海に落とした名前

著者 :
  • 新潮社
3.24
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本棚登録 : 331
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104361038

作品紹介・あらすじ

NYから東京に向かう飛行機が不時着。生き延びたと思ったのも束の間、「わたし」はすべての記憶を失っていた。手がかりは、ポケットの中のレシートの束だけ。スーパー、本屋、カフェ、ロシア式サウナ…。熱心に過去を探る謎の兄妹があらわれて、「わたし」の存在はますます遠のいてゆく。表題作ほか全四篇、待望の最新短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。3人のゲイ達の人間模様、記憶喪失になった私をめぐる兄妹等、具体的なシチュエーションの話が多かった気がする。でもオチがあるのか無いのかわからない相変わらず目眩がするような話たちばかり。眠い時や雨の日に似合うのかも。

  • タイトルといい内容といい展開といい…どうやって書いているんだろう?見た夢をメモしてそれをつなげたりしてるのかな?登場人物たちの心の動きを表す言葉や、読者を不安にさせたり、時に置いていかれてしまうくらいどこかへ飛んでしまう物語などものすごい個性的なんだけど、意外なところで現実との接点みたいなものがあって、あっちとこっちをいったり来たりするような不思議な体験ができました。

  • 「時差」読書会のために読んだ。多和田葉子の書くものは、その文字の連なりを読んだと言えるまで、十分に吸収した気がいつもしない。それに加えて短編だと不安な気持ちになるものが多くて、まあ、苦手な方なのだと思う。それでも、「時差」で思い浮かぶ回転する構造物や「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」の箇条書きの効果からは、日常頭の中で流れている言葉の連なりとはまったく違う、日本語をツールに構築された独創性があって、(いつもどおり)難しいけれど他にはないものを読んだ気持ちになった。

    4つの短編の中では「土木工事」が一番好き。他の生き物との暮らしから生まれる切実さがある。

  • 多和田さんの小説に出てくる人間はみんなどこかずれている。天然とか主張が強いとか協調性がないとかいう性質の問題じゃなく、むきだしのまま成人しちゃったような感じ。子供みたいっていうのとは違う。私たちが元をたどれないほど昔の祖先、もっと人間が素朴で凶暴だっただろう頃の時代からぽんと現代に投げ出されたような絶妙な違和感に包まれている。
    むきだしのままなのに世界に怯まない。妙に強い。

    4編入り。

    表題作と「土木計画」が良かった。
    「土木計画」ああ、そうだったのかと最後で実はこの作品に大きな謎があったことに気付かされる。

  • 読んだ時期が悪かったのか、今一つ 頭に入ってこない…。 集中出来なかったから理解できなかったのか、私に合わなかったのか。とにかく、ごめんなさい。よくわからなかったです。

  • 多和田作品は献灯使に次いで二作目。
    改行の少ない文体なのに何故かすんなり読み進められるのが不思議(僭越ながら、あの雰囲気が私の見る夢の中に似ているからだと思う)。

    ただ、時差と極東欧のサウナは殆ど理解できなかった(それでも最後まで飽きないのが、はたまた不思議)。

    土木工事は、克枝たちは猫なのか(人間なのか)。
    あとビルの窓清掃の青年とリンクしても良かったかな。

    表題作は、この中では一番引き込まれたが、すぐに「搭乗者リストを見れば瞭然だろ!?」と突っ込んでしまい…
    作中でも後半でようやく気付いてくれたが、その後の種明かしはもう少ししてくれても良かった(介護施設、精神病院、何らかの闇の組織なのか…)。

  • 印象に残った二篇を。

    「時差」三ヶ国に離れるゲイの三角関係のお話。ゲイの気持ちに関する話は初めてだったんですが、個性ある三人の心の動きはとても気持ちよかった、みんな優しい。でも肉体の描写は辛かった。

    「海に落とした名前」航空機の事故で記憶喪失になった主人公、唯一手元に残ったレシートを手掛かりに自分を取り戻そうとする。が、落としてしまった名前、レシートの中に自分の人生がいかに表現されているかというお話のように感じました。ヘルプに現れる人たちのクセが強すぎて、ちょっと主人公へのフォーカスがずれてしまうのが残念。

  • ディテールが細かくて、情景が具体的に浮か巧みな文章だから、すいすい読めるけど、結末がよくわからない。どういう話なのかよく分からないけれど、読後感はとても満足できる

  • 4編を収めた作品集。
    「U.S+S.R. 極東欧のサウナ」サハリンという場所が帯びる政治性と歴史性に触れながら、言葉遊びを絡めた文章が多和田さんらしい軽やかさを纏っている。
    「土木計画」克枝さん、何か妙だと思いながら(多和田さんの小説は大概妙だったりするので)特に気にせず読んでいったら、そういうことだったんだ。
    「海に落とした名前」記憶を失い名前を忘れ自分に紐付いた一切を喪ってしまう語り手。唯一所持していたレシートの束から即興で言葉を紡いでいくラストは、相反するような解放感と不穏感とを感じさせた。

  • 短編を集めたもの。最後は航空事故で名前を思い出さない女性であり、途中まではリアルであるが、そのうちに怪しくなるというパターン。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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