなことを考えていた。
    でもラスト3ページ、そんな考えも全て吹き飛ばされてしまった。
    ただただ愛おしい。
    そんなラスト。

  • 前作の家守奇譚に続き、綿貫征四郎が日常ならざる自然の気、怪異と交わりながらお話が進む。本編では湖水の古民家を離れ、鈴鹿山脈の奥深く、竜ヶ岳の麓までゴローを探しながらの旅、竜神やら、人形のイワナ、はては空を舞う五郎天狗までの登場とあいなる。

    ネットで東海道本線の能登川から鈴鹿山脈の竜ヶ岳周辺を確認しながら、綿貫の旅程を追いかけました。

    随所に描かれる愛知川の描写から、緑の深い山々に囲まれた清流の匂い、ときに山深い道の草いきれが伝わってきそう。梨木さんの風景、自然のいきいきとした描写はすばらしい。

    全編に流れるテーマは”水の道”。琵琶湖周辺の疎水から山奥の清流、大滝まで、この世のものではない”水の道”が繋がっている。古来、我々の生活と不可欠の水。田畑を潤し、山を削りときには暴れ川として村を流す。恵みと荒ぶる姿に人々は竜神の姿を見た。川の流域を治める竜神がいるという想像は素直に理解できる。

    長い間竜神が不在である愛知川、そこでは自然のバランスが崩れかけているのか、ゴローが鈴鹿の山奥を飛び回り、最後に登場する高堂が語る、水の流れを変え、村々を飲み込もうとしている巨大な企て”河桁”とは何だろう。まだ続編がありそうな・・・

  • 『家守綺譚』の続編です。
    前作は、文士のはしくれである綿貫くんが、家守として暮らす家の庭や近所で起きる不思議な出来事を綴ったものでした。
    ですが、本作は綿貫くんが愛犬・ゴロー探しの旅の中で遭遇した不思議を綴ったもの。
    旅先においても、綿貫くんの周りにはこの世ならぬモノや物の怪の類が集まってしまうようです…。

    前作で大活躍だったゴローが行方不明…ということで、綿貫くんと一緒に「ゴローは無事か?」とやきもきしながら読んでいました。
    やきもきしつつも、舞台となる鈴鹿の山々の自然に抱かれ、植物に視線を向け、人や人でないモノたちとの交流に心を動かし…と、気付けばまるで自分が綿貫くんになったかのように、のめりこんでいたのでした。

    決して派手なストーリーではないのですが、ぽとん、と胸に落ちてきて、ひたひたと余韻を残していくところがとても好きです。
    いつまでも読んでいたくて、なんだか読み終えるのが悔しくなってしまいました。
    ぜひ、これからも続いていってほしい物語です。

  • 前作の『家守綺譚』が家での日々の生活を描いていたのと対比するように、今回は半年前から姿を見せなくなったゴローを探すために綿貫が外の世界へずんずん出かけていく。

    綿貫は鈴鹿の山へ向かうが、この旅でも綿貫は河童、天狗、イワナ、幽霊…と、さまざまないきものたちとの出逢いを果たす。
    『家守綺譚』と同様にこれはどこまでが事実で、どこからが物語なんだろうと、その境界が曖昧になるような不思議な感覚を味わえた。

    ゴローを探す旅ではあるものの、綿貫はあっちへ行ったりこっちに行ったり自分の興味ある方面にも足をのばし、これ本当にゴローに会えるのかな?とたびたび不安にさせられたけど、そんな自由で人間くさい綿貫が愛おしく思えた。
    それも相まってゴローとの再会シーンはぐっとくるものがあった(^^)

  • ゴロー探しの旅。綿貫がずんずん歩きます。

    相変わらずどんな人、もの、ことに対しても真摯というか、なんでも受け容れてしまう綿貫はすごいなぁ。
    南川のキャラ、綿貫とのやりとりがおもしろかったです。

    「キキョウ」と「マツムシソウ」の章がとてもよかったです。
    最後のゴローとの再会はなんだかんだ泣けてしまいました。

    大事が起こっているのか、これから起こるのか、高堂が心配になりました。続きが気になります。

    山童がかわいい。
    「人は与えられた条件の中で、自分の生を実現していくしかない。」
    それでいてかっこいいときた(笑)

    美しい文章に心が落ち着きます。

  • 『家守綺譚』の続編。半年余り行方不明になっている愛犬ゴローを探しに、綿貫は鈴鹿山中に分け入っていく。

    現実と虚構のちょうど狭間にいるような摩訶不思議な世界観にも関わらず、このシリーズは不思議とすっと受け入れてしまう。自然に、人に、人ならざるものにさえ、生命の鼓動を感じられる作品。気付けば綿貫の後ろについて、木々のざわめきや葉から滴る露、土をきゅっと踏みしめる音を聞きながら、一緒に旅しているような感覚に。

    梨木さんの扱う柔らかな日本語を前にすると、背筋がぴんと伸びる。
    後引く余韻は続編を期待しても良いのかな。

  • 根が単純すぎるせいか、
    私はよく本に化かされる。

    最近では
    物語が出たり消えたりする
    本の存在を疑いもせずまるっと信じ、
    身近な人達に驚愕の<真実>を吹聴しまくった。

    ホントウなのだ!と信じ、
    語るのだからまぎれもなく<真実>であろう。


    (後々、おや?とおかしい事に気付きはしたが、
     それは後の祭り。)

    そういう意味ではこの本にも化かされた。
    絵空ではない、
    実在する(これまでは偶々出会わなかった)者達が
    ひょこひょこと、いなくなった犬を探す主人公と読者の前に次々現れる。

    思わず、
    (あー、そういえば前に花巻のカッパ沼で、
    カッパに出会えなかったのは偶々、忙しかっただけなのかぁ。
    カッパもいろいろ仕事が多いんだな…。)
    などと、カッパの事情を察していた。

    何が、本当の事なのか?は、
    いつかわかる日が来るのかも知れないが、
    永遠に
    そっとしておいて欲しいと思った物語。

    犬のゴローは
    語りだしかねぐらいに利口そうだが、
    今まで何していたのかの記述を是非、出版してみたらどうか?

  • 2014.9.3 pm16:53 読了。ここで終わるの!続きが気になって仕方ない。村々が浸かることに、ダム建設を連想した。純日本といった風情の物語。どんな生き物も特別視せず、平等な視点で描いているから、現代では奇異なモノとされることに対して、違和感がないのかもしれない。どれだけ周りが変わっても、日本に住む人々の根っこの部分は変わらない。このような物語が求められる限り。ともかく続編気になります。もっと草花の名前も知りたい。

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著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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