海に落とした名前

著者 :
  • 新潮社
3.25
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本棚登録 : 270
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104361038

作品紹介・あらすじ

NYから東京に向かう飛行機が不時着。生き延びたと思ったのも束の間、「わたし」はすべての記憶を失っていた。手がかりは、ポケットの中のレシートの束だけ。スーパー、本屋、カフェ、ロシア式サウナ…。熱心に過去を探る謎の兄妹があらわれて、「わたし」の存在はますます遠のいてゆく。表題作ほか全四篇、待望の最新短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 「時差」読書会のために読んだ。多和田葉子の書くものは、その文字の連なりを読んだと言えるまで、十分に吸収した気がいつもしない。それに加えて短編だと不安な気持ちになるものが多くて、まあ、苦手な方なのだと思う。それでも、「時差」で思い浮かぶ回転する構造物や「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」の箇条書きの効果からは、日常頭の中で流れている言葉の連なりとはまったく違う、日本語をツールに構築された独創性があって、(いつもどおり)難しいけれど他にはないものを読んだ気持ちになった。

    4つの短編の中では「土木工事」が一番好き。他の生き物との暮らしから生まれる切実さがある。

  • 4編を収めた作品集。
    「U.S+S.R. 極東欧のサウナ」サハリンという場所が帯びる政治性と歴史性に触れながら、言葉遊びを絡めた文章が多和田さんらしい軽やかさを纏っている。
    「土木計画」克枝さん、何か妙だと思いながら(多和田さんの小説は大概妙だったりするので)特に気にせず読んでいったら、そういうことだったんだ。
    「海に落とした名前」記憶を失い名前を忘れ自分に紐付いた一切を喪ってしまう語り手。唯一所持していたレシートの束から即興で言葉を紡いでいくラストは、相反するような解放感と不穏感とを感じさせた。

  • 短編を集めたもの。最後は航空事故で名前を思い出さない女性であり、途中まではリアルであるが、そのうちに怪しくなるというパターン。

  • 短編集。「時差」はベルリンにいる日本人マモル、ニューヨークにいるドイツ人マンフレッド、日本にいるアメリカ人マイケル、の3人のゲイ男性の遠距離三角関係というか三すくみというか不思議なねじれ(メビウスリングのような)で繋がる小品。「~極東欧のサウナ」はサハリンとニューヨークを行ったり来たりするような構成で、この2作はどちらもとても実験的な作風。

    「土木計画」「海に落とした名前」は比較的わかりやすく多和田葉子っぽい不条理。なぜか後半、猫の話になっちゃう「土木計画」も奇妙な可愛らしさがあって好きだけど、やっぱり面白いのは「海に落とした名前」かな。もともと雑誌掲載時のタイトルは「レシート」で、飛行機事故で記憶(自分の名前)を失った主人公の手元に残された唯一の手がかりであるレシートと、なぜか彼女にまとわりついてくる変な兄妹との話。終盤で「レシート漫談」を繰り広げざるをえない主人公に強いられた不条理通り越して理不尽感がすごい。


    時差/U.S.+S.R. 極東欧のサウナ/土木計画/海に落とした名前

  • 2015/1/25購入

  • 多和田さんの小説に出てくる人間はみんなどこかずれている。天然とか主張が強いとか協調性がないとかいう性質の問題じゃなく、むきだしのまま成人しちゃったような感じ。子供みたいっていうのとは違う。私たちが元をたどれないほど昔の祖先、もっと人間が素朴で凶暴だっただろう頃の時代からぽんと現代に投げ出されたような絶妙な違和感に包まれている。
    むきだしのままなのに世界に怯まない。妙に強い。

    4編入り。

    表題作と「土木計画」が良かった。
    「土木計画」ああ、そうだったのかと最後で実はこの作品に大きな謎があったことに気付かされる。

  • 読んだ時期が悪かったのか、今一つ 頭に入ってこない…。 集中出来なかったから理解できなかったのか、私に合わなかったのか。とにかく、ごめんなさい。よくわからなかったです。

  • 短編集、文句なく面白かったです。

    エクソフォニーでホモエロティックな三人の男が舞台の上でくるくると入れ換わる「時差」。笑うとこなどないのに、なんとなくスラップスティック。最初に自分が”盆回し”をイメージしちゃったからかも。

    しかし、なんと言っても表題作!気づいたら自分も名前を失くしてしまっていた!

  • 始めは「何だこれ?」と疑問符だらけで読んでいたが、この不思議な感性に慣れると次第に虜になる。
    無機質で知的な言葉の遊戯。

  • 私が乗っていた飛行機が不時着した。
    その時に、記憶をすべて無くしてしまった。私の手がかりになるものは、数枚のレシート。
    自分を辿っている時に現れた、私を知っていると言う者。
    色々と世話をしてくれるが、じかんが経つごとに彼らを信用できなくなってゆく。

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著者プロフィール

多和田葉子(たわだ ようこ)
1960年、東京都生まれの小説家、詩人。早稲田大学第一文学部ロシア文学科卒業後、西ドイツ・ハンブルクの書籍取次会社に入社。ハンブルク大学大学院修士課程修了。長年ドイツに暮らし日本語・ドイツ語で執筆する。著作は各国で翻訳されており、世界的に評価が高い。
’91年「かかとを失くして」で第’34回群像新人文学賞。’93年「犬婿入り」で芥川賞受賞。’96年、ドイツ語での文学活動に対しシャミッソー文学賞を授与される。’11年、『雪の練習生』で野間文芸賞、’13年、『雲をつかむ話』で読売文学賞と、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
世界的な賞も数々獲得している。2016年ドイツの文学賞「クライスト賞」を日本人として初めて受賞。そして2018年『献灯使』がアメリカで最も権威のある文学賞「全米図書賞」翻訳文学部門を受賞している。

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